2012 Fiscal Year Research-status Report
入院児への心理的支援における非侵襲生理計測を用いたストレス評価に関する研究
Project/Area Number |
23531276
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹田 一則 筑波大学, 人間系, 教授 (90261768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 昌樹 岩手大学, 工学部, 教授 (50272638)
福島 敬 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30323299)
古谷 佳由理 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90222877)
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Keywords | 入院児 / ストレス評価 / 非侵襲生理計測 |
Research Abstract |
病気療養中の児童・生徒(以下,病気療養児)のQOLの向上においては,心身ストレスの客観的評価方法の開発やストレッサーの同定が課題とされる.したがって,本研究では,入院している児童・生徒(以下,入院児)の心理的支援において,ストレス評価に際する唾液バイオマーカーの活用可能性を検討することを目的としている. 唾液バイオマーカーの内,唾液アミラーゼ活性値は,交感神経系の活動高進にともない上昇するため,ストレス研究において頻繁に用いられる唾液バイオマーカーの一つである.さらに,唾液アミラーゼ活性値は,近年,携帯型の簡易測定機器の開発により,簡便かつ即時的に測定値が得られるため,様々な臨床場面における活用の試みも広がりつつある. そこで,本年度は,入院児が病棟内あるいは院内学級などで,余暇活動や学習活動として行っている,図画工作等の造形活動が心理面にもたらす影響を唾液アミラーゼ活性値を用いて評価した. 対象は小児がんに罹患した小学校1年生から6年生までの入院児で,造形活動の前と後に唾液アミラーゼ活性値の測定を行なった.造形活動前後の唾液アミラーゼ活性値を比較した結果,活動前値に比べて活動後値は有意に低いことが認められた.これらの結果から,造形活動による交感神経系の活動低下を唾液アミラーゼ活性値が反映したことが推測され,造形活動はeustressとして作用し,一時的な快状態をもたらす可能性があることが示唆された.造形活動は,ストレスマネジメント効果や,心理安定の促進効果があることが臨床的に報告されてきたが,本研究の結果からは,唾液アミラーゼ活性値を用いることで,それらの活動の効果を客観的,定量的に評価できる可能性が示された. 今後は急性ストレスに関与する交感神経系の活動だけではなく,入院に伴う慢性ストレスなどへの心理的支援に活用可能な唾液バイオマーカーをさらに探索する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年計画で行う予定であり、そのうち,本年度は2年目の調査実施を優先して行う期間であった。 実際に,本年度は,2種類の唾液バイオマーカーを用いたサンプリングを行い,サンプリング自体はすでに完了に近い状態にあり,分析も進行しているため,研究の進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度であり,研究成果の公表を重点的に行い,社会的な還元に従事する予定である。したがって,分析をすすめ,知見の公表について,国内外の学会における発表,およびジャーナルへの投稿のための論文執筆を中心に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は研究成果公表に従事するため,発表のための国内外の学会参加に係る旅費,研究共同者との打ち合わせ旅費,および論文執筆における英文校正等に係る費用を中心とした研究費の使用を計画している。
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