2012 Fiscal Year Research-status Report
歌の生成と自然環境との関わりからみる文化理解とその指導法開発に向けた学際研究
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23531220
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
加藤 晴子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (10454290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 内藏進 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90191981)
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Keywords | 歌の生成 / 異文化理解 / 自然環境 / 小中学校の指導法開発 / 教科の連携 |
Research Abstract |
本研究は,歌の生成に焦点をあてて,音楽表現とその背景にある気候・風土等の自然環境との関わりについて学際的考察を行うことを通して,児童生徒が音楽を文化として総合的,主体的に捉える眼を養うことへ向けた指導方法の開発を目的とする。自然環境に関しては,気候の地域的違いや中緯度の中でも微妙に違う季節サイクルとの関わりに注目した。 今年度は,平成23年度に行った調査や情報収集で得た資料をもとに,季節を歌った民謡や伝承歌について歌詞を中心に分析を行い,歌に表現に表現されている事柄を整理し,方言の背景にある季節感について考察を深めた。さらに中国,昆明において新たに資料を収集し,中国の音楽についても雲南省の音楽を中心に分析を進めてきた。また,このような作品の背景にある季節の細かいサイクルに関して,H24年度は,特に日本の降水の季節的差異やその大気環境に注目して,新たな解析やこれまでの解析結果の体系化を行った。その結果,音楽とその背景にある気候や生活との密接な関わりを知るための手がかりを複数得ることができた。それらをもとにして,文化理解を視点とした音楽と理科を融合した学習について,小学校から中学校でのそれぞれの教科の学習の積み重ねも踏まえながら具体例を示し,それらを学会発表や論文発表を行ってきた。例えば,既に本課題の準備研究として行っていた《朧月夜》を接点とする学際的な授業実践結果について分析し,更なる提言をまとめた。以上のように,文化理解のための学習の方向や可能性について,より実践的な形でその可能性や有用性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には,昨年度行ってきた異文化理解のための指導法開発の素材の精選をもとに,民謡や伝承歌の様態について音楽的な分析を進めてきた。気候についても,単に四季という括りでみるのではなく,その移り変わりに注目し,それぞれの特徴を明らかにしてきた。そこから気候の特徴と,それによって育まれる季節感,歌に表現された季節感という複数の側面から歌の生成を見ていくことができている。その上で,文化理解の学習の視点からみるとするならば,歌や気候のどのような所に焦点をあてていくと良いのか,気候と音楽がより密接に関わっている点を抽出し,そこを切り口として分析・考察を深めてきた。その結果をもとに,小学校や中学校における授業実践の可能性をより具体的なかたちで提示することに取り組んできた。その中でも学習プランの作成にあたっては,音楽と理科について,それぞれの教科としての小学校から中学校までの学習の積み上げを踏まえた上で,教科の連携について示すことができた。また,指導法の開発にむけて予備的な授業実践も行っており,そこからも今後の進展の指針が見えてきている。 研究の成果の一部についは,その成果を学会で発表し,論文にもまとめている。このようなことから,現段階における研究の達成度は,ほぼ「計画通り」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には,24年度で行った分析考察をさらに発展させていく。季節感を接点として自然環境と歌の生成に関する知見をさらに深めていきたい。また,自然環境の微妙な違いにも着目していることから,これまで行ってきたブロックでみた地域の比較をさらに発展させたい。そのために,さらに調査,資料収集を行い,それを異文化理解の学習に提案する素材の収集に繋げたいと考えている。 その上で,小学校・中学校での異文化理解の学習のための指導方法を複数提示する。そこでは,地域によって,学習者の体験や興味,あるいがそれまでの学習との関連から適宜選択して用いることができるような内容の構成を考えている。そのために,小学校,中学校において提示した学習プランに基づく授業実践を行う。現在,実施にむけた計画を進めている。大学の教員養成課程の担当授業の中でも実践を行う。複数の授業実践の分析・検証を通して,学習プランの有効性や課題を明らかにし,そこから再度,学習プランを立てる。それらを異文化理解の学習のための手引き書の元資料・試案とし,公開して教育現場から広く意見を求める。 研究の成果について,国内外の学会において口頭発表や論文発表を行い,多方面から意見を受け,それらをもとに手引書を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に生じた次年度使用額(約23万円)については,24年度の成果の一部の発表と資料や研究情報の収集に使用する(未使用額が生じたのは,平成25年度に更に国外での資料収集などの出張が必要なことが判明したため,そのための経費の一部とするため)。例えば,同じ中緯度地域でも詳細に見れば季節サイクルの特徴の異なるドイツは,日本付近との興味深い比較材料であるため,ドイツの民謡研究所での資料収集のための出張などにも使用する。また,24年度に中国で収集した資料の整理や翻訳,これまでの成果を踏まえた研究のさらなる進展のために専門家からの知見の提供の謝金にも使用する。このようなことによって,研究全体がより効率的に進められ,最終の目的に到達すると考えたためである。 このように次年度は,全体としてみると,当初計画にほぼ沿って,研究資料の入手,その分析・知見の再体系化,授業実践・分析のための経費,手引書作成の経費,成果発表や研究打ち合わせのための旅費等に研究経費を使用する予定である。
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