2011 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な日本農業を構築するための農業経済教育カリキュラムの開発
Project/Area Number |
23531182
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
栗原 久 信州大学, 教育学部, 准教授 (00345729)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 栄次 三重大学, 教育学部, 教授 (50136701)
猪瀬 武則 弘前大学, 教育学部, 教授 (40271788)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 農業学習 / 経済教育 / 社会科 / 公民科 / 持続可能性 / カリキュラム / 経済的な見方や考え方 / アメリカ合衆国:イギリス:ニュージーランド |
Research Abstract |
本研究は,経済教育の観点から社会(公民)科における農業学習を再構築することにある。具体的には,インセンティブや機会費用,比較優位など「経済的な見方や考え方」の基礎にある概念を活用した農業経済学習カリキュラムを提案する。その際,日本でこれまで実践されてきた農業学習の成果と課題について検討し,諸外国における経済教育研究の成果を参考にする。 平成23年度においては,従来の農業学習に関わる成果と課題を検討した。具体的には,日本社会科教育学会第61回全国研究大会(北海道教育大学)などの学会・研究会へ参加し,農業教育関係の資料を収集した。収集した資料の検討から,次の点が明らかになった。1)社会科における農業学習は,小学校第5学年を中心に行われているが,「経済的な見方や考え方」を意識した授業実践はほとんどみられない。2)新学習指導要領小学校社会科第5学年で取り上げられることになった食料生産に関わる「価格と費用」については,教科書記述をみるかぎり,積極的な扱いはなされていない。3)中学校社会科における農業に関わる授業実践では,農業の持続可能性や多面的機能などを中心とした内容が取り上げられるようになった。 また,平成23年度は,米国における農業学習に関わる資料を収集した。米国農務省では,「持続可能な農業を学ぶことは,何歳でも可能である」という方針の下,各種の学習教材を作成している。「持続可能な農業を学ぶ教材とプログラム」などは,本研究にとって直接の参考になる。英国・ニュージーランドの農業教育については,現地調査実施のための基礎調査を行った。 なお,平成23年度においては,農業経済学関連の著作等から,同分野における近年の研究動向も探った。食料自給率の低下が食料安全保障の観点から問題であるとする従来からの見解だけではなく,多面的な見方や考え方が必要であることなどが,明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,研究期間内において,次の4点を明らかにすることを目的としている。1)これまで,社会科で行われてきた農業学習の成果と課題を,経済教育の観点から整理にする。2)米国・英国・ニュージーランドで農業に関わる学習がどのように行われているか,現地調査を行い明らかにする。3)農業に関わる諸問題を考察するのに必要な「経済的な見方や考え方」を明確にする。4)1)から3)の研究成果をもとに,「農業経済教育カリキュラム」を開発する。 これまでに,1)と3)については,ある程度,研究の目的を達成しつつある。社会科教育関連の学会・研究会等に参加することで,近年の農業学習関連の研究成果を入手,分析する作業は,進んでいる。社会科教育の領域で行われた農業学習に関する先行研究の収集・分析も,進んでいる。 3)に関わっては,2010年,米国経済教育協議会(CEE)が改訂出版した『経済学習内容スタンダード』を入手し,その分析,農業学習への応用可能性について検討した。 2)については,米国の現地調査は予定通り実施できた(2011年12月)。しかし,英国・ニュージーランドの調査については,当初予定では本年度実施の予定であったが,研究の進捗状況により,次年度実施とした(ただし,インターネット,書籍等による情報収集は活発に行われた)。この点から,平成23年度の研究は,予定より「やや遅れている」と評価せざるを得なかった。 なお,4)については,最終年度(平成25年度)に集中して行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については,以下のように推進する予定である。1)農業学習に関わる国内資料の収集・整理・分析については,今後も継続的に実施の予定である。また,先行研究の収集については,学会誌や書籍だけではなく,民間出版社から出されている雑誌等に掲載されている実践記録等も収集する。2)海外調査については,平成23年度に実施できなかった英国・ニュージーランドの現地調査を,研究分担者が確実に実施する。3)2010年に出版された米国経済教育協議会(CEE)の『経済学習内容スタンダード』が示す諸概念の農業問題への応用可能性の検討についても,引き続き行う。4)以上1)~3)の作業の成果については,年度末に中間報告会を公開で行い,広く意見を交換する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費については,23年度未使用額分を含め,「今後の研究の推進方針」に記載した内容を確実に実施するために使用する予定である。 国内資料の収集・整理・分析には,国内学会・研究会等へ参加するための旅費が必要になる。また,関係書籍の購入費も必要である。当初計画で平成23年度実施予定であった海外調査については,研究の進捗状況により次年度に実施することになった。このため次年度使用額が生じたが,海外調査については24年度に確実に実施する。海外調査にともない,旅費,書籍購入費などが必要になる。また,平成24年度中に2回の会合を予定している。これには,旅費,会議費等が必要になる。年度末には本研究の中間報告会を予定しているが,これには会場を借り上げる経費,旅費,資料印刷の費用等が必要になる。 なお,資料整理等に使用するファイルなどの消耗品も購入の予定である。
|
Research Products
(1 results)