2011 Fiscal Year Research-status Report
21世紀型ジェネリック・スキルの形成による「人生設計型学校カリキュラム」の再構築
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23531257
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
今谷 順重 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (60093639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 人生設計能力 / ジェネリック・スキル / カリキュラム / 社会参画 / 能力開花型 |
Research Abstract |
第22回日本公民教育学会(愛媛大学教育学部)、第19回日本グローバル教育学会(愛知教育大学)、第4回日本個性化教育学会(上智大学)、第60回全国社会科教育学会(広島大学教育学部)、第61回日本社会科教育学会(北海道教育大学)、同志社大学京町屋キャンパスでのアントレプレナーシップ研究会等の学会に参加して、市民性教育とジェネリック・スキルとの関連性について調査した。 (1)フィンランドのツルク大学と幼稚園・小・中学校の訪問、(2)ポーランド・ワルシャワでのヨーロッパ市民教育会議への参加、(3)ベルギー・ブリュッセルのEU本部およびEuropean Commision の訪問及びオランダのイエナプラン教育協会によるイエナプラン教育研修への参加とオランダの幼・小・中・高・教員養成大学の訪問という3回の海外出張を行って、ジェネリック・スキル教育について調査した。 オランダ在住の教育研究者・リヒテルズ直子氏、ブリュッセル・EU本部のRichard Deiss氏を招聘して、帝塚山大学と名古屋大学で第1回「国際理解教育セミナー」を開催した。東北大学及び宮城県内で東日本大震災の被害状況について調査し、神奈川県横浜市立黒須田小学校において、ジェネリック・スキルを育成するための防災教育の授業を担当実施するとともに、長野県松本市の才教学園を訪問して、「志教育」とジェネリック・スキルの関連性について調査を行った。 また我が国及びアメリカ・EU諸国の幼・小・中学校で実施されている国際教育・総合的学習のカリキュラムと教材を入手して、その一部を読解・分析した。 これらの調査活動は、21世紀型ジェネリックスキルの考え方の導入によって、「人生設計型学校カリキュラム」をより質の高いものに充実・発展させていくうえで不可欠なものであり、有意義な成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OECDが提示して世界の教育改革に大きな影響を与えている「キー・コンピテンシー」に続いて、「21世紀・知のヨーロッパ構想」を積極的に推進しているEU(ヨーロッパ連合)では、知識社会化・グローバル化が急速に進展する欧州において、すべての子どもたちや成人・市民が、よりよく学び働き生活していくうえで不可欠な8つの技能としての「生涯学習のキー・コンピテンス」を提示して、加盟27カ国は、このEU共通モデルを、さらに一層オリジナリティーの高いものへと発展させていくことを求めている。 本年度は、ベルギー・ブリュッセルのEU本部・European Commissionを訪問して、「生涯学習のキー・コンピテンス」の考え方やEU諸国での具体的展開の実情についての情報・資料収集を行った。また、フィンランドでの考え方についての調査に続いて、ユニセフの調査による「子どもの幸福度世界一」で注目されているオランダで、2007年度から初等・中等教育に導入されたシティズンシップ教育での捉え方や、イギリスで実施されている国際教育カリキュラムでの捉え方について分析した。 またアメリカでも、教育省が推進している「21世紀スキルパートナーシップ」において、産業形態の急速な変化やグローバル化に対応していくための能力としての「21世紀スキル」が注目されており、これについて分析した。 さらに、我が国で進められているジェネリックスキル研究についての資料を収集して読解を行ったが、大学や企業におけるジェネリックスキル形成のための教育活動はすでに行われているが、管見の限り、小学校・中学校・高等学校では、まだこのような明確な観点からの意識的な取り組みは見られないこと、また我が国の大学や成人教育では、ジェネリックスキルの中身が具体的にどのように究明され理解されているかについて明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、国内での「21世紀型ジェネリックスキルの形成」のための取り組みとして、長野県松本市の才教学園で全校型カリキュラムとして実施されている「志教育」の理論と実践について、また震災復興教育の一環として宮城県教育委員会が推進している「志教育」について、さらに大阪府教育委員会が推進している、総合的な学習と道徳と特別活動を統合した形での「子どもたちの志や夢をはぐくむ教育」について分析を行った。 OECD によるキー・コンピテンシーの考え方やEUによる「生涯学習のキー・コンピテンス」(両者はいずれもジェネリック・スキルの範疇に入るものである)、また私がこれまで提唱してきた「人生設計能力を育てる人生設計型学校カリキュラム」の具体化・実践化を考えていくうえで、「志教育」の理論と方法は極めて有意義な手掛かりとなるものであると考えるからである。 これらの取り組みは、「人とかかわる」「よりよい生き方を求める」「社会での役割を果たす」や「人とつながる力」「未来を設計する力」「社会に参画する力」の育成など、市民性教育やキャリア教育やアントレプレナーシップ教育や道徳教育・価値教育の理論と方法を活用したものが多い。 これらの理論を活用した全校型カリキュラムや総合的な学習の体系的な在り方と具体的な授業展開の方法について、海外及び国内での研究成果についての分析を、さらに深め広げていきたい。また、我が国での具体的なカリキュラムや授業実践の開発研究にも取り組んでいきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒューマン・デベロップメント(人間発達・自己形成)の視座に立って、自立的なホールパーソンとしての市民・生活者・学習者を形成すべく、ホール・ライフ・トレーニングを全体的・系統的に提供していくことのできるホール・カリキュラムについて海外及び国内での教育理論と具体的な授業実践方法の在り方についてさらに究明を深めるために、EU諸国及びアメリカまたはオーストラリアでの調査を行う。また、マルチプル・インテリジェンスやシステム・シンキング並びに人類的・地球的視野を育てるグローバル・エデュケーションや社会起業家を育てるアントレプレナーシップ・エデュケーションの理論と実践についても、重点的に調査を行いたい。(992,885円) また海外から研究者を招聘して、帝塚山大学で、第2回・第3回「国際理解教育セミナー」を開催する。(400,000円) 国内の学会にできるだけ数多く参加して、研究テーマに関連した情報と資料を積極的に収集する。また、カリキュラム開発や具体的な授業実践研究にも取り組みたい。(300,000円)
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