2012 Fiscal Year Research-status Report
国語科教師が学びのコミュニティにおいて行政教員研修経験を編み直す学習過程の研究
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23531195
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
丸山 範高 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (50412325)
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Keywords | 国語科教育 / 初任者研修 / 10年経験者研修 / 教員研修 / 教師教育 / 質的研究 / 教師の知識 / 教師の学習 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高等学校国語科教師が、普段の国語科授業のための実践知を磨きあげるに至る教師としての学習過程を解明することにあるが、行政機関が行う教員研修受講経験が個々の教師の主体的学習に及ぼす影響関係に焦点化した調査・分析を行う点が特筆できる。なぜなら、先行研究では、教師の学習過程に関する事例研究、および、行政教員研修の制度・内容等の研究はそれぞれ行われてきたが、両者の相互影響関係については十分とは言えない研究状況だからである。 本年度は、前年度に引き続き、高等学校国語科を担当する初任教師および中堅教師それぞれを対象とする事例調査を重ねて行ったが、研究実績の中心としては、初任教師の学習過程および中堅教師の学習過程それぞれについて、その典型性を研究成果として発表したことにある(全国規模学会での口頭発表2件・論文執筆4件)。たとえば、教員採用後2年目の複数の初任教師を対象とした調査結果からは、国語科授業実践知のうち、短期間かつ網羅的な内容で計画された初任者研修での獲得が促されやすい領域の授業実践知と、教師自身の人生全般の経験を基盤にしなければ獲得し難い領域の授業実践知とを区分けすることができた。また、10年経験者研修を受講し終えた複数の教師を対象とした調査結果から、中堅段階の教師たちは、行政研修で提示されたものを主体的に取捨選択するとともに、選択したものであっても直接的に授業実践に反映させることはなく、中長期的な見通しのもとで行政教員研修経験を意味づけていることが解明された。つまり、中堅教師たちは共通して、普段の授業で抱える課題を特定する、その課題解消に資する内容を研修から取捨選択および修正する、そして、授業の再構築を図るとともに次なる段階の課題を発見し、その解消に努めるという学習スタイルを身に付けており、そうした学習を補完するものとして行政教員研修を意味づけているのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画は、高等学校国語科を担当する初任教師および中堅教師それぞれについて、行政教員研修と普段の国語科授業実践との関係性を教師の学習過程モデルとして暫定的に妥当性ある形で提示することにあった。 研究調査については、前年度調査で不十分であった内容を補充する追跡調査が実施できたことにより、内容的に厚みのあるデータを基に、分析・考察を進めることができた。 また、前年度および今年度の調査結果を分析・考察し、初任教師についての教師の学習過程および中堅教師についての教師の学習過程それぞれについて、典型性を浮き彫りにし、成果を学会発表および論文執筆につなげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高等学校国語科教師の学習過程を解明する本研究の最終的なねらいは、教師自身の学習を個人学習という枠内にとどめることなく、他の教師のとの関わりの中で拓かれる学習のあり方を解明することにある。 したがって、次年度も、引き続き、同一教師たちを対象とした調査(授業観察およびインタビュー調査)を行うが、当該教師のことのみに焦点を絞った調査ではなく、本年度以前に行った調査結果を持ち寄り、他の教師の事例を互いに読み合い、自分自身の実践を他の教師の実践と対照させて意味づける機会を多く設けるように努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究開始から2年が終了し、研究図書・研究備品は比較的充実できている。したがって、次年度の研究費の多くは、高等学校国語科教師を対象とする事例調査と学会発表とに要する費用へ振り分けたいと考えている。 また、全国的に教職大学院設置の動きが加速しているため、その動向を把握するための会議、あるいは、国語科教育以外の教育関連諸学会へ出席するための費用にも本研究費の一部を充当し、教師の学習研究についての最新の動向を把握しながら研究を進める。
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