2011 Fiscal Year Research-status Report
国際標準を反映した教員用読書力評価パッケージの開発
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23531171
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
足立 幸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30302285)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 読書力 / 評価 / リテラチャー・サークル / パートナー読書 / アニマシオン / 国際情報交流 / 国語教育 / 学校図書館 |
Research Abstract |
本研究では、諸外国で通用している読書力評価を参考にし、日本において小・中学校教員(学級担任・教科担任)が使用することのできる読書力評価パッケージを開発する。読書力評価パッケージとは、テストの形態による評価と、読書指導場面において読書力評価をどのように行っていくかを示した「読書評価キット」から構成される。そのために次の2点を明らかにする。a)読書のミクロ・レベル・テストを開発し、小・中学校において、そのテストを用いた読書力評価を行う。テストの有効性を明らかにする。b)読書指導実践に即した質的分析手法を開発し、教員用のガイド(マニュアル)と評価基準として表現した「読書評価キット」を作成し、その有効性を検証する。 平成23年度は、次のことを行った。a)読書のミクロ・レベル・テストについては、小学生向き4冊、中学校向き1冊の図書について、ミクロ・レベル・テストを開発した。このミクロ・レベル・テストは、具体的には本を読んだその読み方がわかる10の設問から成るのだが、実際にはそれより多くの設問を作成しており、その中から、児童・生徒の実態に合わせて問題を精選していく予定である。b)読書指導実践に即した質的分析手法の開発に際しては、2つのことを行った。まず、リテラチャー・サークルというグループ・ディスカッションを用いた読書指導の実践を行っている小・中学校を訪問し、そこでどのような評価が行えるか、当該校の教師とともに検討した。その結果、本の内容に関することと本から触発されて考えたことの2つの内容、思考的スキル(本の読み取りに関すること)と社会的スキル(自分が読んで考えたことを友達と交流すること)の2つの形式についての評価が必要であることが明らかになった。パートナー読書という2人組の交流を用いた読書指導方法については、評価を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、小学生向き6種類、中学生向き3種類の本について、ミクロ・レベル・テストを開発する予定であった。実際平成23年度行えたのは、小学生向き4種類、中学生向き1種類であり、少々遅れているといえる。しかし、1冊の本につき予定よりも多くの作問を行ったこと、実際に小学校・中学校の教師にその問いを見てもらったことで、今後のテスト開発に見通しが持てるようになってきた。 リテラチャー・サークルについては、実際に小中学校を訪問し、そこで行われている評価を観察し、さらに行えそうな評価を当該学校の教諭と話し合うことによって、マニュアル作成の見通しが得られた。パートナー読書については、パートナーとの交流の形態を手紙交換に絞って、検討した。その手紙は、読者反応の一種としてとらえ、評価の方法として用いていける可能性を見いだすことができた。このことは、当初予定してい以上の成果であり、「読書評価キット」の作成に際して、有効な方法と期待できる。読書へのアニマシオンについても、 これらの評価開発に関して、国際学会で研究者と交流した。その結果、アメリカなどの読書指導法が多様に開発されている国で行われていることが、今回の開発に類似していることがわかり、この方向で進めていくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、ミクロ・レベル・テストの開発については、平成23年度が小学生向き6種、中学生向き3種であった。しかし、実際のところできたのは、小学生向き4種、中学生向き1種であるので、これを補填すべく、さらに小学生向き2種、中学生向き2種を開発していきたい。同時に、小学校・中学校現場で、これらのミクロ・レベル・テストを実際に、使用してみる機会を用意する。 リテラチャー・サークルについては、協力をお願いしている実施校の教師が普段行っている読書力評価とこのリテラチャー・サークルとの関係が明らかになり、リテラチャー・サークルが現場でどのように受け入れ可能かが明らかになってきた。さらに、現場の教師が使用しやすいマニュアルの作成に取り組んでいきたい。 平成23年度の成果として、当初はあまり予定していなかった、パートナー読書の使用可能性が出てきた。(これは、ブッククラブの変形ということもできる。)このパートナー読書は、二人組で行う様々な読書を想定しており、その交流の形を工夫すれば、読者反応を評価しうるものとして、読書評価キットに取り込むことが考えられる。新たに、この研究を平成24年度に行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度のミクロ・レベル・テストに開発に引き続き、小学生向き2種、中学生向きの2種の本の選定、作問等を行う。これまでに開発したものも含めて、さらに検討を重ね、小学校及び中学校現場で、これを使用してみることを目指す。 リテラチャー・サークルの質的手法を用いた評価については、平成23年度にある程度の形が見えてきた本の中に書かれていることがどうか((1)本の中に書かれていること、(2)本の中に書かれてはいないが読んでいて触発されて考えたこと)、本を読む時と話し合う時のスキルの形態はどうか(思考的スキル、社会的スキル)の2つのレベルについて、マニュアルの作成を行う。リテラチャー・サークルの実施校を増やし、そのマニュアルが教育現場で使用可能であるかどうかを検討していく。 パートナー読書については、手紙交換の形、話し合いの形の二種について、さらに研究を進める。特に、手紙交換の場合、どのような交流が行われており、それを読書力評価としてどのように利用できるかについて、原理的な研究を進める。話し合いの場合には、従来の読解指導の話し合いとの違いに注意しながら、読書力評価として使用可能なルーブリックの作成など、具体的な評価の形を検討していく。 引き続き、国内外の学会活動でこれらの研究成果は研究経過を報告し、アドバイスを受ける。
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