2012 Fiscal Year Research-status Report
保育士・教員養成課程における幼保小連携を踏まえた表現教育カリキュラムの開発
Project/Area Number |
23531270
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
山野 てるひ 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (70168631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡林 典子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (30331672)
ガハプカ 奈美 京都女子大学, 発達教育学部, 准教授 (80413334)
鷹木 朗 京都女子大学, 発達教育学部, 非常勤講師 (90617797)
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Keywords | 呼吸法 / ドイツ |
Research Abstract |
24年度は研究全体の具体的な達成目標として挙げた6つの項目のうち、特に下記の3項目について記述の通り成果を上げることができた。 1)公立幼稚園と研究連携し、領域「表現」を核とした保育実践力を向上させる保育指導案の作成と、その有効性の検証(計画・実践・評価の問題)。:兵庫県宝塚市立西山幼稚園と研究連携を行ってきたが、当該年度は子どもが五感を結び付けて感じ、遊びの中で自らの表現に繋げることのできる教材として絵本を採り上げ、2度の研究保育を実践した。実施にあたって教職員と討議を重ね、日常の保育についても記録を取るなど準備や実践後のフィードバックにより内容を検証した。その結果から教材としての有効性を確認し、絵本教材集を纏めるとともにモデル指導案を作成した。また絵本や児童文学作品の鑑賞から子ども達に体験させたい感性を耕す様々な活動を計画し、評価の視点までを含めた独自の指導計画を共同で考案した。 2)総合的な表現教育の理念を歴史的に位置づけ、理論的な展望を図る文献研究。:本研究の中心テーマである「人間的感性の育成」が我が国の教育課題に載せられたのは1970年代のことであるが、「感性教育」の淵源は歴史的にはギリシャのアリストテレスにまで遡るとされている。直接的には近世の経験主義哲学に求められ、J.ロックの「タブラ・ラサ」はJ-J.ルソーの「感覚教育」に大きな影響を及ぼし、J.H.ペスタロッチ、F.フレーベルと受け継がれてゆく。その水脈が19世紀末から20世紀末にかけての約100年間に教育思想と実践に一気に顕現された有り様を、概要ではあるが独自の視点によって明らかにした。 3)感性を育む表現教育のテキスト出版及び研究報告集による研究成果の社会還元。上記1)と2)の成果を含む開発した表現教育プログラムを保育を学ぶ学生と新任保育者を対象とするテキストとして纏め、明治図書より出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績】の記述と重複するが、本研究の具体的な達成目標として挙げた、6つの項目 1)全国の幼稚園教員・保育士養成課程をもつ大学、短大の領域表現科目のシラバス収集と整理、分析。2)身体感覚を耕す呼吸法や音声、言語、全身運動と空間性の研究。3)公立幼稚園と研究連携し、領域「表現」を核とした保育実践力を向上させる保育指導案集の作成と、その有効性の検証(計画・実践・特に評価の問題)。4)総合的な表現教育の理念を歴史的に位置づけ、理論的な展望を図る文献研究。5)表現教育の幼保小の円滑な接続と、一貫性、連続性を保障する総合的な表現プログラムの開発。6)感性を育む表現教育のテキスト出版および研究報告集による研究成果の社会還元。 のうち、これまでに2)、3)、4)、6)の4項目に関して計画通りの成果を上げ、それらの一部をテキストとして纏め、明治図書より出版を果たしている。1)と5)については時間的な制約と研究協力者の教育環境の異動などによって、若干の停滞はあるものの、次年度に進行できる見通しを持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
幼児期における総合的な表現教育が就学後にどのように受け継がれ、展開し発展していくのかの研究は着手したばかりである。小学校教育において総合的性格の強い生活科や表現教科として認められる国語科、音楽科、図画工作科の中で教科書を中心として領域横断的な内容の実態を明らかにする。その内容の分析と考察を踏まえながらこれまでのような合科学習的発想ではなく、共通する原理や要素を見出して子ども達が連関を感じ表現力を身に着けることのできるような内容と学習方法を開発していく計画である。 しかし研究計画として研究協力の了承を得ていた兵庫県姫路市立手柄小学校教諭橋本忠和氏、兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科、兵庫教育大学附属小学校講師井上朋子氏、両氏の想定できぬ大学への異動があり、小学校教育現場における実践研究に若干遅れをきたしている。そこで次年度は新たに京都府京都市立常盤野小学校教諭で前図工科教育研究部長の宮川紀宏副教頭の研究協力を依頼し、実践研究を推進する。これまで共同研究を行ってきた宝塚市立西山幼稚園においては、既に新年度の研究計画を立案し、4回の研究保育を行うこととなっており並行して進めていく。同時に伊丹市が新規に整備した認定こども園神津こども園から保育研究の打診を受けており、先進的な表現教育のカリキュラム開発に研究協力が得られる見通しも出てきた。文字通り幼保小連携を踏まえた表現教育カリキュラムの検討を行っていく基盤が整うこととなる。 上記のような開発プログラムの教育現場での検証を重ねながら、その研究成果を報告書として纏め、学会や研修会などで広く発表し社会的な還元を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は前半期はこれまでの研究の継続しながら小学校教育における表現教育のプログラム開発に中心を置く予定である。そのうえで後半期に幼保小の滑らかな接続を実現するカリキュラムを総括し研究報告集としてまとめるため、25年度に請求した研究費900,000円は全て研究報告書の印刷費にあてる計画である。
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