2012 Fiscal Year Research-status Report
体系的な対外認識育成をはかる外国史教育の内容構成に関する理論的・実践的研究
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23531216
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
佐藤 公 武蔵野大学, 教育学部, 准教授 (90323229)
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Keywords | 社会科教育 / 歴史教育 / 対外認識 / 外国史 / 歴史地図 |
Research Abstract |
平成24年度は、ドイツ歴史教育および地理教育における「歴史地図」の扱いに関する先行研究の収集を進め、時間認識及び空間認識に資する「歴史地図」の要件の明確化と教材性に関する考察を行った。具体的には、実践活動を支える教科書等教材にみる「歴史地図」の使用とその形態に関する調査として、ドイツ・ブラウンシュヴァイク市にある「ゲオルク・エッカート・国際歴史教科書研究所」及びライプチヒ市で開催された「ライプチヒ・ブックフェアー」を訪問し、収集展示された現行の歴史及び地理教科書について、歴史地図の観点から資料収集と調査・分析を行った。これをふまえ、以下の二点に関して考察を進めた。 1.ドイツでの歴史地図を用いた歴史教育・地理教育の現状について、歴史教授法に関する雑誌等刊行物に見られる、歴史地図の活用法に関する特集記事を収集した。ドイツにおける歴史地図の活用は、現在の地理的な位置関係に過去の歴史的社会の関係を反映した地図(Geschichtskarten)が主流であり、過去の政治的・社会的観点を反映した過去の地図(Historische Karten)はあまり使用されていないことが明らかとなった。そして、これらの活用法もまた、現在の正確な地図上に、歴史的事情を反映していく作業的な手法と、当時の地図表記上に歴史的事象を読み取る解釈的な手法へと、大きく2つに分けられる点が興味深いものであった。 2.学習活動を支える教科書や教材の現状について、ブックフェアーに出展した大手教科書・教材会社の担当者を通じて、教材づくりの方向性や入手可能性について調査を行った。大きな傾向として、タブレットPCのような個別学習促進のためのツールは比較的導入されておらず、パソコン・プロジェクター・ホワイトボードの組み合わせで歴史と地理が融合した学習を実現するなど、高価な電子黒板に頼らない工夫を凝らした教具が紹介されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、ドイツに関する資料収集・考察に加えて、日本での教育実践について地図作成学および歴史教育学分野における先行研究における検討成果と課題の抽出を行い、時間認識と空間認識を統一的に把握するための史資料選択に関する調査と収集を進める予定であった。しかし、この点に関しては、これまでの日本における歴史教育・地理教育実践の抽出にとどまり、内容を検討する段階に至ることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の成果報告に向けて、推進方策は大きく二点挙げられる。一つは、これまで収集したアメリカ・ドイツの歴史教育および地理教育における「歴史地図」の扱いに関して検討を進め、時間認識及び空間認識に資する「歴史地図」の要件の明確化と教材性に関する考察結果を元に、比較検討を行うことである。 もう一つは、日本での「世界史」学習における通史的「歴史地図」活用実践の創造に向けて、過年度までの遅れも補足しながら、地図作成学と歴史地図活用要件の関連性、および活用・援用可能性について、アメリカ・ドイツ両国の比較対照結果を踏まえた考察検討を行うことである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度にあたる平成25年度は、研究の仕上げとして国内学会における研究成果発表機会を確保しつつ、成果公表のための考察を進める。そのために、資料整理・研究補助作業に対する謝金や、データ管理出力に必要な周辺機器購入、報告書印刷費等、成果刊行に必要とされる経費を予定している。あわせて、過年度の達成度及び研究費執行状況も鑑み、国内外での資料調査・収集を行う旅費も計上する。さらに継続して、収集した史資料の検討に必要となる歴史・地理教科書や関連専門書を購入する。
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