2011 Fiscal Year Research-status Report
造形教育に関する一考察 ―物質性と肌理の関係から―
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23531226
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Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
足立 元 日本文理大学, 工学部, 准教授 (10389554)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 造形素材の物質性 / デジタル画像 |
Research Abstract |
これは造形活動において、物質的な特性が表現とどのような関わりを持つかという点に関する研究である。 これまでに研究されていない新たな素材として、デジタル画像を取り上げて研究対象とする。これを造形素材として用いることができれば、造形の手法を拡張することが可能になると考えられる。従来、素材や構成に関する研究は、バウハウスに関するものが知られている。また、ロシア・アヴァンギャルドやスイス派の構成的なグラフィック・デザインの研究も存在する。このような文献や作品、歴史、理論に関する研究からは、当時の素材訓練の方法論の重要性を知ることができる。また、造形の理念として構成という概念は現在でも興味深い。また、ブルーノ・ムナーリは1967年にハーヴァード大学にて講義を行ったが、そこで彼はヴィジュアル・コミュニケーションの媒体の一つとしてフォルムや構造などと共にテクスチャを位置付けている。ムナーリはテクスチャを「表面に質感を与える」目的で用いられるもので、「視覚的な興味」を引き起こすものと考えている。これらの研究や実践について調査・考察し、デジタル画像を質感化する手続きについて研究することで、この素材を操作可能にする手法を探っていく。 平成23年度は、文献研究、及び作品調査、作品制作・発表を行った。その成果を論文「デジタル画像の物質性についての一考察-素材の質感化の観点から-(美術教育学第33号)(査読付き)」において発表した。この論文では「質感化」に関する研究成果を、高校生の表現を分析することにより検証した。生徒たちは画面に何らかの質感を持たせようとしていたことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は以下の研究を実施した。1.素材とその物質性の検討:バウハウスの予備課程のカリキュラムや教授陣の自由制作、著述を検討する。他の研究(ムナーリの実践記録その他)を調査し比較検討する。以上により、この研究で扱う素材および物質性について明確にする。これについて文献研究および作品調査を行った。2.研究手法の確立:デジタル画像を素材化するための手法を確立する。肌理をキーワードに表面を形作る手法を探る。これについて研究し、3.の手法を用いて作品制作・発表を行った。その成果を論文「「デジタル画像の物質性についての一考察 ―素材の質感化の観点から―(美術教育学第33号)(査読付き)」にて発表した。「肌理」はデジタル画像の質感化に関する特殊な一例と考えることができる。3.2の手法について次の仮説を立て、検証した。仮説1「質感化」デジタル技術のうち画像処理分野の技術を応用し、表面を質感化することにより視覚的な興味を引き起こす肌理の生成を図る。これは、素材に物質性を持たせる手法を探ることである。画像処理の技法をどのように応用すれば質感化を達成することができるのかについて試行を繰り返す。これについて作品制作・発表を行った。4.画像とその生成手法の評価:3の手法を評価/検証するための方法を検討する。論文「デジタル画像の物質性についての一考察 ―素材の質感化の観点から―(美術教育学第33号)(査読付き)」において研究の成果を発表した。この論文では「質感化」に関する研究成果を、高校生の表現を分析することにより検証した。生徒たちは画面に何らかの質感を持たせようとしていたことが推測された。以上の成果を勘案し初年度の研究はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は23年度の文献研究、作品調査、作品制作・発表を発展継続する。また、必要であれば論文を執筆し、成果を問う。3年計画の中間年にあたるため、中間成果発表を積極的に行う。作品発表と学会発表を予定している。具体的な計画は以下の通り。1.素材と物質性の検討:バウハウスの教授陣の自由制作、著述を検討する。他の研究(ムナーリの実践記録その他)を調査し比較検討する。以上により、この研究で扱う素材および物質性について明確にする。2.研究手法の確立:デジタル画像を素材化するための手法を確立する。肌理をキーワードに表面を形作る手法を探る。3.2の手法について:2の手法について次の仮説を立て、検証する。仮説1「質感化」デジタル技術のうち画像処理分野の技術を応用し、表面を質感化することにより視覚的な興味を引き起こす肌理の生成を図る。これは、素材に物質性を持たせる手法を探ることである。画像処理の技法をどのように応用すれば質感化を達成することができるのかについて試行を繰り返す。仮説2「空間」生成した画像に構成の理念を適用し、空間を感じさせる画像を生成する。デジタル画像という素材が物質性を持ち、操作可能であることを示すことが目的である。また、作品発表を行いこれを検証する。4. 教材化の研究と教育実践への応用:以上の研究を基に教材化を行う。これまでの成果から「デジタル・グラフィック」、「Image Processing」、「Computer Graphics」を執筆し教科書として使用している。これらを用いて教育実践を行い、結果を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策をもとに、研究費の使用計画を立案した。24年度は研究成果発表の機会をできる限り多く設けたいと考えており、前年度からの繰り越しを主にこれにあてる。研究計画学会発表2回(旅費、参加費、資料代等(200,000))、ホームページ作成(物品費、運営費、作成料等(150,000))、作品制作(制作費等(200,000))、作品発表(出品料、送料他(100,000))、作品調査(旅費等(400,000))、論文執筆(掲載料等(50,000))、書籍費・謝金その他(135,102)。
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