2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23531274
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
勝二 博亮 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30302318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 美由紀 茨城キリスト教大学, 文学部, 准教授 (70434537)
齋木 久美 茨城大学, 教育学部, 准教授 (60361284)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 書字困難 / LD / 早期発見 |
Research Abstract |
幼児期から学齢期へのスムースな移行的支援が注目されているが,学習の背景となる認知機能に着目した早期発見ツールの開発は体系的に行われてこなかった。とりわけ,書字困難事例の早期発見に関しては研究がほとんど進展していない。そこで,本研究では,書字障害を中心として早期発見とその支援システムを考案し,学齢期に向けたスムースな移行が図れる仕組みを検討することを目的としている。 平成23年度においては,書字の困難さに関与する認知機能を明らかにするための課題を作成し,幼児を対象とした調査を実施した。対象は幼稚園に在籍する年少から年長までの園児65名で,ひらがな書字課題のほかに,線引き課題,空間認知課題,図形模写課題,図形抽出課題,動作系列記憶課題を実施した。その結果,指定された帯幅内を正確に線引きする能力とひらがな書字獲得数との間に有意な相関がみられた。さらに,空間認知課題では,3×3のドットの中に描かれた見本図と同じように線結びをすることが難しいケースではひらがな書字獲得数も低いことが明らかとなった。さらに,三角形の模写が可能か否かが書字獲得の開始期に最も関わりがあることが推察された。 さらに,健常成人を対象として書字動作時の脳活動をNIRSにより検討した。ディスプレイ上に指で書字する場合に,軌跡が現れる条件(書字)と現れない条件(空書)では前頭領域と運動関連領域で顕著な脳血流の増大がみられたが,ディスプレイ上に映し出される文字をなぞる条件では運動関連領域にのみ活性化が認められた。このことから,空書は書字と似たような処理が脳内で行われるのが,なぞり書きはそれらの処理とは異なることが明らかになった。 その他,基礎的研究として,書字獲得の際に視聴覚などのマルチモーダルな情報統合や意味と絡めて記憶されるが,感覚統合処理や意味処理に関わる脳科学的研究もあわせて実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では予備的調査として,数名の幼児を対象とする予定であったが,本格的な調査を実施することができた。概ね計画通り順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果は学会発表等で公開する。幼児への調査については調査項目を精査し,今年度も新たな検査を加えて再調査する。可能であれば,幼児期から小学校低学年までを縦断的に追跡調査していくことも考えている。さらに,書字困難の脳科学的解釈に向けて,健常成人を対象とした書字動作時の脳活動についても併せて検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として,調査項目の参考に使用するアセスメント器具や教材開発費等に使用する。学会での発表や資料収集のために旅費を計上している。データの処理や解析のために謝金を計上している。その他には,機器管理のための費用を計上している。なお,繰り越しに関しては,データの処理や解析などの補助が行えなかったため,次年度に実施することとした。
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