2012 Fiscal Year Research-status Report
国連・障害者権利条約教育条項と特別学校の位置づけに関する比較教育学的研究
Project/Area Number |
23531292
|
Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
玉村 公二彦 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (00207234)
|
Keywords | 障害者権利条約 / 特別学校 / 特別支援学校 / 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / インクルージョン / 比較教育 |
Research Abstract |
2012年は、国連の障害者権利条約が採択されて6年目にあたる。国際的には、130ヵ国が条約を批准した。国連に設置された障害者権利委員会が活動を開始すると共に、第5回の締約国会議も開催された。国内的には、障害者制度改革の推進として、障がい者制度改革推進会議での議論、中央教育審議会における特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告の提出、障害者政策委員会の発足と障害者差別禁止法の検討などが進められた。本年度については、以上を本研究の前提として以下の点が実績としてあげられる。 1.障害者権利条約の批准の状況をフォローし、国連での障害者権利委員会や締約国会議などにおける国際的な議論と情報の収集を行うとともに、教育の分野での整理を行った。特に、子ども・女性について、集中的な議論や個別の国ではオーストラリアやイギリスなどの動向を検討することができた。 2.障害者権利条約における特別支援学校の位置づけに関して、特に、「特別支援教育のあり方に関する特別委員会」報告を検討し、特に、イギリスでの「特別学校」の再評価の動向とも併せて、わが国における特別支援学校の役割についてまとめることができた(「障害者権利条約と特別支援教育の改革」(『日本型インクルーシブ教育システムへの道』三学出版)及び「現代寄宿舎論」(『障害児の生活教育研究』第17号)。 3.日本における特別ニーズ教育のあり方の歴史と現状から、病弱や発達障害のある思春期や青年期の生徒のための特別支援学校の歴史と役割について検討した。不登校をはじめとして、学校がインクルーシブでない競争的環境の中で適応できない子どもの問題を多面的に検討しつつ、現代的意義を示すとともに、特別支援教育においても二次障害や学校適応の問題を考慮した特別学校の制度設計の必要を提起した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、障害者権利条約教育条項における「インクルーシブ教育」の各国での理解とその中における特別学校の位置づけに関する比較研究である。本年度においては国連の障害者権利条約に関する国際的な情報の収集と検討は進展した。しかし、全体として、特別ニーズ教育の概説的な情報にとどまり、学校教育と特別学校に関する詳細な言及は極めて少ないということが明らかになった。 本研究では、インクルーシブ教育及び特別学校の位置づけに関する検討の対象国を、欧米(イギリス、アメリカ)、ヨーロッパ諸国(オランダ、ベルギー)、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランド)、アジア諸国(韓国)と広く設定している。これまで、イギリス、オーストラリア、韓国の資料収集と検討を行ってきたが、ヨーロッパ諸国の資料収集については、言語の問題もあり情報の収集には困難が続いている点が問題である。比較研究としては、英語圏域に焦点を絞り、検討をすすめるように軌道修正を行い、英語域として、カナダなども視野に入れることとしたが、オランダ・ベルギーなど特別学校の比重の高い国の動向は無視し得ない点が隘路である。 国内的な動向については、インクルーシブ教育に関する現状の把握を進めつつ、特別支援学校の設置の中でインクルーシブな地域づくりの考え方に焦点をあてた歴史的な検討は進んでいるが、通常教育との関連で今日的な特別支援学校の実態把握と役割の再認識については今後の課題となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
インクルーシブ教育と特別学校の位置づけに関する検討に関して、イギリスとオーストラリアを中心とした英語圏域での資料収集と検討の深化に焦点を絞って行うこととしたい。資料収集の中で把握されたイギリス連邦の報告の検討を行いつつ、そこでの連邦としての共通の動向や特徴の把握と共に、先進国(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなど)とイギリス連邦の中での発展途上国の状況の相違を把握しつつ、各国の発展段階や制度上の特徴、障害の関する施策の発展段階の相違などを明らかにしたい。また、ヨーロッパ諸国やアジア諸国に関しては情報の把握を継続して行っていく。UNESCOやOECDなどの国際機関での検討に着目しつつ、動向を把握していく。アジアに関しては、韓国などの動向をフォローしていきたい。 さらに、特別学校の位置づけという点では、伝統的な視覚障害や聴覚障害の学校の存在と同時に、障害の重い子どもや知的障害・自閉症の子どもの学校教育のあり方という観点から資料収集と検討を深めることが重要な視点となると考えている。障害の重い子どもがインクルードされることも重要であり、そのようなGood Practiceの成果を整理したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(8 results)