2011 Fiscal Year Research-status Report
地歴科世界史における問題探究型学習モデルの開発とワークショップ活用に関する研究
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23531174
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
田尻 信一 共立女子大学, 家政学部, 教授 (10436800)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 各教科の教育(地理・歴史) / 地歴科世界史 / 問題探究型学習モデルの開発 / ワークショップの活用 |
Research Abstract |
本研究における初年度研究実績の概要を1.研究調査活動,2.研究成果としての論文執筆,3.教職員に対する指導の3点に整理して報告する。 1.研究調査報告:日本国際理解教育学会の研究大会(2011年6月18-19日,京都橘大学)に参加し,歴史教育に関わる研究報告の資料を収集した。また,米国カリフォルニア社会科協議会:California Council for the Social Studies,CCSSと略称)の第51回年次研究大会(2012年3月2-4日, Hyatt Regency, Orange County, CA)に参加し,米国の社会科授業研究について歴史学習を中心に研究し,資料を収集した。 2.研究成果としての論文執筆:日本社会科教育学会編『社会科教育』113号(2011年9月)に「ESDと世界史教育-環境の視点が世界史に問いかけるもの-」(pp.95-106)を投稿し,掲載された。本論文では,ESDの学び,とくに環境史の観点を取り入れた単元開発を行った。また,『中等教育資料』平成23年4月,7月,10月,平成24年1月号に「新学習指導要領世界史の実施に向けて」(8)~(11)を連載し,新学習指導要領に基づく世界史A・世界史Bの内容の特徴や授業方法について解説し,「思考力・判断力・表現力等の育成」をはかるための指導法について明らかにした。 3.教職員に対する指導:長野県総合教育センターの研修講座「これからの歴史教育」(2011年8月25日)の講師として,長野県内の中・高校教員約30名を指導した。内容は「博物館と歴史の授業~新学習指導要領に盛り込まれた博物館の活用」,「考え方を学ぶ学習としての仮説実験授業~「沈没船の謎を追う 新安沖沈船の実践」を事例として」,「多面的・多角的な思考力を育てる授業作り~『大航海時代』の授業を事例として」である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,1.2013年度から実施される新教育課程での地歴科世界史A・Bでの実施を念頭に置いた「問題探究型学習」モデルの開発と,2.その普及を図るための現職教員を対象としたワークショップ(参加型実践的研修会)の実施を目指すことの,2点を柱としている。 本研究における初年度の達成度について,以下の2点に整理して報告する。 1.地歴科世界史A・Bにおける「問題探究型学習」モデル開発に向けての取り組み 新学習指導要領は2009年3月に告示され,2013年4月から実施に移行する。現在は,高校現場への新学習指導要領の周知時期である。初年度は,世界史A・Bにおける「問題探究型学習」モデルの開発に向けて基礎データの収集を目的に,新学習指導要領の趣旨や内容の研究を行い,その成果を日本社会科教育学会編『社会科教育』113号や『中等教育資料』に発表した。とくに『社会科教育』に掲載された拙稿では,新学習指導要領の地歴科世界史における「問題探究型学習」モデルとして,筆者が開発した単元「13・14世紀のユーラシアとモンゴル帝国~なぜペスト(黒死病)はヨーロッパ,中東,中国まで拡大したか」を提示した。また,CCSS第51回年次大会への参加を通して,一次資料の活用に重きを置く歴史学習の方法について調査することができた。世界史における「問題探究型学習」開発に向けての有益な示唆が得られた。 2.ワークショップの実施にむけての取り組み 初今年度は,長野県総合教育センターの研修講座「これからの歴史教育」の講師として,長野県内の現職中・高校教員を指導し,ワークショップの運営の方法について体験できた,そのノウハウを習得できた。また,ワークショップのテーマについても参加者から直接話を聞くことができたのも収穫であった。この成果を今後のワークショップの開発と実施に向けて生かしていきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,初年度の研究成果を土台にして,以下の3点を研究の推進方策としてあげる。 1.「問題探究型学習」に関する文献研究・教科書分析・事例研究:National Research Council(ed). (2005) How Students Learn: History in the Classroom,The National Academies Pressと,Grant,S. G.,(2003) History Lesson:Teaching Learning,And Testing in U.S. High School Classrooms,Lawrence Erlbaumを中心に米国の歴史授業を分析する。また,日本の新教育課程用の世界史教科書等を収集し,新教育課程の地歴科世界史で実施される主題学習の分析を行う。米国と日本の歴史授業を比較検討し,地歴科世界史における「問題探究型学習」の理論化を進める。 2.問題探究型学習」に基づく地歴科・社会科授業に関する海外・国内調査:海外調査として,米国,欧州等の社会科系学会に参加し,「問題探究型学習」に関する資料を収集する。国内においては,世界史を中心に高校地歴科,中学社会科の授業を参観し,授業をビデオに記録し,分析を行う。 3.「問題探究型学習」モデルの開発とワークショップ開催の準備:1と2の研究で得られた成果を元に「問題探究型学習」モデルを開発し,社会科系教育学会等でその成果を発表するとともに,学会誌・大学紀要等に投稿し,研究成果の発信・普及に努める。また,初年度に引き続き,現職の中学校・高校教員対象の研修会講師を務め,世界史の授業作りについて指導する。現職教員に対する指導を通じて,ワークショップ運営の方法に関するノウハウを習得し,最終年度のワークショップ開催に向けての準備を進めるものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(2012年度)の研究費として,2012年度請求額(直接経費)900,000円と,前年度(2011年度)未使用額346,711円の合計額である,1,246,711円を計上する。次年度の研究費の使用計画を以下に示す。 経費の項目別内訳は、「物品費」500,000円、「旅費」500,000円、「人件費・謝金」100,000円、「その他」146,711円である。 経費の主な支出内容は次のとおりである。「物品費」の主な支出内容は,世界史・世界史教育関係図書・新教育課程用地歴科世界史教科書等の購入,タブレット型パソコン,ビデオカメラ,コンパクトDVD・BDプレーヤー,ICレコーダー等の機器の購入費である。「旅費」の主な支出内容は,国外ではAHA・CCSS(いずれも米国の学会)等の海外学会への参加と情報・資料収集に関わる海外調査活動のための出張費,国内では日本社会科教育学会・日本国際理解教育学会・中等社会科教育学会・全国歴史研究会等の参加や研究発表,都道府県規模の社会科・地歴科・公民科の教員研修会の参加,社会科・地歴科・公民科の授業見学と情報交換のための出張費である。「人件費・謝金」の主な支出内容は,調査活動で収集した資料の整理に関わるアルバイト代や調査協力者に対する謝金等である。「その他」の主な支出内容は,プリンタインク・用紙・文具等の購入費,調査等に関わる雑費,通信費などである。
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Research Products
(7 results)