2013 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症スペクトラム障害児に対する仲間関係の形成のための支援法の開発と効果の検討
Project/Area Number |
23531282
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
藤野 博 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00248270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 真理 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70274412)
森脇 愛子 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (50573557)
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 仲間関係 / 支援法 |
Research Abstract |
本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもに対する仲間関係支援プログラムを開発し、その効果を検証することを目的とした。本プログラムは、学齢期のASD児を2人1組にして同じペアの子ども同士で一定期間活動を共にする「バディ・システム」を特徴とする。効果の検証法としては、質問紙による評価として、コミュニケーションと社会性および精神的健康面の指標として、CBCL(子どもの行動チェックリスト)とSDQ(子どもの強さと困難さアンケート)を実施し、行動観察による評価として、ペア同士の遊び場面での相互作用行動を分類し集計した。そして、介入を行った群と行わなかった統制群の間で、それらの指標のスコアを統計的に比較した。 最終年度は、前年度に行ったデータの予備的分析に引き続き、さらに介入事例数を増やして、効果を検討した。質問紙においては、予備的分析の結果と同様、SDQ「向社会性」においてのみ、介入群は統制群に比べ有意に大きなスコアの上昇が認められた。この下位尺度は他者への自発的な気遣い、共有、手助け、親切さなどを評価するものである。また、ペアの子ども同士の遊び場面の相互作用においては、場面設定による違いはあるものの、介入群では、相手を見る、接近する、アイコンタクト、笑顔などの行動の生起が増加した。それに対し、統制群では、そのような行動の増加はみられなかった。 最終年度までの全てのデータの分析の結果、ASD児において、一定期間持続する特定の仲間との2人組での活動は、他児との自発的でポジティブな関わりを生起させ、さらに共感的で利他的な行動を促進する効果をもつことが、客観的な指標を用いた非介入統制群との統計的比較を通して検証できた。この知見はASD児の社会性とコミュニケーションにおける効果的な発達支援法についてのエビデンスとなり、特別支援教育の根拠に基づく実践に寄与するものと考えられる。
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