2012 Fiscal Year Research-status Report
肢体不自由教育における姿勢マネジメントと学習支援に関する研究
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23531315
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Research Institution | Hosen College of Childhood Education |
Principal Investigator |
田丸 豊(松原豊) こども教育宝仙大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10566805)
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Keywords | 肢体不自由 / 姿勢マネジメント / アフォーダンス / 学習支援 |
Research Abstract |
肢体不自由があり姿勢保持が困難な子どもでは、学習場面において、教材を見たり読んだり、視覚認知において混乱が生じたり、集中して話が聴けなかったり、教材に触れたり、道具を使って作業することなどに苦戦するなど、知覚システムを適切に働かせることが困難な場面が多くある。 そこで、アフォーダンス理論の知覚システムの考え方を背景にした姿勢アセスメントのチェック表を作成した。研究対象として肢体不自由特別支援学校在籍の3名に依頼した。各事例の児童生徒の担任あるいは自立活動担当者にチェック表を用いたアセスメントを依頼し、そこで指摘された課題に対する分析を行った上で、学習支援を目的としたシーティングの支援を行った。シーティング処方にはNPO法人「生活を豊かにする」障害児・者支援福祉協会代表の村上潤氏に協力していただき、福祉機器製作者の立場からの評価、助言をお願いしてキャスパーアプローチによるシーティング支援を実践した。支援前後の姿勢保持、学習の様子をデジタル映像記録に収録し、2次元動画解析ソフト(Move-tr/2D)により動作分析を行った。 キャスパーアプローチによる支援の結果、3事例はいずれも安楽な安定した座位姿勢をとることができた。学習面では、頭をしっかり起こして教材を見ることができる、上方に手を伸ばして教材に触れることができる、教材を握ること話すことが容易になるなどの効果がみられた。1事例においては、新しい座位保持装置に慣れるまで1週間程度かかり、違和感を感じていたようだったが、慣れるに従って座位の安定性が増し、体をリラックスして使えるようになってきたことが認められた。手を前に伸ばしたり、両手を組み合わせたり、介助すれば自分の手で口を拭いたり、介助によるなぞり書き、スイッチ操作がしやすくなる、肘を曲げて回内、回外動作ができるなど上肢の操作性が向上がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「肢体不自由教育における姿勢マネジメントの実態を調査し、その中で特にポジショニング指導を展開する上での課題を整理し、認知発達や学習支援としてのポジショニング指導のニーズを明らかにする。」については平成24年度に特別支援学校(肢体不自由)におけるポジショニング指導の実態に関するアンケート調査を行った結果、姿勢マネジメントのねらいは運動機能改善を主とする場合と学習活動を主とする場合がある、姿勢マネジメントのアセスメントや指導方法に関しては医療、リハビリテーションからのアプローチが主になることが多い、姿勢の制限、リラクセーション、動きやすさの中で試行錯誤している、専門家・機関との連携については学校によって実態が異なっている、多くの学校で姿勢マネジメントについてのアセスメントや指導方法に関するマニュアルや専門的助言のニーズが高い、などの実態が明らかになった。 「医療の専門家や福祉機器製作者などと連携しながら、学習活動や認知面の発達を個別のニーズとしたポジショニング指導を行っている事例について、そのアセスメント方法や指導の方法についての事例を収集調査し、ニーズを捉える視点、指導の中で工夫している点などを整理する。」については、日本特殊教育学会第50回大会において福祉工学の村上潤氏、特別支援学校教員・PTの青木菜摘氏、筑波大学の川間健之介氏の参加を得た自主シンポジウムを開催して話題提供や協議をすることができた。 「アフォーダンス理論を基にした知覚システムの困難さに関するアセスメント方法及び基礎的定位システムを機能させることをねらったポジショニング指導のプログラムを作成する。」に関しては平成25年度に特別支援学校在籍の児童生徒3名を対象として、試作したアセスメントの実施とニーズに基づいたシーティング処方を実施した結果、いずれの事例も学習支援としての効果がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
アフォーダンス理論の知覚システムを背景とした学習面の困難さについてアセスメントし、知覚システムを働きやすくするための基礎的定位システムを機能させることをねらったポジショニング指導のプログラムを作成したい。また、作成したプログラム及びシステムを実際に特別支援学校(肢体不自由)の個別の指導計画の一部として実践し、その効果についての評価を行っていきたい。 効果測定のために、教員、自立活動担当者、理学療法士、福祉機器製作者などによる映像記録による動作分析の評価を実施する。実施した効果測定の結果に基づきアセスメント、プログラムについて修正を行った上で事例研究を実施し、特別支援学校(肢体不自由)の学習活動において使用しやすいポジショニング指導の基礎的なアセスメント及びプログラムを作成する。 さらに、作成したアセスメント及びプログラムは学校と専門家、専門機関との連携でどのように使用できるかについても検討し提案したい。 研究の成果は冊子にまとめ、特別支援学校(肢体不自由)に対して情報発信をする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度特殊教育学会参加特別支援学校試行(5箇所)5箇所に出かける旅費として50万円を計上した。 研究成果の発信および情報収集のための学会参加費として各年15万円を計上した。 平成25年度研究報告書編集及び発送作業の補助謝金として1時間1200円×6時間×10日で各年72,000円を計上した。 研究結果をまとめた冊子の郵送料として、ゆうメール340円×300=102.000円を計上した。 研究成果をまとめた冊子を作成するための製本印刷代として30万円を計上した。
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Research Products
(3 results)