2013 Fiscal Year Annual Research Report
高機能自閉症幼児における情動理解・情動表出とアタッチメント対象形成との関連
Project/Area Number |
23531288
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
別府 哲 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20209208)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 友有 中部学院大学, 子ども学部, 准教授 (60397586)
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Keywords | 自閉症 / アタッチメント / 情動認知 / 情動表出 / 情動調整 |
Research Abstract |
今年は、二つの研究成果が得られた。 (1)高機能自閉症幼児における自己表情認知:5~6歳の高機能自閉症幼児に、「嬉しい」「悲しい」「怒っている」表情と普通の顔をしてもらい、その写真を約1週間後に4枚同時に提示し表情分類を施行した。あわせて、自閉症度を測定するPARS短縮版と新版K式発達検査を施行した。実験参加者は、就学前通園施設に通う年長(5歳)児33名であった。主要な結果は以下の通りである。①自己表情認知得点:正答数がチャンスレベルより高いかどうかを検討したところ、PDD群も非PDD群も、いずれの表情でもチャンスレベルより有意に高い正答数を示した。②一方、自己表情写真をFACSを用いて分析したところ、定型発達児者の表情表出の基準(FACS)に基づけば、PDD群は情動に応じた表情表出ができていないことが明らかとなった。 (2)高機能自閉症幼児の情動調整:発達指数が5歳時に80以上であった高機能自閉症男子A児における、就学前2年間の相談記録(毎月2回)をもとに、情動調整不全の様相とその発達を検討した。その結果、次の2点が明らかになった。①情動調整不全のタイプ:(a)ネガティブな情動(怒りや不安など)の調整不全と共に、(b)ポジティブな情動(嬉しい、喜び等)の調整不全もみられた。それと(a)のタイプであるが、最後に母親に暴力や暴言を振るうことで情動調整不全状態を脱するタイプが数多くみられた。これは情動調整不全としてこれまで取り上げてこられた(a)だけでなく、(b)、そして(a)の中に(c)のようなタイプまで含まれるという新しい知見を示した。②情動調整の発達:A児はアタッチメント関係を形成する中で、次第にアタッチメント対象による外的な調整(external regulation)が可能となること、その方略の変化が存在することが示唆された。
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