2012 Fiscal Year Research-status Report
特別支援学校の学校健康診断における聴力検査実施方法の検討
Project/Area Number |
23531284
|
Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
加藤 哲則 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (90510199)
|
Keywords | 特別支援学校 / 学校健康診断 / 聴力検査 |
Research Abstract |
特別支援学校での聴力検査の実施状況の調査を受け,特別支援学校における学校健康診断の聴力検査は,すべての学校で実施されていないことが明らかになった。特に聴覚障害以外の障害種を対象とする特別支援学校で実施されていない傾向が伺えた。そこで今年度は,実施されていない割合の高かった特別支援学校(肢体不自由)を中心に,従来の学校健康診断の聴力検査の実施方法では検査不能とされたものを対象とした簡易聴力検査の実施方法について検討を行った。 対象は,検査への同意の得られた特別支援学校小学部重複学級に在籍する児童11名(22耳)であった。聴力評価の方法は,指こすり音聴取検査を用いた。この検査法は,検査音の呈示に検査機器を用いることなく実施が可能であり,簡便に定性的な検査が可能である。そのために乳幼児健康診断で広く応用されている。検査の実施は,9月から11月であった。ただし対象児が入眠時には実施を見送り,改めて別の機会に実施した。検査音は,対象児の視野に入らない側方より片耳ずつ呈示した。検査時の反応は,児童と日常的に接している教員などにも確認を求め,検査結果とした。 指こすり音聴取検査の11名(22耳)の結果は,10名(20耳)が検査音に対して何らかの反応を示した。児童の検査時の主な反応としては,検査音呈示側に眼球が動く,検査音呈示側に首を動かすなどの反応が認められた。また独歩の児の場合には,検査音呈示側に振り向く反応も認められるなど,反応の状態はさまざまであった。各児に対して複数回の検査音呈示においても同様の反応がくり返し認められたことにより,反応の再現性も確認できた。対象となった児童のうち1名は,すでに難聴の診断を受け補聴器を装用しており,補聴器を装用していない状況では検査音に対する反応は認められなかった。結果から,指こすり音聴取検査を用いた重複障害児の聴力評価が可能であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の調査結果を基に,聴力検査の実施方法を検討し,特別支援学校(肢体不自由)で聴力検査を実施するに至った。結果から概ね良好な検査データを得ることができた。検査データは行動観察によるものであり,他覚的な検査データとの比較を行い,検査の信頼度を評価する必要が考えられる。これは当初の研究目的・研究計画どおりである。よって,現在の研究の達成度は,概ね順調に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
特別支援学校に在籍する児童生徒を対象に,指擦り音聴取検査の試行と他覚的な聴力検査によって得られた結果との比較を行う。比較に用いる他覚的聴力検査は,新生児聴覚スクリーニング検査で用いられているA-ABR検査を実施する。本研究の目的を達するために両検査で得られた結果を比較検討する。 研究計画最終年度に当たるので,研究成果を報告書としてまとめて,公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画は,検査実施に係る旅費と,研究成果の学会等の発表ならびに研究成果報告書の作成・公表に充当する。
|
Research Products
(2 results)