2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531271
|
Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
前嶋 英輝 吉備国際大学, 文化財学部, 准教授 (50291878)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 幼児造形教育 / 粘土場 / 触覚 |
Research Abstract |
初年度は、研究の基盤となる機材の購入やそれらを使用したデータ収集を中心に行った。研究内容としては粘度遊びプロジェクトの実践、新たに導入したソフトを使用した分析を行った。具体的には高梁中央保育園に新たに彫塑用粘土800kgと新型の土練機を設置し、画用紙などの消耗品についても十分な準備のもとで比較実験的な研究ができた。さらに過去の基礎研究をもとに様々なプロジェクト型の粘土遊びを行った。 本年度の成果としては、大量の粘土を使用した粘土遊びを5歳児クラスで継続して行い、幼児のイメージ形成において視覚型と触覚型が現れる原因としての粘土遊び体験の分析データを残すことができた。結果として、言葉掛けだけの描画では視覚的で基底線を伴った概念的な絵が現れることに対し、大量の粘土で遊んだ後は、触覚的な視点での絵が現れることが分かった。現時点では、幼児の造形教育は、知的な指導によれば平面的視覚型のイメージ形成を促進し、体験型の指導からは立体的触覚型のイメージ形成が生まれることが分かってきた。本研究で確立しようとしている造形教育法には、思考から行動を起こさせる方法と行動から思考を始めさせる2つの方法があることが見えてきた。 購入した4台のビデオカメラやデジタルカメラで粘土遊びを撮影保存し、得られたデータをSPSSの統計ソフトを利用して分析した。また硬度計を購入し、幼児に適した粘土の硬さを調べ、実践の積み重ねの中で粘土遊びに最適な物的環境を調査した。文献による先行研究も実践研究と同時進行で進めている。遠隔地にある広島市のゆうき幼稚園には、2度訪問し実践指導を行いながら比較調査をおこなった。 3月には23年度のまとめとして、全米美術教育学会(NAEA;NY大会)に参加し、海外の研究者と情報交換しながら子どもの造形遊びの環境について検討を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に使用する予定であった研究費は予定額を100%使用して設備等の準備が十分にでき、予定していた研究計画を推進することができた。また、海外での情報交換も充実した内容であった。さらに3月の順正学園学術交流コンファレンス研究部門に参加し、全分野16組の発表のうち最高賞を得ることができた。 具体的な理由としては、粘土遊びに必要な粘土800kgを以前の陶土から彫塑用粘土に全て入れ替え、より造形遊びに適した環境を作ることに成功した。土練機も新型の機種に入れ替え適した硬度の粘土を正確に準備できるようにできた。このような環境のもとに、交付申請書の研究実施計画に示した内容、(1)幼児の粘土遊びに最適な物的環境の提案、(2)遠隔地のゆうき幼稚園との連携、(3)幼児の発達に応じた遊び方とその援助についての調査についておおむね順調に進展した。特に実践プロジェクトの種類の実施確認は順調で、砂場などが使用しにくい冬場を含めて年間を通じて遊びの調査が進んでおり、2年目にスムーズな接続ができる。また高梁中央保育園の保育士と学会発表の準備ができることとなり、保育現場の研究の活性化にも繋がっており、本研究が目指す幼児造形教育法の確立に相互的に良い進展が見られる。 ただ保育園や幼稚園へのPCやルーターの設置等について、学内の備品設置基準等の問題があり、ICTによるリアルタイムの対話授業などの研究は遅れている。また低年齢の幼児ほど遊びの実践の回数が少なく次年度の課題となっている。 一方で、小学校や岡山県教育センターから粘土遊びの実施依頼があったり、コンファレンスの縁で心理学者の野中哲士先生と共同研究が可能となったりするなど、研究実施計画を上回る進展も見られるところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の主たる目的である「幼児造形教育法の確立」を達成するために、初年度から続けて行ってきたプロジェクト学習の継続と、蓄積されたデータの分析を中心に行う。また新たな研究協力者を得て心理学的な行動分析を取り入れてより正確な遊びの分析を行う。特に粘土遊びの実践から得られたデータをもとに、造形遊びを想像、技術、伝達の3要素に分類し、思考力を育む具体的な教育方法を確立する。また0歳から6歳までの幼児と粘土遊びを行い、発達に応じた遊び方とその援助について調査を行う。同時に量の認識の発達段階の確認を行う。 実践に基づく遊び環境に関するアンケートを作成し、県内の保育園、幼稚園に対して広く調査を行った上で保育現場の意識を考慮した現実的な環境づくりを提案する。文献による先行研究や環境による保育を行っている優れた園の視察を行い資料の作成を行う。同時に海外の研究者と連携しながら、レッジョ・エミリア市の保育への取り組みなどを再度研究し直して、子どもの造形遊びの環境について検討を行う。また年間を通じて保育の週案の作成などに関わることで具体的な提案を作成できるようにする。 遠隔地のゆうき幼稚園とはICTの利用によって、粘土遊びを行いながらリアルタイムでの幼児や保育者との対話によって連携を行う。そのための情報交流システムを完成する。 学会発表に関しては、高梁中央保育園の保育士と日本教育学会(8月:名古屋大学)にて共同発表を行う。また日本美術教育学会、日本乳幼児教育学会等に論文を投稿する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「設備備品費」については、本年度は計上しない。 「消耗品費」の使用計画としては、粘土遊び用の道具、PC関連のソフトやUSBフラッシュメモリ、用紙、インク等消耗品を計上している。またデジタルカメラ等を購入しデータ保存を強化したい。 「国内旅費」としては、先進的な研究を行っている園への視察を行い、遊び環境に関するデータ収集を行う。出張粘土場(200kg程度)により岡山市や高梁市の小学校との連携も進めており、粘土場の遊びを継続的に経験した子どもの小学校での状況に関する追跡調査を行う。広島のゆうき幼稚園へも遊びの実践指導と粘土場の調査のために出かける。学会発表(日本教育学会:名古屋)を高梁中央保育園の保育士と共同で行なうことで、国内の研究者と連携しながら子どもの造形遊びの環境について検討を行う。また海外の研究者との連携により国際的な視野による幼児造形教育法の確立を目指す。この場合、徳雅美先生(カリフォルニア州立大学)が帰国された際に東京から本学までの旅費を考えている。 「外国旅費」は、当初米国での発表を予定したが、諸事情により国内のみの発表とし、3年目の最終年度に海外での発表を考えることとするため本助成金の外国旅費は本年度使用しない。 「謝金等」と「その他」としては、1年目の実践を基にした造形遊びに関するアンケート調査を岡山県内の保育所、幼稚園(600園)を中心に行い分析を行う。これにかかる送料を使用計画に盛り込んでおり、発送、集計作業には、申請書に示したアルバイト採用を考えている。
|