2011 Fiscal Year Research-status Report
教科の言語活動における「対話」の現代的意義と可能性-アクションリサーチによる
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23531187
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
山田 綾 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50174701)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 対話 / アクションリサーチ / 言語活動 |
Research Abstract |
本研究は、アクション・リサーチにより、日本の小中学校の教室における子どもたちの「差異」と「学び」における「対話」の実践・分析検討を継続的に行うことを目的としており、今年度は主に以下のことを行った。 一つは、プレ・アクション・リサーチとして、複数の小中学校の一つの学級に複数回入り、子どもたちの授業における言語活動の現状や、異なる価値観をすり合わせていく「対話」が成り立ための子どもたちの関係性の現状と課題を検討した。二つには、「言語活動の充実」の実践校の授業を参与観察し、どのように実践・検討されているのかを検討した。三つには、小中学校家庭科などを中心に、「対話」により生活の見方や考え方が問われる条件を検討した・。四つには、アクション・リサーチ・プロジェクト体制の準備として、小中学校の教師と、教室空間や子どもの現状分析を行い、「対話」の実践構築のための課題を検討した。 プレ・アクション・リサーチを通して、以下のことが課題になった。学校・教室・友だち関係において子どもたちが差異を尊重されることなく、さまざまに傷つき、生き難さを実感し、コミュニケーションがとれなくなったり、そうした過去を背負い教室空間でトラブルが繰り返されたり、教科学習が「わかる」ということが困難になったりする状況が確認された。他方で、軽度発達障がいの子どもの場合、生き難さが増幅する傾向があり、そうした子どもとの関係を核に、差異を尊重する関係性を再構築する学びをつくり出していくと子どもの生き難さが減少し、平和的に生きる空間がつくられていく。その際、教科学習などにおける「対話」がきっかけになったり、条件になったりすると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プレ・アクション・リサーチを実施し、共同研究体制をつくることができるとともに、実践的課題や方向性についても、検討できた。他方で、北欧やカナダなどで取り組まれているナラティブ・アプローチについては、十分に調査・検討することができなかった。理由としては、スウェーデンとフィンランドにおいて、コンタクトをとっていたり、注目していた研究者が大学を転出したこともあり、調査の条件を整えることが困難になったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
(平成24年度)子どもたちと「対話的関係」を築こうとしている教師と共同で、「対話」の構築のためのアクション・リサーチに入り、実践方略(条件や仕組み、教科のテーマや方法など)を考案していく。そのために、第一に、関連文献の収集と分析を小中学校の教師と行い、教室や教科の課題に応じたプログラムを考案する。第二に、北欧の「対話」やナラティブ・ラーニング実施校のプロジェクト情報の収集・検討を行う。第三に、前年度の記録も踏まえ,プロジェクト実施校の教師と共同で、教室空間の現状と子どもの課題を,参与観察や意識調査などにより明らかにするための会議を開催し、情報を交流・共有し、アクション=「対話」実践の構築のための、条件、仕組み、教科のテーマ・教材開発の視点を検討する。第四に、実施過程を参与観察し、分析材料に加工する。(平成25年度)前年度のアクション・リサーチの結果をふまえ、対話並びに対話的関係の構築における課題を捉え直し、実践方略を見直し、「対話」実践の構築のための、条件、仕組み、教科のテーマ・教材開発の視点を検討し直し、実施過程の記録と分析を行う。特に、日本と北欧との社会的環境や学校・教室空間の違いを検討した上で、北欧のプロジェクトとの比較を行う。 (平成26年度)2年間のアクション・リサーチの取り組みを分析し、「対話」実践とアクション・リサーチの評価を行い、その成果を発表する。また、公開講座や講義に活用できるように電子データを整理・加工し、現職教員や学生たちと検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
子どもたちと「対話的関係」を築こうとしている教師と共同で、「対話」の構築のためのアクション・リサーチに入り、実践方略(条件や仕組み、教科のテーマや方法など)を考案していく。そのために、以下を実施する。 (1)関連文献の収集と分析を小中学校の教師と行い、教室や教科の課題に応じたプログラムを考案する。(資料・図書費 5万円) (2)北欧の「対話」やナラティブ・ラーニング実施校のプロジェクト情報の収集・検討を行う。(資料・図書費10万円、翻訳料5万円) (3)前年度の記録も踏まえ,プロジェクト実施校の教師と共同で、教室空間の現状と子どもの課題を,参与観察 や意識調査などにより明らかにするための会議を開催し、情報を交流・共有し、アクション=「対話」実践 の構築のための、条件、仕組み、教科のテーマ・教材開発の視点を検討する。(国内旅費50万円、会議費3万円、教材費10万円、小型デジタルビデオ5万円、バッテリー2万円) (4)実施過程を参与観察し、分析材料に加工する。(謝金14万円)
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