2012 Fiscal Year Research-status Report
「映像メディアによる表現」の教育的効果に関する研究~日豪のシネリテラシーを基に~
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23531170
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳沼 宏寿 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00377178)
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Keywords | 国際研究者交流 / オーストラリア |
Research Abstract |
当該年度は、シネリテラシーの教育的効果について、先行実践としての「本宮方式映画教室運動」の検証と「シネリテラシーフェスタ2013」の実践、そしてオーストラリアとの比較研究によって検証することを大きな目標として取り組んだ。 まず、6月30日に福島県本宮市においてフォーラム「本宮方式映画教室運動~青いえんぴつの会がもたらした奇跡~」を開催した。そのシンポジウムでは昭和30年代の本運動に関わった当事者をパネラーに招聘して歴史的な事実と教育的意義について話し合いが行われた。本企画には、本宮市の住民を中心として200名を超える参加者があり地域の歴史的な教育文化を再認識することに大きく寄与したと思われる。具体的には、本企画を契機に地域の住民の意識が高まり、25年1月には自主的な組織が立ち上げられ、地域文化の継承に向けて活動を開始している。 また、子どもたちの製作した映画を映画館で上映する「シネリテラシーフェスタ2013」を11月23日24日に新潟市と福島市の二カ所において開催した。講師にはオーストラリアの先行研究者ジェーン・ミルズ(ニューサウスウエルズ大学)を招聘して、講演とシンポジウムを行った。本企画には、福島、新潟、神奈川の三県から出品があり、特に福島からの出品校三校のうち二校は震災後の学校をテーマにした作品であった。その作品からは、困難な時期に現実を見つめ「映像メディアによる表現」を通して壁を乗り越えようとする姿勢を読み取ることができた。また、ジェーン・ミルズとの情報交換によって、オーストラリアとの比較分析から本企画の意義が明確にされると共に、25年度には日本とオーストラリアの作品の交換上映会へと進展する見込みとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究推進のためのシンポジウムを二回開催したが、その開催自体によって研究成果が一般にも共有され、地域を動かす力になり得たことは実質的な成果として大きな進展である。また、オーストラリアの研究者の招聘によって、先行研究と本企画の比較分析がなされたことや、日豪の作品交流への足がかりを得ることができたことも大きな成果と言える。本研究の実践的側面においては計画していた以上に進展し、本企画の目的である教育的意義を追究するためには最適な条件がそろったことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度として、シネリテラシーの教育的意義をオーストラリアの先行研究と比較しつつまとめ、教育現場における「映像メディアによる表現」を推進する基盤固めを目標に据える。また、日本とオーストラリアの交流事業として継承していく足がかりとしたい。 具体的実践としては、日本とオーストラリアの作品交流を双方の地域で企画するとともに、これまでの情報交換の成果について発表する。また、本宮方式映画教室運動に関する研究会を企画し、地元に発足した「継承する会」を支援する。理論的には、オーストラリアの多文化主義政策の一環として実施された経緯とその成果を、日本の教育的課題(多様化する社会における共生)を克服する方法論に反映させ具体化していきたい。また、オーストラリアとの情報・作品交流によってグローバルな視野から実証し、それらの成果を国内外の学会並びに上映会等において発表し、国際的な普及への足がかりとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、シネリテラシーに関する上映会とシンポジウムの運営に関する経費として、会場費・講師謝礼・交通費等を使用すると共に、その成果をまとめて発表するための学会参加・論文投稿・海外発表のための翻訳料等に使用する。また、オーストラリアでの上映会運営と成果発表のためにオーストラリアまでの旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)