2012 Fiscal Year Research-status Report
弱視者等の読書評価と教材表示支援システムの開発と評価
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23531302
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
氏間 和仁 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80432821)
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Keywords | 視覚障害教育 / 弱視教育 / 携帯端末 / 視機能評価 |
Research Abstract |
本研究は,「教育的視機能評価ツールの開発及び評価」と「視覚特性に応じた教材提示ツールの開発と評価」の2つの大きな目的を持っている。本年度,評価ツールについては,「日用視力測定ツール」の妥当性・信頼性の評価及び学校教師による実証試験及び「日用視野測定ツール」「日用読書測定ツール」の開発を行った。教材提示ツールは自作教材を開発し弱視者による評価を行った。 【具体的内容】「日用視力測定ツール」は,従来の測定方法の結果と本ツールを利用した測定結果を比較し妥当性を,本ツールによる測定を1週間以上の期間をおいて2度行い,結果を比較し信頼性を検討した。両結果ともr=0.9以上であり,高い相関が認められた。また,愛媛,福岡,高知の学校の教師に同ツールを利用してもらいアンケート調査を実施した結果,操作性や機能について肯定的評価が有意に多かった。 教材提示は独自の教材をPDFとePubで作成し,7府県の弱視者に利用してもらった。その結果,どちらも肯定的評価が多く,教材の提示としても携帯端末の利用が有効であることが明らかになった。 【研究の意義】これまで,配色を替えて視力を測定すること,日用視野を測定すること,配色や書体を変更して読書に適する文字サイズを測定することは困難であった。本研究により,それらの測定が可能になり,同時に学校教師による評価で操作性も高いことが示されたことで,これまでよりも視機能を正確に効率的に評価できるようになった。また,携帯端末でPDFやePubによる読書を可能にすることで,これまでよりも効率的に読書する環境の構築が可能であることが示された。 【重要性】学校を含め社会全体で見ることに困難を抱えている人は164万人(2007年調査)に存在すことが指摘されている。共生社会,超高齢社会において,手軽で正確な視機能評価と読書ツールの充実は持続可能な社会の構築において重要な研究となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,教育的視機能評価ツールの開発と視覚特性に応じた教材提示手法の開発及びそれらの評価で構成されている。視機能評価ツールの開発を終え,教材提示手法についても連携学校の協力の下,実践と評価が始まっている点で,おおむね順調に進んでいると考えられる。 視機能評価ツールは,iPad(Apple製)に対応したソフトを開発した。「日用視力測定ツール」は1年目に終了を終え,2年目(平成24年度)に評価を行い,日本ロービジョン学会(ポスター発表),弱視教育研究会(口頭発表)にて研究の成果を報告した。3年目(平成25年度)は,雑誌「弱視教育」への投稿を行うための準備を行っているところである。「日用視野測定ツール」は開発を終え,現在,AppStoreにて無料で配布中である。同ツールは現在,測定の妥当性と信頼性を得るための評価を行っている最中である。「日用読書測定ツール」は,開発を終え,現在,AppStoreへの登録作業の準備と評価試験のための準備を行っている。両ツールは今年度,妥当性と信頼性を確認するための基礎的調査と,学校現場での利用による実証試験の2つの調査を行う予定である。 教材提示手法は,PDFの教材とePubの教材を開発し,授業での利用を行い,評価を行っている。視覚特別支援学校の教員の協力を得て,独自の教材を開発し,授業での導入を行い,評価を行っている最中である。 2年目に行う予定であった,教育的視機能評価ツールの評価及び教材提示ツールの評価について,ほぼ予定通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
教育的視機能評価ツールの基礎的評価と実証試験,及び教材提示手法の実証試験を実施する。現在,中四国の視覚特別支援学校7校,小学校1校,中学校2校と連携体制をとっている。また,4名の高校生及び保護者との間でも連携体制をとっている。 教育的視機能評価ツールにおいては,実際に学校現場で,学校の教員に利用してもらい,引き続き実証試験を行う。実証試験は,実際に学校に在籍する弱視者の教育的視機能評価を本ツールを利用して実施してもらい,従来の方法との測定値の比較と,利用者の質問紙による調査を行う。その課程で明らかになったツールの不具合を,今年度は,修正して行く予定である。 教材提示手法の実証試験は,学校の授業においてPDFやePubを利用してもらい,授業中の生徒の時間の利用方法や生徒及び教師による質問紙を用いた評価を行う。従来の方法,PDF及びePubを用いた方法で比較し,それらの特徴を明らかにしたい。高校生に対しては,彼らが購入した教科書を個人使用の範囲内でデータ化し,それを普段の学習活動の中で利用する課程を観察し,その効果を検討する。検討内容は,データ化した教科書があった場合となかった場合の比較を質問紙により調査する。また,実際に利用している様子を観察し,利用しなかった場合と比較して,時間の利用割合,情報へのアクセスまでの時間を利用の従属変数を用いて評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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