2011 Fiscal Year Research-status Report
肢体不自由教育における姿勢マネジメントと学習支援に関する研究
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23531315
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Research Institution | Hosen College of Childhood Education |
Principal Investigator |
田丸 豊 (松原 豊) こども教育宝仙大学, その他部局等, 准教授 (10566805)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肢体不自由 / 姿勢マネジメント / 学習支援 |
Research Abstract |
新しい学習指導要領において肢体不自由児の学習時の姿勢に対する支援の工夫をすることが明記されたように、肢体不自由児にとって適切な姿勢保持の支援は、姿勢を安定させることや安楽な姿勢をとることだけではなく、呼吸、代謝、情緒、コミュニケーション、興味、意欲など学習に関わる様々な側面と深く結びついていることが考えられる。しかし現状において、特別支援学校(肢体不自由)における姿勢マネジメントのアセスメントや指導・支援の方法などは、それぞれ学校、自立活動担当者、学級担任などに任されており、指導の観点も異なっていると思われる。 本年度の研究では、姿勢マネジメントに関するアセスメント、姿勢マネジメント指導の目的や内容、専門家との連携など特別支援学校(肢体不自由)が求めている姿勢マネジメント指導に関するニーズを明らかにすることを目的としてアンケートによる調査研究を行った。その結果、(1)姿勢マネジメント指導のねらいは運動機能改善を主とする場合と学習活動を主とする場合に大別される、(2)姿勢マネジメントのアセスメントや指導方法に関しては医療、リハビリテーションからのアプローチが主になることが多い、(3)姿勢の制限、リラクセーション、動きやすさの中で試行錯誤している、(4)専門家・機関との連携については学校によって実態が異なっている、(5)多くの学校で姿勢マネジメントについてのアセスメントや指導方法に関するマニュアルや専門的助言のニーズが高いなどが明らかになった。 また、姿勢マネジメント指導に関する学校と専門家との連携,協働に関して、専門家の姿勢マネジメント指導の観点、指導の方法や役割分担などについての具体的な情報を収集し、プログラム作成の参考するため、事例の調査を行った。その結果、教育分野、スポーツ分野ではほとんど事例が得られなかったが、福祉機器関係の研究会において専門家同士の連携に関する事例を見つけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、肢体不自由教育における姿勢マネジメントの実態を調査し、課題となる事柄について整理し、認知発達や学習支援の視点から姿勢マネジメント指導のニーズを明らかにすること、医療の専門家や福祉機器製作者などと連携しながら、学習活動や認知面の発達を個別のニーズとした視線マネジメント指導を行っている事例について、アセスメントや指導の方法についての事例を収集調査し、ニーズを捉える視点、指導の中で工夫している点などを整理することである。その上で、アフォーダンス理論を基にした知覚システム関するアセスメント方法及び基礎的定位システムを機能させることをねらったポジショニング指導のプログラムを作成し、その効果についての評価を行いたい。 今年度は教育現場が求めている姿勢マネジメントに関するニーズを明らかにすることを目的として、全国の特別支援学校(肢体不自由)における姿勢マネジメントの指導に関する実態についてアンケートによる調査を実施した。その結果、回答率は60%であった。アンケートの集計および統計処理を行った結果、実績の概要で示したような実態が明らかになった。 また、ポジショニング指導に関する専門家と学校の連携事例に関する調査のため、日本特殊教育学会、日本アダプテッド体育・スポーツ学会、キャスパーアプローチ研究会に参加し情報を収集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、ギブソンのアフォーダンス理論に基づいた知覚システムの働きを評価するトップダウンのアセスメント及び基礎的定位システムを機能させるためのポジショニングのアセスメントおよび指導方法を考案、作成したい。アセスメントについては、学習上、生活上の具体的な困難さから整理したチェック表を作成する。困難の背景が視覚や聴覚機能の問題であるのか、それとも自己の定位による困難さがあるのか、姿勢の安定や動きのコントロールに課題があるのかなどのトップダウンで課題分析を行った上で、必要な課題に対して基礎的定位システムの促進という考え方に基づいた指導方法を考えていく。 研究協力者としてNPO法人「生活を豊かにする」障害児・者支援福祉協会代表の村上潤氏に参加していただき、福祉機器製作者の立場からの評価、助言をお願いする。 研究協力を依頼した特別支援学校(肢体不自由)において、作成したアセスメント及びポジショニング指導の実践事例研究を行う。指導の効果を測定するために対象児の映像を記録し、担任、自立活動担当者、理学療法士、福祉機器製作者などによる動作分析による評価を実施する。評価を基にアセスメント及びポジショニング指導の修正を行う。 研究協力を依頼した特別支援学校(肢体不自由)においてアセスメントおよびポジショニング指導の実践事例研究を行い、効果測定のために、教員、自立活動担当者、理学療法士、福祉機器製作者などによる映像記録による動作分析の評価を実施する。 平成25年度は作成したアセスメント及びポジショニング指導のシステムについて学校と専門家・専門機関がどのように連携できるかについて特別支援学校の調査を行い検討する。研究の成果をまとめ、冊子にして、全国の特別支援学校(肢体不自由)に対して発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度繰越金7万円、次年度直接経費90万円、計97万円の研究予算に対して、設備備品費として、姿勢マネジメントの動作分析に用いるための2次元運動解析ソフトに55万円、記録用デジタルビデオカメラ6万円、映像記録保存および動作分析用のモバイルPC12万円、研究協力校の特別支援学校(肢体不自由)および特殊教育学会におけるシンポジウム発表のための学会参加等、旅費として17万円、研究協力者への謝金として4万円、学会参加費3万円、合計97万円を支出する予定である。
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