2012 Fiscal Year Research-status Report
身体を通して自然環境を体感する“膜構造”を用いた教育遊具の開発
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23531246
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
村松 俊夫 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00262642)
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Keywords | 教育遊具 / 美術科教育 / キネティックアート / 造形論 / 形態構成 / 幾何学 / 物理学 / 身体性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、様々な形態が持つ基本的な性質(動き・錯視)について、造形芸術的側面と科学的側面からアプローチし、造形教育(デザイン)のみならず理科教育(物理)や数学教育(幾何学)の見地からも有用な内容を、体験者が直接手で触って感受できる、あ るいはそれに乗って遊ぶことができる大型の教育遊具として開発することにある。 今年度の研究成果は、展覧会における展示として 1.第62回記念モダンアート展(東京都美術館)2012年4月1日~15日、他3美術館巡回、2.第8回ピアザ展(銀座・ギャラリー青羅)2012年6月3日~9日、3.現代美術「ZEROの視点」展(豊田市美術館)2012年8月28日~9月2日、4.日本基礎造形学会第23回大会作品展(九州産業大学美術館)2012年8月30日~9月2日、5.2012KANAZAWAモダンアート展(金沢21世紀美術館)2012年9月25日~9月30日、6.環境芸術学会第13回大会作品展(東海大学湘南校舎S-Plaza)において発表した。 学会等における口頭発表では、1.搭乗型キネティックアートにおける鑑賞者の反応について-個展「地上遊泳」におけるアンケート調査結果から-(2012年度環境芸術学会第13回大会・東海大学湘南キャンパス)2012年11月25日、2.奇数スフェリコンの構造を応用した往復運動するオブジェの試作-頂角60°の正円錐による「Tri-sphericon」-(2012年度日本図学会秋季(東京)大会・東京工科大学蒲田キャンパス)2012年12月15日)で公表した。 なお、口頭発表2.は、聴講者による推薦投票で発表44件中2編に送られる「優秀研究発表賞」を獲得した。 また、科学研究費助成によるこれまでの研究業績により「2012年度日本図学会賞」も受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度において、鑑賞者や体験者から広く意見を聴取し、FRP(繊維強化プラスチック)を用いた「面(膜)構造」による搭乗型造形作品の可能性を検討してきた。しかしながら、硬質なポリカーボネートのような樹脂以外では,外部を見通せる透明度があり、なおかつ荷重に耐えうる素材を発見することが難しかった。ポリカーボネ―トは、成形の型に相当の経費が必要である。そこで24年度の研究では、これまでのメインのフレームに細いステンレスパイプを組み込んだ梯子状の構造で,搭乗型作品を試行してみた。結果、前作「Space Walk on the Earth II」と比較し,それとの差異として次の3点が検証された。 1)“仮想接地線”をさらに拡大することで平行な実接地線円弧の幅が拡がり、実材で構成された空間がより大きくなった。 2)座席を排し、作品に身体を固定しないことにした。これにより、ジャングルジムの内部を歩行移動する感覚で、搭乗者がさかさまになることなく作品を回転させることができた。また、身長175㎝程度の搭乗者も内部に入れる作品となった。 3)平行な円弧による実接地線の幅を拡げたことにより、IIよりも安定性の高い円柱側面が生まれ、シーソーのような往復運動を繰り返す新たな搭乗方法の可能性を確認できた。 また、科学研究費助成によるこれまでの研究業績により「2012年度日本図学会賞」を受賞した。 以上のことから、今年度の達成度は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
「偶数スフェリコン」においては、24年度に完成させた試作「Space Walk on the Earth IV」て得た知見をもとに、メインのフレームに細いステンレスパイプを組み込んだ梯子状の構造が“Hexsasphericon”にも応用可能か検証する。前作と同様に「仮想包絡面」に沿った部分を曲線の集合による面構造とし、その一部を搭乗口として計画する。その際、強度を損なうことなくできる限り軽量化を図り、安全性も高めることに配慮する。 24年度の研究では、研究計画にも記載していたとおり「奇数スフェリコン」の動きについても検証を開始したが、学会で高い評価(「日本図学会2012年度秋季大会優秀研究発表賞」)を得たので、今後はこの方面の可能性もさらに掘り下げる。25年度は、以上の2つの方向性をもって研究を進め、得られた成果を国内外の学会で発表し、論文としても投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品購入の際に差額を生じたが、平成25年度の物品費とあわせて使用する。
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Research Products
(5 results)