単元構成における「題材」概念の成立と変容過程の研究

2011 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 23531165
• Research Institution: Tokyo Gakugei University
• Principal Investigator: 山田 一美 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80210441)
• Project Period (FY): 2011-04-28 – 2014-03-31
• Keywords: 題材 / 中心概念 / 図画工作科・美術科 / 単元構成 / 主題 / 教材概念 / 指導案 / カリキュラム論

Research Abstract

本研究は「題材」概念がどのように教育用語へ受容され成立したかを、またその後の変容過程を検証し、「題材」概念の現代的課題を整理することを目的とする。戦後、教材（経験）単元の導入後、「題材」主義に向かうようになった。やがて「中学校美術指導資料」(文部省1987)によって「題材」概念が教科内容を構造的に捉える視点から提示され、それ以降題材は指導計画・授業づくりの中心概念となる。しかし、万博(1970)後、題材内容にイベント・祭典の要素が組み込まれ、また一方で「プロジェクト」等の授業展開の登場とともに、「題材」概念が変容しつつある。ゆえに、学校教育の図画工作科・美術科の「題材」概念は、受容・成立・変容したと仮説立てられる。この仮説を裏付ける平成23年度の研究成果は以下のとおりである。昭和30年代の「題材」概念は多様というよりは暖味で、とくにデザイン領域では「教材・題材・主題・題・題目・○○であるもの」等の用語と区別がなかった。ところが、中学校美術指導資料「美術科における指導計画の作成」（1982）では、題材概念は変化する。そこでは「題材」の概念は、美術科の学習活動の実際に目を向け「教帥と生徒をつなぐ媒体」として提示されている。具体的な内容領域について、「絵画」と「彫塑」は、「観察」と「想像」をもとにし、美的直観力と想像、造形思考法を展開する「題材」の枠組みを提示しようと試みた。他方、「構成と伝達のためのデザイン」と「工芸の製作」は、これとは違う複雑な題材の枠組みを示している。また、デザインでは、絵画や彫塑の指導にみられた「題材の大別」が見られない。その結果、1980年代までの題材概念は領域中心から構想されたものであり、教科性の共通項としての自覚や意識に芽生えて総体的な題材概念をはじめて示しつつも、なおも内容領域独自の枠組みと構成原理に支配されていたことがわかった。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

題材概念の成立にかかわる当時の研究者に対するインタビューが計画通り進んでいないこと。また、「題材」に対する「主題」概念が深く関与することがわかり、その関係の位置づけが難しく、「主題」自体の概念整理も必要となることによる研究推進の遅れがあること。新学習指導要領に基づく教科書会社の開発指導書が平成24年度に合わせ発行されるため、収集が間に合っていないこと、など。

Strategy for Future Research Activity

【平成24年度】１．一般教育学・カリキュラム研究における単元研究の成果分析（4～８月)、ヘルバルト学派及び経験単元学習論の基本図書整理、・及び次の一般図書の単元論整理／２．紀要投稿（5月）：東京学芸大学研究紀要／３．「中学校美術指導資料」作成協力者インタビュー（8～10月）池辺国彦、遠藤友麗、太田洋三、神尾和由、新谷純鋪、竹内正治、竹内　博、ほか計１６名中、３氏の訪問による聞き取り調査実施／４．研究計画の調整、今後のスケジュールの立案（10月）／５．「大学美術教育学会」発表（10月）／６．「韓国文化デザイン学会」発表(11月)／７．雑誌関係資料の調査・分析・考察（8～10月）（1）『美育文化』『教育美術』の関係論説のリスト化、要点整理（8～9月）(1)『美育文化』分析：1951（Vol.1）以降の関係論説の抽出と分析、(2)『教育美術』分析：1949(Vol.10)以降の関係論説の抽出と分析、（2）『美育文化』『教育美術』における欠本論説の文献複写（10月～翌年3月）、（3）両雑誌における「題材」概念の要約と推移についての考察・執筆作業（～翌年3月）／８．平成24年度の総括(1)成果のまとめ、「実績報告書」執筆、(5)「美術科教育学会」発表(平成25年3月、開催地未定)、(6)実績報告書の提出（平成25年4月）／さらに、東北地方のこども版画をリードした坂本小九郎と、昭和初期の伊勢市の早修小学校における中西良男が開発した子供絵巻に関して使用された題材概念について、再調査をする必要があること。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成24年度研究費使用計画I．総額　1,068,000円II．内訳　１．物品費　346,000円：○一般教育学・カリキュラム研究図書・最新教科書教師用指導書資料　265,000円／○文具事務用品　27,000円／○ﾌﾟﾘﾝﾀ･ｲﾝｸ,Canon,BLC-24(20×@1.2千円)=24,000円／○SDメモリーカードTOSHIBA,2GB,SD-E002GR(30×@1千円)=30,000円／２．旅費 152,000円：○都内交通費:・美育文化協会・教育美術振興会資料閲覧（1人×10回×@2千円）=20,000円／○大学美術教育学会大分大会10月,2泊3日(1人×@62千円)=62,000円／○美術科教育学会国内大会（地区未定）平成25年3月，2泊3日(1人×@60千円)=60,000円／○韓国デザイン文化学会研究発表（韓国、1人×4日間）=110,000円、３．人件費・謝金 350,000円：○訪問調査対象者への謝金(8･9月,3人×@10千円)30,000円○複写補助40,000円(美育文化協会・教育美術振興会)(10月-翌年3月,2人×@5千円(日当)×4日)／○ホームページ管理作業員120,000円（1人×@10千円×12ケ月）／○資料整理補佐員（1人×@10千円×10ケ月）100,000円／○英文校閲(10頁×@6千円=60)60,000円、４．その他 220,000円：○文献複写費(依頼含む)=50,000円／○大学美術教育学会誌投稿料(8頁)=30,000円／○美術科教育学会誌投稿料(10頁)=20,000円／○韓国デザイン文化学会誌投稿料(10頁)=20,000円／○実績報告書印刷100冊，50頁×@2千円=100,000円

Research Products

• [Journal Article] 中学校美術科における「題材」概念の成立 (2012)
  • Author(s): 山田 一美
  • Journal Title: 美術科教育学会誌「美術教育学」 Volume: 33号 Pages: 423～436
  • Peer Reviewed
• [Journal Article] 美術指導資料「工芸の指導」(1974)における題材概念 (2012)
  • Author(s): 山田 一美
  • Journal Title: 大学美術教育学会誌 Volume: No.44 Pages: 447～454
  • Peer Reviewed
• [Presentation] 「デザイン学習」関連文部省刊行物における題材概念の位置づけ (2012)
  • Author(s): 山田 一美
  • Organizer: 第34回美術科教育学会新潟大会
  • Place of Presentation: 新潟大学教育学部（新潟県）
  • Year and Date: 2012年3月28日
• [Presentation] 文部省発行図画工作・美術関連の「指導資料」にみる題材概念 (2011)
  • Author(s): 山田 一美
  • Organizer: 第50回大学美術教育学会宮城大会
  • Place of Presentation: 宮城教育大学（宮城県）
  • Year and Date: 2011年9月25日