2012 Fiscal Year Research-status Report
小集団による協調的な学力を目指した数学学習の実践研究
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23531207
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
吉村 直道 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90452698)
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Keywords | 協調的な学力 / 社会的相互作用 / 小集団 / 数学学習 / 「見つめ考え議論する」学習 / 異質な集団で活動する力 |
Research Abstract |
今年度は,協調的な学力の育成を目指した昨年度の実践を整理し改善を図ることが目的であった。 今年度の研究実績としては大きく3点あげることができる。 一つ目は,昨年度の実践をもとに,協調的な学力の育成する数学学習のありかたとして「見つめ考え議論する」学習を提唱し,日本教科教育学会(2012年11月)にてその報告をしたことである。この「見つめ考え議論する」学習は,時として「教えずに考えさせる」授業として揶揄される構成的な学習を基本とするものの,より積極的な教師の関わりと,学習者同士の社会的相互作用の重要性を強調したものであり,これからの数学教育を考える一つの具体的な実践になり得るものである。 二つ目は,昨年度は同じ部活動に所属する中学生を対象にこの実践研究に取り組んだのに対し,今年度は学校も学年も異なる学習者同士初対面の中学生に対して,「見つめ考え議論する」学習の実践を行い,昨年度と同様,当初は決まり切ったもののように捉えられていた数学観が,活動的で自分たちの発想によって大いに変わり利用できるものとして数学の捉え方が変化することを指摘することができた。しかしながら,顔なじみの集団と初対面の学習者たちの集団での社会的相互作用において,大きな差を導出することができ,来年度その差について検討し,相互作用を活性化する方策をさぐる予定である。 最後三つ目は,協調的な学力を目指した学習実践において,認知的葛藤や相互作用を活性化する教材開発は重要であり,今年度,ハチの巣の形に注目した教材とループコースパズルを利用した論理について考える教材を開発し,実践できたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,協調的な学力の育成を目指した数学学習の実践研究である。 今年度も9名の中学生,しかも学校も学年も異なる初対面の中学生に対して,4日間の学習に取り組んだ。その学習を通して,「非融通/テスト」といったイメージで捉えられていた数学の学習観が,「活動的・利用可能/発想・理解」といったイメージで捉えられるものへと変容していることが数量化3類という統計手法によって確認でき,協調的な学力の育成にこうした学習が貢献できる可能性を指摘することができた。 加えて,本年度はこの学習の基礎理論を「見つめ考え議論する」学習と提起し,日本教科教育学会において公表し,その可能性を問うことができた。 また,昨年度の実践と今年度の実践を比較することで,初対面の学習者においては明らかに学習者同士の相互作用は少ないにもかかわらず,学習後のアンケートや学習者自身の感想発表においては学習者自身社会的相互作用の影響を十分に感得しており,学習の成果自体も昨年度と同様であることが確認された。来年度は,初対面の学習者に対しても社会的相互作用が顕在化される学習となるためには,どのようにすればよいかについて研究する課題を発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度も公募によって学習者を募り,「見つめ考え議論する」学習に取り組み,その学習過程について研究する。 今年度明らかになったように,意識される社会的相互作用は同程度であっても,初対面の子どもたちによる学習では顔なじみの集団と比べて顕在化される社会的相互作用は明らかに少ない。「異質な集団で活動する力」に通じる協調的な学力を意図的に育成するためには更なる手立てが必要である。その手立てを検討し,異質な集団,初対面の集団において社会的相互作用が活性化し顕在化する学習に取り組み,その実践を公表したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多様な相互作用を生み出しながら,子どもたちは学習を進めていく。その活動を,効果的に記録・蓄積し,多様な観点・解釈をもって分析していくことが,本研究では必要である。そのため,記録機器,記録媒体,データ集積媒体,データ編集機器(パソコンを含む)を随時更新しながら取りそろえ,研究を進めていく。 また,学習者の発話記録(スクリプト)を資料として分析するのが本研究の研究手法であり,テープ起こしを業者依頼したり,謝金にてテープ起こし作業をお願いしたりする予定である。その発話記録をもとに,データマインド分析に取り組む予定であり,それらのソフト購入等に本研究費を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)