2012 Fiscal Year Research-status Report
社会科における論理的思考力と公正な社会的判断力の育成に関する実践的比較研究
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23531218
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
坪井 龍太 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 准教授 (30440374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 誠司 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10282782)
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Keywords | シチズンシップ教育 / 社会科教育 / 多文化教育 / エクィティ / コンプリヘンシブ |
Research Abstract |
多文化社会では異質な価値観の衝突が生じる。一方の価値観から見るともう一方の価値観は「トレラント-tolerant(寛容)」ではない存在、つまり「イントレランス-intolerance(不寛容)」ということになる。この「イントレランス」に対して、子どもたちがどのような認識をし、どうのような意識や態度を身につけるべきか、そのための社会科教育はどうあるべきかを平成23年度に続き考究した。アメリカの多文化教育における「エクィティ教授論(Equity Pedagogy)」を手がかりに、日米の具体的な社会科実践の観察・分析を通じて、それを明らかにすることが本研究の中心課題である。 1.授業観察・学校観察 アメリカ・ハワイ州の公立及び私立小学校において観察・記録・分析を行った。また国内では、横浜市立霧が丘中学校、神奈川県立霧が丘高等学校、横浜翠陵中学・高等学校、東洋英和女学院中学部・高等部、東京都立東村山高等学校、東京都立田柄高等学校、東京都立蒲田高等学校で観察・記録・分析を行った。 2.「コンプリヘンシブ」に関する資料の収集、ハワイ州教育局を中心に、教育政策における「コンプリヘンシブ」に関する資料収集を行った。教育局社会課専門官への聞き取り調査もあわせて行った。 3.12月に全米多文化教育学会(フィラデルフィア)に出席し、多文化教育・エクィティ教授論の今日的課題について情報収集するとともに、各国研究者との情報交換を行った。 4.中学・高校から大学の一貫教育をはかる教育方法を探究するために、東洋英和女学院中高部教員との連携を深め、博学連携教育や社会科歴史的分野と公民的分野の接続について研究し、本研究における社会科教育研究の基礎部分を骨太にするように努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、平成23年度の横浜市立霧が丘中学校、神奈川県立霧が丘高等学校、横浜翠陵中学・高等学校、東洋英和女学院中学部・高等部に加え、東京都立東村山高等学校、東京都立田柄高等学校、東京都立蒲田高等学校といった特色ある公立高等学校での観察・記録・分析を行えるようになった。 研究分担者は、前年度に引き続き、アメリカ・ハワイ州の公立・私立小学校において、観察調査を継続できており、あわせて当該分野の現地学会への参加を通じて、最新の情報及び研究課題を把握することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果をもとに、研究代表者は国内の授業記録による実践分析を、研究分担者はハワイ州での授業記録による実践分析をそれぞれ行う。これらの実践や分析を通じて、国内の民族的・文化的に多様な子どもたちへの教育のあり方を、移民国家アメリカにおける多文化教育理論と実践と重ね合わせながら、子どもたちの実際の姿に即して、質的研究の方法を深め、研究最終年度に提言を行うべく作業を進めていく。 研究代表者と研究分担者は日米の授業記録分析を通じて、その枠組みを確定しつつ、社会科教育で形成されうる思考力・判断力・表現力を考究し、多文化教育理論の射程するシチズンシップ教育の具体的内容と方法を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者は、国内での授業実践分析を、研究分担者は海外での授業実践分析を、精力的に継続する。あくまで、子どもたちの現実の姿に即し、本研究のテーマを実践的に解明しようとするためである。そのため、研究費の使用は旅費が多くを占める。
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