2011 Fiscal Year Research-status Report
国語科教師が学びのコミュニティにおいて行政教員研修経験を編み直す学習過程の研究
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23531195
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
丸山 範高 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (50412325)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国語科教育 / 初任者研修 / 教師の語り / 教師の学習 / 教師の知識 / 教師教育 / 教科教育学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高校国語科教師が、初任者研修あるいは10年経験者研修に関わる経験をどう意味づけながら国語科授業実践の質を高めていくのかという教師の学習(変容)過程モデルを描き出すことにある。そこで本年度は、1:上記研修を担当した教育センター指導主事を対象とした、研修のねらいと内容とに関わる聞き取り調査、および、2:当該研修を受講した国語科教師の授業観察と、普段の授業と研修との関連性についての半構造化インタビュー、これら2点に関わる調査活動を行った。調査により得られたデータは、すべて文字化し、意味内容ごとに切片化しながら解釈を進めた。そのうち、本年度は特に、初任者研修経験に関わる事例を中心に成果をまとめた。教師たちは、初任者研修経験と普段の授業とを結びつけながら、まず、教科書教材の状況や現実の学習者といった「実践をめぐる状況」を見極めることにより、その状況にふさわしい授業スタイルや発問・板書といった「実践行為」を選択するに至ったと語る。さらに、自らの「実践行為」の妥当性を省察し次なる段階の授業改善に資する授業実践知を編み出そうという志向性を持って日々の授業実践に取り組んでいた。こうした事例分析結果は、行政研修に対する批判、たとえば、研修が画一的である、教師の個人特性への配慮が乏しいといった批判を乗りこえ、行政研修の意義の再考を促すものと考える。つまり、行政研修を、そのもの単体でとらえるのではなく、教師たちの日常の授業実践と結びつけながら教師たち自身のことばで研修経験を語り直していくことにより、授業改善につながる授業実践知を生み出すことができるのである。なお、これらの成果の一部は、第122回全国大学国語教育学会筑波大会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画は、初任者研修および10年経験者研修のうち、高校国語科授業実践に関わる研修の内容的特質を明らかにするとともに、当該研修を受講された現職教師を対象とした授業観察とインタビュー調査とを実施し研修と授業実践との関連性を考察することであった。本研究課題は事例研究であるため、多数の事例を集めることはできなかったが、複数の府県にわたっての事例調査を実施することができた。また、調査を行った個々の事例については内容的に厚みのあるデータを収集することができた。さらに、大学進学のための教育課程編成校に勤務する教師の事例や多様な進路実現のための教育課程編成校に勤務する教師の事例というように、多様な高校に勤務する教師の事例を収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、とりあえず、本年度収集した10年経験者研修に関わる事例分析を早急に進める。その後、本年度の調査分析結果を調査協力者教師同士で読み合う機会を設ける。そして、それぞれの教師たちに、他の教師たちの事例を参照しながら、国語科授業改善に向けた自分固有の学習スタイルについて、半構造化インタビューを通して語っていただく予定である。調査は、今年度と同様に、授業観察とインタビュー調査とを合わせて行い、行政研修経験が国語科授業実践に及ぼす影響について今年度以上に多角的な考察を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、研究初年度ということで、調査協力者の選定、授業観察の視点やインタビュー質問項目の確定といった、研究の枠組みの設定に思いがけなく時間を要した。そのため、予定を下回る数の事例調査にとどまってしまった。しかしながら、次年度は研究の枠組みがある程度定まったため、予定通り研究を進めることができると考える。 次年度は、新たな教師を研究協力者として選定し事例収集に努めるとともに、本年度における研究協力者に関わる追調査を実施し、より厚みのあるデータ収集を目指す。
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