2012 Fiscal Year Research-status Report
学校音楽カリキュラム経験研究―子どもの教科学習の「学び」の経験と意味の実証的解明
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23531223
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笹野 恵理子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70260693)
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Keywords | 学校音楽 / 学校音楽教育 / カリキュラム経験 / 学校音楽文化 / 音楽科教育 / 生きられたカリキュラム / 潜在的カリキュラム / 国際研究者交流(韓国) |
Research Abstract |
学校音楽カリキュラムは、当事者である子どもに実際にどのように経験されるのか。この問いに支えられて、本研究の目的は、学習者の「学校音楽カリキュラム経験」を解明するものである。本年度は、①大学生の「語り」における学校音楽カリキュラム経験のダイナミズムの解明、②中学校におけるエスノグラフィ―の実施と、その一環として実施した学校音楽カリキュラム経験の内容構造分析のための量的調査、③ジェンダーの視点からみた学校音楽カリキュラム経験の分析、を行った。 ① 大学生の「語り」の分析をとおして、生徒の学校音楽カリキュラム経験の意味付与を規定する4つの文脈を具体的に明らかにした。そこにおいて析出した文脈は、「カリキュラムに関する役割(curriculim role)」「カリキュラム・アイデンティティ」「教師との相互作用」「生徒同士の相互作用」である。「カリキュラムに関する役割」には「生徒同士の相互作用」が、「カリキュラム・アイデンティティ」には「教師との相互作用」が強く作用する。 また「適応同調型」「非適応同調形」「適応非同調型」「非適応非同調型」の4類型をみとめ、それらの類型におけるダイナミズムの様相を明らかにした。 ② 中学生の学校音楽カリキュラム経験の内容構造については、昨年析出した小学生5、6年とほぼ同じような傾向を示した。ここで注目されるべき点は、小学校の分析においても析出した集団性を示す因子が中学生においても認められる点である。すなわち、学校音楽は、集団的に経験される傾向があるといえる。 ③ ジェンダーの視点から分析すると、男子のほうが未分化な経験構造をもち、女子のほうが分化された経験構造をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展している。 その理由の第1は、フィールドの確保がスムーズにできたことによるが大きい。学校側には大変積極的な協力の姿勢があり、学校行事やその他さまざまな行事の参加も認められた。 1年間継続的にひとつの中学校の特定のクラスで、部活動も含めた学校生活全体を参与観察できたことは大きな成果であった。 第2に、研究方法、特に質的手法について、一定の方向性を見出すことができた点があげられる。この点は、研究をまとめるについて、大きな意味をもったといえる。 第3に、研究補助が昨年度から引き継いで継続的に依頼できたことで、作業効率があがった点である。フィールドワークの映像や質問紙調査の入力など、ルーティンな形ができあがり、研究の推進力となった。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に計画していた質問紙調査の分析が、やや遅れ、そのため計上していた分析についての研究補助費について未使用となり次年度使用額を派生させた。その理由は、調査票回収が年度末にさしかかたっためである。分析手法や枠組は確定しているため、次年度使用額において、計画通り質問紙調査の分析をすすめる。 次年度は、研究最終年度であり、量的分析と質的分析をあわせた一定の仮説的結論を提示し、研究成果公表を重点的に考えたい。H24年度に本務校都合により予定していた学会出張を1回中止したため、成果公表のために計上していた旅費が次年度使用額となったが、あわせて成果公表につとめたい。 理論的貢献については、特に、生涯的スパンにたった学校音楽カリキュラム経験についての理論モデルを提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1 データ解析 質問紙調査の回収が年度末であったため、次年度はそのデータ解析に謝金を計上する(次年度使用額を計上する)。 2 量的調査 生涯スパンにたった量的調査を実施する。そのためデータ入力と解析に謝金を計上する。 3 成果発表 研究最終年度であることから、本研究の成果発表として、国内外における学会発表を予定している。そのための旅費を計上する。 4 その他 研究最終年度であることから、国内外の学術誌に投稿予定であり、投稿費あるいは論文抜きずり費を計上する。
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Research Products
(12 results)