2012 Fiscal Year Research-status Report
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23531252
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
根津 知佳子 三重大学, 教育学部, 教授 (40335112)
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Keywords | 音楽的経験 / カリキュラム / 感性 / 国際情報交流(米国) / 国際情報交換(オランダ)) / 数学的パラダイム / 情動調律 / 相互反応性 |
Research Abstract |
本研究は、“音楽的経験”を軸としたカリキュラムにおけるスコープとシークエンスを再構成し、感性の創出プロセスを可視化することを目的としているが、とりわけ、音楽的経験における形式化の意義を明確にすることを通して“音楽的体験”がアイデンティティ形成に寄与することを照射し、音楽教育史で論議された生活中心の音楽科カリキュラム、概念中心の音楽科カリキュラムおよび人間中心の音楽科カリキュラム等との比較も視野に入れている。 新指導要領においては、思考力・判断力・表現力等の育成と関連して感性が位置づけられている。音楽科に関しては、美的感性だけではなく、記号の理解や音の認知も教育内容として重視されており、これまでも筆者らの創出した「感性システムのフレームワーク」をツールとした検証を進めてきた。 今年度は、新たに“音響としての音楽”“知覚の対象としての音楽”“構造をもつものとしての音楽”“意味および内容をもつものとしての音楽”という構造を認知する<数学的パラダイム>に関する研究をすすめ、カリキュラム分析の新しい視点を得ることができた。 カリキュラム構成に関しては、前年度に行った前音楽的経験(生活科との比較)、外音楽的経験(表現教科との関連)、準音楽的経験(美術/技術などとの恊働)、音楽的体験(理科/数学との認識の相違)の5種の領域における研究を深め、特に、前音楽的経験(生活科および特別支援学校の音楽の教科書の分析等)具体的な教材分析を行った。 独自のプログラムとして開発した「ハワイにおける異文化交流のプログラム」においては、<文化的側面>を重視した上記5つの音楽的体験の可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
先行研究における<音楽的体験>を援用した教材解釈や教材開発のコンテンツを蓄積することができた。また、米国ハワイ州での異文化理解を企図した具体的なプログラムを創出できた点で、当初の計画以上に進展しているといえる。 さらに、音楽的経験の分析理論およびカリキュラム構成の視点として<数学的パラダイム>に関して新たな理論研究を進めることができた。このことにより、これまで本研究で重視してきた<情動調律><相互反応性>のモデル化の妥当性が明確になったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
所期の目標である以下3点については、すでに研究は進んでおり、内外に発信・報告する段階である。 (1)実践者と対象者の“音楽的対話(やりとり)”を可視化するツールの改善 (2)“音楽的経験”における形式化の意義 (3)“音楽的経験”“感性”を軸としたカリキュラム構成の提案 (1)に関しては、学会誌に投稿予定である。(2)に関しては、平成24年度に創出した異文化理解に関するプログラムに関して、考察する予定である。(3)に関しては、新たに追究している<数学的パラダイム>をカリキュラム構造に組み入れる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)および(2)に関しては、これまで情報交換を行ってきたアイルランド、米国に加え、オランダのゾイド大学との意見交流も深める必要がある。 また、教材開発、実践の企画も、これまで同様予算内で行う予定である。
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Research Products
(8 results)