2011 Fiscal Year Research-status Report
弱視者等の読書評価と教材表示支援システムの開発と評価
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23531302
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
氏間 和仁 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80432821)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 身体障害 / プリントディスアビリティ / 教育的視機能評価 / 診断的評価 / 視覚障害 / 弱視 / ロービジョン |
Research Abstract |
平成23年度は,教育的視機能評価を行うためのツールの開発および基礎的な評価を行うことを目的に研究を実施してきた。作成されたツールは「日用視力測定ツール」「日用視野測定ツール」「読書文字サイズ測定ツール」の3種類である。これらのツールは液晶タブレット付携帯端末の中でも,実績のあるiPad用に開発された。iPadは,例えば広島県内の特別支援学校には8台ずつ配備されており,多くの学校に配備されている。iPad用に開発されたツールは,各学校等で容易にダウンロードでき,使用できると考えられるためiPad用のアプリとして開発を進めた。 同ツールは,基礎的開発をFlashで行い,ソフト制作会社と打合せながら最終的な開発の仕上げを開発会社に委託して行った。 日用生活視力測定ツールは,試用期間を終えて,現在,AppStoreへの登録前の審査を受けている最中である。4月中にはAppStoreにて無料で公開され,どの学校でも利用できる状態になる。同ツールは,大学生を対象にした基礎的評価を行った。従来の視力視標と結果を比較され,両測定環境での測定結果を比較したところ,有意差が出ないことが明らかになり,その妥当性が明らかになっている。また,測定日を変えて測定した結果を比較したところ,測定結果に有意差がみられていないことが確認され,再現性も確認されている。同ツールは前景色と背景色の組み合わせや視標サイズの変化率を自由に設定できるため,これまでの検査道具では実現できなかった測定環境の設定を可能にしている点で教育的視機能評価に大きく貢献することが期待できる。 日用視野測定ツールおよび読書文字サイズ測定ツールは,現在試用期間中である。多少の動作の不具合が見られるため,その点について微調整と試用を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では,平成23年度,第4四半期では,評価ツールの評価の全てが終了することになっていた。現状は,「日用視力評価ツール」については,計画通りに進んでいる。「日用視野測定ツール」「読書文字サイズ測定ツール」は試用段階であり,今後,妥当性・再現性を確認するための基礎的な評価を実施する予定である。この点で,やや遅れていると判断した。 研究計画が遅れた理由としては,平成23年4月から研究代表者が職場を変わったため開発を依頼をする業者の選定が7月までずれ込んだことが挙げられる。特に,研究費が当初計画より削減されたため,低予算で当初の目的を達するための開発に協力できる業者の選定に時間を要した。幸い,この点をクリアできる業者が見つかり,9月からiPad用アプリ開発を本格的に進めることができた。当初は,アプリの開発方針の詳細を詰めるのに月に1度程度のミーティングをもつなど開発前の打合せの時間を要したが,「日用視力測定ツール」を完成させるまでの過程で開発ノウハウが蓄積されてきた,今後は,「日用視野測定ツール」及び「読書文字サイズ測定ツール」の試用が進み,開発がこれまでよりも短時間で進む予定である。 1年次に予定していた3つのアプリの開発は8月までに終了し,9月以降に特別支援学校(視覚障害領域)に依頼して実証試験を進める予定にしている。現在はそのための準備として各学校と話し合いを進めており,2年次の予定は計画通りに進む予定である。つまり,1年次の遅れを2年次で吸収できるよう計画を立てている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、評価ツールを調査協力学校(特別支援学校(視覚障害領域))の児童生徒に試用してもらい、従来の方法で得られた検査結果との値との差の検定により妥当性を評価する。特に,養護教諭や学級担任教諭に協力を仰ぎ,評価ツールの操作性や操作時の児童生徒の負担などについても聞き取り調査を行い,測定結果の妥当性のみならず,使用者や被測定者の負担についてもデータを蓄積し,本ツールの特徴を明らかにしたい。また,負担が大きい場合はその要因を明らかにし,負担軽減のための改善を具体的に検討しアプリに反映させたい。 表示支援ツールは氏間・村田(2000)が開発したHTMLviewerのプログラミングの技術を利用して開発を行う。平成24年5月には電子出版の関係者の集まりに参加し,今後の技術的及び電子書籍の規格の動向などの情報を得る。この情報に基づいて今後長年にわたって活用できる表示支援ツールの開発に努める予定である。特にePubやXHTMLなどの国際的な規格に対応できるような仕様を利用できるよう表示ツールの開発を工夫したい。平成24年度は,これらの3種類の評価ツール及び電子文書表示支援ツールの実証試験を実施する予定にしている。 平成25年度には3つの評価ツールによる行動評価で得られた教育的評価の結果から表示支援ツールを学校(特別支援学校(視覚障害領域))で試用して教職員、児童生徒の活用状況を観察し、その効果について明らかにする。その際は読書速度のみならず、ユーザインタフェイスの使い勝手や従来の教材等との比較を行い多面的に表示支援ツール及び評価ツールの妥当性を検討したい。全てのツールはAppStoreにて公開し,自由に利用できるように配慮する。文献氏間和仁・村田健史 (2000) 弱視者に配慮したHTML教材とビューアの試作と評価. 教育システム情報学会誌, 17, 415-424.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,平成24年度から実際に学校現場等で利用を進めることで得られた結果に基づいた,さらなる改良点の発掘と,利用の効果を明らかにする予定である。 大量の調査用紙や説明用紙などの印刷に要するトナーや,iPadをさらに有効に利用するためのオプションを消耗品として購入したい。 旅費は,3年間の研究成果を学会等で発表するための交通費及び滞在費に充てたい。 謝金は,3年間のデータ整理のアルバイトに充てたい。 その他経費は,アプリの微修正などの経費に充てたい。
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