2012 Fiscal Year Research-status Report
臨床的アプローチとESDを基軸とした日韓相互理解のための歴史教育の教材開発研究
Project/Area Number |
23531245
|
Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
釜田 聡 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60345543)
|
Keywords | 国際研究者交流 / 韓国 |
Research Abstract |
平成24年度は,次の3点について,重点的に取り組んだ。 12012年度日韓双方の中学校現場で活用されている歴史教科書における近世から近代 の日韓関係史に関する叙述を比較検討した。2韓国新教育課程の基礎的研究(「国史」から「歴史」への変遷の実相を中心に)3現地調査等:日韓のESDに関する歴史的建造物や博物館,史跡等を訪問し,教材開発のための資料収集を行った。 以上の研究から,次のことを知見として導出できた。(1)日韓の歴史教科書とも近世から近代までの日韓関係史の叙述は,朝鮮通信使関連の叙述だけであった。(2)日韓の歴史教科書とも朝鮮通信使の互恵性を十分に叙述していない。日本の中学校歴史教科書の方が朝鮮通信使の叙述が充実している。(3)ESDの視座から日本列島と朝鮮半島の関係史をとらえ直すと,朝鮮通信使に着目した教材開発が有効であるという手応えを得た。 (4)韓国の新教育課程では,東アジア史を重視し,国史からの脱却を意図している潮 流もあるが,日韓に横たわる領土問題(竹島・独島)の動向を受け,ナショナリズム色が明確に打ち出されている箇所もある。課題としては,領土問題を中心とした政治外交上の問題を,ESDの視点から歴史教育の教材からどのようにとらえ直すかが今後の研究課題として浮き彫りになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年の当初の研究計画と実際の研究結果と照らし合わせると,それぞれの達成度は次のとおりである。12012年度日韓双方の中学校現場で活用されている歴史教科書における近世から近代の日韓関係史に関する叙述を比較検討した。2韓国新教育課程の基礎的研究(「国史」から「歴史」への変遷の実相を中心に)1と2については,当初予定を十分に達成し,その成果を上越教育大学の研究紀要(釜田聡・許信恵「日韓の中学校歴史教科書叙述に関する研究-近世から近代の日韓関係史を中心に-」『上越教育大学研究紀要』VOL.32,上越教育大学,pp.93-102)にて公表した。3の現地調査については,韓国の現地調査及び資料収集と日本国内の現地調査及び資料収集共に順調に進み当初予定を十分に達成した。とりわけ,韓国側の公州博物館からの資料提供は古代の日韓の交流の足跡と現在,そして未来を結ぶものとして,ESDの教材として大きな可能性が確認できた。 日韓の臨床的調査のための基礎調査のうち,日韓双方の基礎調査は十分に進んでいる。しかし,現在,アンケート調査のための質問項目の精選に若干遅れがみられるが,最終年度の研究計画にゆとりを持たせているので,十分に対応可能である。日韓双方の研究協力者の協議の深まりとネットワークの成熟は,予想以上の成果があり,最終年度の研究推進は大いに期待できる状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究推進計画は次のとおりである。 最初に,平成24年度までの研究成果を再検討し,カリキュラム・教材開発の候補を選定する。今のところ,「古代から近世まで」と「近現代」の二つのカリキュラム・教材の開発を予定している。次に教育現場に横たわる歴史認識問題を再度確認する。その上で,日韓双方の教育現場を対象としたアンケート調査及びカリキュラム・教材の開発の視点を導出し,カリキュラム・教材を開発する。続いて,開発したカリキュラム・教材を活用した授業実践を行い,その成果と課題を抽出し,カリキュラム・教材を再検討する。再検討する視点はESDと日韓相互理解である。 最後に研究成果の公表であるが,次の手順で考えている。 上越教育大学の研究紀要に平成25年度前半までの研究成果を公表する。次に平成25年度末までにカリキュラム・教材の概要と実践の結果を研究報告書等で公表する。研究成果の全体像については,平成26年度以降の関連学会(日本国際理解教育学会,韓国国際理解教育学会他)にて広く公表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は次のように研究費の使途を計画している。 〇物品費10万円:臨床的アプローチ(教室内のデータ収集)及び現地調査のための機器購入のため 〇旅費80万円:日韓双方の研究協力者の研究打合せ及び調査旅費,学会発表等のため 〇人件費・謝金10万円:臨床的アプローチのためのアンケート調査の実施,データ収集・分析のための人件費及び謝金のため 〇その他10万円:アンケート用紙の郵送費や印刷製本費など
|
Research Products
(3 results)