2014 Fiscal Year Research-status Report
身体を通して自然環境を体感する“膜構造”を用いた教育遊具の開発
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23531246
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
村松 俊夫 山梨大学, 総合研究部, 教授 (00262642)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 教材開発 / 教育遊具 / 触知による教育 / 美術科教育 / 基礎デザイン教育 / 図形科学教育 / 形態構成 / 数理造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、様々な形態が持つ基本的な性質(動き・錯視)について、造形芸術的側面と科学的側面からアプローチし、造形教育(デザイン)のみならず理科教育(物理)や数学教育(幾何学)の見地からも有用な内容を、体験者が直接手で触って感受できる、あるいはそれに乗って遊ぶことができる大型の教育遊具として開発することにある。これまで、FRP(繊維強化プラスチック)を用いた「面(膜)構造」による搭乗型造形作品の可能性を検討したが、外部を見通せる透明度があり、なおかつ荷重に耐えうる素材を発見することが難しかった。そこで、これまでのメインフレームに細いステンレスパイプを組み込んだ梯子状の“膜構造”で搭乗型作品を試作した。 今年度の研究成果は、展覧会における展示として 1.第64回モダンアート展(東京都美術館4月1日~4月16日、京都市美術館5月13日~5月18日、愛知県美術館6月18日~6月22日、福岡市美術館7月15日~7月21日)、2.韓国基礎造形学会2014パリ国際招待作品展(Paris,France)8月13日~8月16日、3.村松俊夫展「重力の器 - Geometoric Gravity 」(ギャラリー5610)8月30日~9月7日、4.第2回現代美術「ZEROの視点」展(銀座ギャルリー志門)9月1日~9月6日、で公表した。とくに3.村松俊夫展においては、これまでの研究の総まとめとして「A Study of tangible」シリーズ、「Space Walk on the Earth」シリーズ、ドローイング等もあわせて21点展示し鑑賞者の意見を聞いた。また、その様子を動画としてDVDに記録した。 学会等においては、「Geometric Dharma Doll-奇数スフェリコンの構造を用いた往復運動するオブジェ-」(2014年度日本図学会秋季(東京)大会・東京藝術大学)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度の研究で、これまでのメインフレームに細いステンレスパイプを組み込んだ梯子状の構造で搭乗型作品を試行した。座席を排し作品に身体を固定しないことにより、ジャングルジムの内部を歩行移動する感覚で搭乗者がさかさまになることなく作品を回転させることができた。平行な円弧による実接地線の幅を拡げたことにより、身長175cm程度の搭乗者も内部に入れる作品となった。また、前試作よりも安定性の高い円柱側面が生まれたため、シーソーのような往復運動を繰り返す新たな搭乗方法の可能性も確認できた。 膜構造による教育遊具の具現化が達成できたため、26年度の研究では、研究途中で派生的に生じた「奇数スフェリコン」の動きについて研究を進めた。すでに試作をしていた「Tri-Sphericon」についての研究発表は、2013年度日本図学会大会における優秀研究発表賞を受賞しており、研究に対する期待が寄せられていた。そこで、プロトタイプを3倍に拡大し、さらに中央のステムを外すために2つのムクの球体を先端にとりつけた大型試作品を完成させた。動きは予想した通りに緩やかなものであり、様々な形態の変化を見せながら一定の軌道に沿って往復運動を繰り返した。このように、「奇数スフェリコン」は無限に転がっていくことがなく、比較的安全性の高い触知的教育遊具としてさらなる可能性があることを確認できた。すでに次期研究課題として構想がまとまっている。 今年度はとくにこれまでの研究の総まとめとして総合的展示会を開催し、鑑賞者の意見を聞いたり、その様子を動画としてDVDに記録した。しかしながら、その他のデータ収集に滞りが生じ、目標としていた「研究成果報告書」刊行と「研究成果広報HP」構築のための原稿入稿に遅延が生じている。したがって、研究報告も含めた目的に対する達成度はやや遅れていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題について、27年度は「研究成果報告書」刊行と「研究成果広報HP」完成を目指す。テキスト・静止画像・動画等の収集・整理・検討に十分な時間をかけ、資料性の高い成果報告を実現する。また、「スフェリコンを用いた往復運動する教育遊具」も含めたこれまでの試作品を長期間(4週間程度)公開する展示会を開催する。その場において体験者・鑑賞者から様々な意見や感想を聞き取り、今後の研究のための資料とする。 26年度の研究では、派生的に「奇数スフェリコン」の動きについて新しいいくつかの知見を検証できた。この萌芽的研究に関しては、学会で高い評価(2013年度日本図学会大会における「優秀研究発表賞」受賞)も得ている。また、同年の研究では「偶数スフェリコン」における「回転軸の違いによるハイブリッド型“等高重心立体”」が成立する可能性も確認できた。今後はこの2つの方向の可能性もさらに掘り下げ、次期研究テーマとしていきたい。
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Causes of Carryover |
(未使用額が発生した状況) 本課題研究については本年度が最終年度にあたるため、本課題の研究成果をまとめ「研究成果報告書」の刊行と「研究成果広報HP」の構築を予定していたが、データ収集に滞りが生じ、未だ掲載内容の選定・整理・検討ができない状況にある。よって「研究成果報告書」「研究成果広報HP」の原稿入稿ならびに成果発表ができず、未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(次年度における未使用額の使途内容) 未使用額分については、当初の予定通り、本研究課題の「研究成果報告書」編集・印刷・配布のための経費と「研究成果広報HP」の設計・実装・公開のための経費に使用する。関係資料の収集・整理・検討等に十分な準備期間をかけ完成度の高い「研究成果報告書」の刊行ならびに「研究成果広報HP」の公開を実現する。また、公立美術館等において研究成果を発表するための経費とする。
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Remarks |
その他展覧会における展示として、第64回モダンアート展(東京都美術館4月1日~4月16日、京都市美術館5月13日~5月18日、愛知県美術館6月18日~6月22日、福岡市美術館7月15日~7月21日)、村松俊夫展「重力の器 - Geometoric Gravity 」(ギャラリー5610)8月30日~9月7日、第2回現代美術「ZEROの視点」展(銀座ギャルリー志門)9月1日~9月6日。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] 「Geometric Dharma Doll」2014
Author(s)
村松 俊夫
Organizer
2014 KSBDA・PARIS INTERNATIONAL INVITATION EXHIBITION 韓国基礎造形学会2014パリ国際招待作品展
Place of Presentation
Centre culturel coreen Salle d'expositionParis,France
Year and Date
2014-08-13 – 2014-08-16
Invited
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