2011 Fiscal Year Research-status Report
説明スキーマの発達に基づく義務教育期国語科説明文教材の系統化に関する研究
Project/Area Number |
23531178
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
岩永 正史 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (00223412)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国語科教育学 |
Research Abstract |
従来、国語科の授業で、説明・論説文教材が扱われる際には、指導にも教材にも問題点があった。説明・論説文教材の指導では、詳細で正確な読解の力をつけることが目指され、説明スキーマの涵養とそれに伴う論理的思考力の伸張が授業の目標になることは少なかった。こうした問題点が如実に表れたのが、最近のPISA の学力テストである。こうした現状に対し、本研究は、近年の認知心理学の研究成果にもとづき、学習者の説明スキーマの発達に応じるとともに、国語科学習指導要領との関連を明らかにし、本格的な説明・論説文の学習へと導く教材の系統化を行うことを目的としている。本年度に取り組まれた研究は下記の通りである。1 児童生徒の説明スキーマの発達を調査するために、そのスケールにする大学生を対象とする調査を行った。これにより大学生の説明スキーマの発達や彼らが用いる論理的思考の実態が明らかになった。この研究結果は、学会で発表され、1編の論文にまとめられ、刊行された。2 教科書の説明・論説文教材の分析方法を確立するために、1社の平成17年度版国語教科書を用いて、説明文教材の展開構造、解明・解説に用いられる論理を調査した。これにもとづいて、平成23年度版小学校国語教科書5社に掲載されている説明・論説文教材の分析を行った。 1、2の調査は、研究計画全体から見れば、まだ研究の途上であるが、ここまでで明らかになった成果をもとに、2編の論文がまとめられ、小中学校の教員を対象とする図書に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 児童・生徒の説明スキーマ調査については、大学生の調査に時間がかかったため、当初の予定と異なり、児童・生徒用の調査問題を作成するところまでにとどまった。2 児童・生徒の読み物調査については、下記3の調査を先行させたため、行わなかった。3 国語教科書の説明・論説文調査は、平成17年度版教科書の教材分析を試行し、教材分析の観点を確立した後、平成23年度版教科書5社の分析を行った。2の調査に先行してこの調査を行ったのは、本年度が小学校教科書の改訂時期に当たっていたため、研究成果を学校現場に還元する必要から、こちらを優先すべきと判断したからである。
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Strategy for Future Research Activity |
1 児童・生徒の説明スキーマ調査については、作成した調査問題を用いて、小中学校での調査を実施する。この調査が当初の予定を異なり、次年度に回ったのは、調査のスケールを作るための大学生の調査に多大な労力を要したためである。しかし、大学生調査の成果があって、児童・生徒用の適切な調査問題の作成ができた。2 児童・生徒の読み物調査については、下記3の調査の進行状況に応じて行う。3 国語教科書の説明・論説文調査は、平成24年度が、中学校の教科書改訂時期に当たっていることから、研究成果を学校現場に還元する必要からも、こちらを優先しておこなうべきと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費:今年度約20000円の繰越金が生じたが、これは、児童・生徒対象の調査を行えなかったことによる。次年度に調査実施の見込みが立ったので、この繰り越し分を調査実施に当てる。また、中学校の教科書改訂時期に当たっているため、平成24年度版国語教科書及び教師用指導書を購入する。旅費:本年に引き続き、学会、小中学校の公開研究会などに参加し、研究者、学校現場からの情報収集、情報交換に努める。謝金:児童・生徒の説明スキーマ調査を平成24年度に実施することになったため、その分析に当たる者のために謝金が必要になる。当初の予定を変更して、「その他」の費目から「人件費・謝金」の費目に回して使用する。
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