2012 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害児・者の鑑賞活動の方法及び支援ツールの開発
Project/Area Number |
23531205
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
日野 陽子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90269928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩瀬 隆之 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90332759)
横田 真 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (90643643)
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Keywords | 音声ガイドシステム / 視覚障碍者 / 鑑賞教育 |
Research Abstract |
ミュージアムで視覚障碍者が鑑賞を楽しめる音声ガイドシステムの開発を行い、実施検討した。 システム内容は、IDとパスワードを入力してアクセスできるウェブサイトにおいて、音声情報として提供する内容を項目別にテキスト入力できるものである。今回のシステムでは、第一層に9項目、第二層に第一層の項目ごとに9項目(計81項目)、第三層に第二層の項目毎に9項目(計729項目)に分けて入力できた。入力したテキストから商業音声サービス(AI社)を利用して音声情報を作成。アンドロイド型スマートフォンに当該アプリをダウンロード、インストールすることにより、作成した音声情報について項目を選択して聴くことができる。 以上のようなシステムに、2013年1月から3月にかけて細見美術館で開催された「江戸絵画の至宝ー琳派と若冲ー」展内10作品の音声案内を作成して入力。テキスト内容は、作品や作者に関する歴史的、美術専門的な情報解説に偏ることなく、鑑賞者がイメージを自由に派生、展開できるよう柔軟性を持たせる工夫をした。本展会期中、2回に渡り4名の視覚障碍者に当システムを利用してもらい、意見と感想を戴いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関の変更があった。平成24年4月に、研究代表の日野陽子が香川大学から京都教育大学へ異動した。さらに、研究分担者の変更が起きた。当研究課題の申請当初の共同研究者であった塩瀬隆之氏が平成24年度中に京都大学総合博物館から経済産業省へ異動となり、研究分担者資格を喪失された。その後、京都大学学際融合教育推進センターに着任した横田真氏に新たな分担者となることを承諾していただいた。この間、上記内容の学振への申請、科研費、分担者所属機関への送金等が遅れ気味となった。 それでも24年度内に作成した音声ガイドを、視覚障碍者に美術館で試用してもらう段階までこぎつけたが、協力館のネット環境に恵まれず(美術館の建物全体はコンクリート打ち放し。各展示室への出入り口も重工な鉄扉で、閉め切られると電波が殆ど通らなかった)、展示室の作品の前で使用するという状態に持ち込めなかった。結果、システム面では電波の通じる場所で、視覚障碍者に音声アプリを聴いてもらって意見を募り、展示室の作品の前ではテキスト内容を口頭で話しながら検討する、という実施状況となった。研究開発の場面としては成り立っていたが、音声ガイドを利用する一般的な状況ではなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実施により抽出された以下の課題に取り組み、新たにネット環境、展示内容も異なる美術館、博物館での使用を試みる。 システム面では、(1)音声情報をダウンロードした後は、ネット環境がよくないミュージアムやネットが無い状態でも聴けるようにする、(2)アンドロイド型スマートフォンへのアプリ提供まで行った段階だが、利用者の多いiPhoneでも聴けるようにする、(3)アンドロイド型スマートフォンでも動作が不安定なところがあるので修正が必要、(4)入力形式をパネルタッチでの選択ではなく、デフォルトで数字入力(選択肢を音声案内にすることにより視覚障碍者でも選択ができる)にする、または音声入力で対応できるようにする、等。 テキスト入力と内容の面では、(1)繰り返しになっても、各階層で作者とタイトルは必ずテキストの始めに入れる(視覚障碍者にとって、どの作品の内容を聞いているのか常に明確であることが重要)、(2)タイトルに使われている漢字の説明を入れる、(3)美術館(特に私設美術館)や企画展に関する情報も入れる、(4)情報過多にならないように、あくまでコミュニケーションの材料であるような内容に務める、等。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
システム開発に400,000、主に京都ー東京間での旅費、宿泊費に200,000、物品費、謝金(モニターをしてくれる視覚障碍者、協力ミュージアム等)等に200,000程度使用の予定である。
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