2011 Fiscal Year Research-status Report
市民性概念の歴史的比較教育的分析に基づく市民性教育内容開発
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23531227
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Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
釜本 健司 沖縄大学, 人文学部, 准教授 (10435208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 伸 大阪大谷大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70508465)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 市民性 / 教育内容開発 / 教育史 / 比較教育 |
Research Abstract |
今年度の研究は主に次の二点の内容をもつものであった。一点目は,内外の市民性概念や市民性意識とその歴史的展開に関する資料を収集するとともに,その分析を手がけたことである。具体的には,2011年6月のアイルランド調査において,ヨーロッパにおける市民性教育の現状や市民性意識に関わる研究の動向を把握し,関連資料を収集できた。また,2012年3月のアメリカ調査でも,アメリカ史にみられる市民性の特質を把握するとともに,日本における社会科成立期の市民性概念の把握に資する資料を収集できた。また,これに関連して戦前公民科や戦後社会科における市民性の捉え方について,関係学会で発表を行なった。このことの意義・重要性としては,戦前の日本や現代のヨーロッパにおける市民性概念の捉え方の一端を析出でき,教育内容開発の基盤となる市民性概念の認識がある程度なしえたことが挙げられる。 二点目は,現代日本における市民性意識を捉えるための枠組みを,歴史的視野からの検討や国際比較が可能な形で考察したことである。具体的には,市民性意識を捉えるためのアンケートや国際学力調査の枠組みや内容について検討し,市民性育成の日本的特質を解明するためのフレームワークの考察を行なった。これによって,次年度以降の研究でさらに検討していく市民性意識の現状,および日本的特質に根ざした市民性概念の捉え方を深く捉えるための基礎作業ができた。今年度は,アンケート調査というよりはむしろ文献調査を主として実施したが,これは,内外でなされた調査結果の分析によって,現在の日本の市民性意識をより精緻に捉えることめざしたためである。 今年度は,以上の内容からなる研究により,日本における市民性意識や市民性教育の史的展開および諸外国における市民性意識の特質を分析し,教育内容開発に資する市民性概念の日本的特質の把握する基礎的研究を実施できたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このように評価した理由は,23年度の研究で日本における市民性教育・市民性意識,市民性概念とその歴史的展開に関する文献,および英国を中心とする外国の市民性教育論や市民性意識に関する文献の収集および分析・検討については,充実した調査をなしえたからである。また,内外の調査研究の結果をも含んで,市民性意識や市民性概念の分析ができたことで,市民性意識のフレームワークについてもある程度の考察ができたからである。 さらに,上記のような状況から,研究の目標のうち,日本における市民性意識と市民性教育の史的展開,および諸外国における市民性意識と市民性教育論の関係について,研究1年目の時点で基礎的な検討考察を展開できたといえるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は,日本の子どもの市民性意識の現状を捉えるためのアンケート調査を実施し,昨年度考察した市民性意識のフレームワークについて修正・検討を行なうとともに,文献調査を継続し,市民性意識や市民性概念の捉え方についての日本的特質をさらに精緻に解明していく。 これらの点に関する考察をすすめつつ,市民性概念の日本的特質に根ざした市民性教育内容を開発していく。具体的には,初等中等教育における社会系教科(社会科,地理歴史科,公民科,生活科)で実践可能な教育内容の構築を図る。 このような形で分析・開発した本研究の内容は,市民性教育内容開発に関する課題を提起する形で内外の市民性教育関連学会で報告するとともに,成果を論文にまとめて学会機関誌に投稿する。また,本研究において出された市民性意識に関する研究調査の知見と開発した教育内容は,当該分野の専門家のみならず,日本の学校教育現場にも還元していきたい。 こうした研究を実施することによって,市民性教育内容開発の新視点を提案するとともに,理論研究・開発(実践)研究双方の視点から,市民性教育研究の方法論を吟味することを可能にする研究を進めていくことを構想している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降において,研究費は,物品費・旅費や調査に関連する資料印刷費として使用していく。物品費(平成24年度165千円,平成25年度140千円)は,研究当初に構想していたとおり,主に研究の遂行に必要な図書資料費として使用する予定である。 旅費(平成24年度630千円,平成25年度700千円)は研究会議や内外での研究調査や内外での研究成果発表および国際会議の開催を目的として使用する予定である。 謝金・人件費(60千円)は,本研究の遂行上重要な専門知識を提供していただいた研究者への謝金として使用する予定である。 その他の経費(平成24年度50千円,平成25年度200千円)は,主に研究資料や最終報告書の印刷費および連絡通信に必要な郵送費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)