2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会関係資本の形成を促す感情教育の理論とカリキュラム
Project/Area Number |
23531266
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Research Institution | Poole Gakuin University |
Principal Investigator |
佃 繁 プール学院大学, 国際文化学部, 教授 (90513721)
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Keywords | 社会関係資本 / 感情教育 / 共感性 / 寛容の原則 / 集団発達の最近接領域 |
Research Abstract |
研究課題について活動理論と行為論哲学の成果を整理し、次の2点を確認した。(a)エンゲストロームの活動理論では「集団発達の最近接領域」概念が提唱され、活動システムの変換や他システムとの協働の局面に社会関係資本が活用される。(b)ディヴィドソンの行為論とルーマンのシステム論は、「個/集団」という異なる次元の社会関係資本を連接し、「個-集団の共感性を育成する感情教育」のカリキュラムを提供しうる。 エンゲストロームによれば、集団の内的矛盾を資源として特定の個に生じた拡張的学習がすべての成員に広まるとき、集団は発達し次の局面に移行する。協働とは他者に生じた拡張的学習の自己への適用の過程であり、その協働を促す「感情的道具」として機能するのが共感性である。よって共感性は社会関係資本をもたらす要因の一つとみなしてよい。感情教育の目的は社会関係資本獲得のための資質として共感性を育成することである。 ディヴィドソンの理論は、感情教育のミクロな方法論を提供する。ディヴィドソンの言語哲学の帰結である「寛容の原則」は、他者関係があくまでの主体の能動的信頼によることを根拠づける。またディヴィドソンの行為論では、信念と欲求からなる「基本的理由」が行為の原因となることを明らかにしている。共感性育成の感情教育プログラムの要諦は、「基本的理由」に「寛容の原則」が組み込まれるべく学習内容と学習方法を構成することにある。 ルーマンのシステム論は、ミクロに生じた感情教育の成果を集団に拡張するための理論的根拠を提供する。個の共感性は集団発達の過程ではたらき、社会関係資本を産出する。したがって感情教育プログラムのマクロな目的は、個-集団を結ぶ方法を習得させることにある。ルーマンの構造的カップリング概念を活用することにより、心的システム(個)と環境(集団)の相互依存関係をつくりだす感情教育プログラムが可能である。
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[Book] 国際堺学を学ぶ人のために2013
Author(s)
木村一信, 北村修治, 村田和男,加藤源太郎, 岡崎裕, 西道実, 十河良和, 山村茂樹, 中村博武, 加藤晴美, 入江春行, 太田登, 西尾宣明, 奈良崎英穂, 鶴坂貴恵, 川井悟, 伊藤宏, 浅羽良昌, 和田充弘, 佃繁, 寺田恭子, 蔵田實, 中村健
Total Pages
352ページ
Publisher
世界思想社