2011 Fiscal Year Research-status Report
フランスの初等教員の音楽能力の基準とIUFMにおける音楽教育の実態調査
Project/Area Number |
23531186
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
吉澤 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (40594354)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | フランス / 初等教員 / 音楽能力 / IUFM / 教員養成 / 教員採用試験 |
Research Abstract |
本研究は、将来初等教員(幼稚園・小学校教員の総称)になるために必要とされる音楽能力とは何か、そうした能力の育成を担う教員養成のあり方について、フランスを調査研究の対象とするものである。フランスでは初等教員の修士号取得が義務づけられてから2年目になる。国家試験である教員採用試験制度ならびにIUFM(教員養成大学センター)における現地調査を通して、日本の教員養成大学における小学校教員免許取得のための音楽科教育の質の向上に結びつくような教育方法を探究することを目的とする。 本年度は、3つの事項について研究を進めた。(1)初等教員の修士号取得の義務化に伴い、2010/2011年度以降IUFMの教育カリキュラムおよび教員採用試験方法も変容したが、音楽分野に関しては選択教科である位置づけ、試験要項内容共に大きな変化はない。近年の傾向として採用試験における「音楽」の選択状況を把握すべく2005/2006年度から2009/2010年度までアカデミーが公開するデータ分析を行った結果、概して「音楽」を選択する受験者数の占める割合が低いことから、教育現場では音楽教養・技能を有する教員不足の実態が理解される一つの結果が得られた。(2)教員採用試験の面接時に試される音楽能力の一つである「聴取力」に焦点をあてた。新体制以前に刊行された最新のIUFMの学生のための『手引書』を読み解くことにより、聴取力を身につけるための手段として音楽を聴く際の目印と習得すべき専門用語の基準について明らかにした。(3)パリ・アカデミーのIUFMが運営する「音楽教育」に関する授業・演習、課外活動および現職教育の視察調査を実施した。初等教員養成のための教育カリキュラムは、採用試験対策の講義・演習、実地研修および修士論文作成のための講義・演習で構成されていることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料研究に関しては予定通りに進んでいる。現地調査に関しては当初、パリ・アカデミーのIUFM (Molitor校、Batignolles校)における初等教員養成に限定した音楽教育の授業を調査の対象としていたが、中等教員養成、課外活動および現職教育の内容まで幅広く視察する機会が得られた。このことから教員養成機関が施す音楽教育の全体像を概観する良い機会となった。一方、初等教員養成のための教育実習についてはIUFMの諸事情により、今年度は視察許可が得られる事ができなかったのが残念である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに入手できた初等教員採用試験に関するアカデミーが公開する報告書の分析を行い、教員採用試験「音楽」の実態や評価基準等についての考察を試みる。さらにフランス教育省初等教員採用試験担当者とコンタクトをとり、国家試験である教員採用試験「音楽」の具体的な運営方法を把握する。またパリ・アカデミーのIUFMにおける音楽教育関連の授業等の視察調査を継続的に行い、複雑なカリキュラムの構造を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費全体額の3割程度として、パリ・アカデミーのIUFM で開講されている初等教員養成のための音楽教育と関連づけられる書籍・教具(教材・視聴覚教材・楽器)およびフランスの初等教員養成に関する一般書等の購入経費にあてる。残りの7割程度は、前年度よりも現地調査の充実化を図る目的で、年度内に3回(1回につき1週間程度の滞在予定)を予定・検討している。
|
Research Products
(3 results)