2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540011
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮本 泉 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60126654)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アソシエーションスキーム / 置換群 / 数式処理 |
Research Abstract |
可移ではない置換群に重点をおいて、様々な計算実験を行った。置換群の各orbit上の作用間の可能なすべての相互関係によって生じる群は、GAPシステムの関数SubdirectPeoductsを使って計算できる。自明な場合として、直積群が各orbit毎に作用している場合と、1つの群がすべてのorbitに同じ作用をしている場合がある。興味深いのは、自明で無い相互関係が生じている場合で、その典型的な例として、5元体上の3次のユニタリ群およびその自己同型群がある。この群の様々な極大部分群のコセット上への作用の相互関係は、2-デザインの構成や散在型単純群の部分群としてどのように含まれているかなどを表している。いずれもよく知られた事実であるが、部分直積群としてまとめて見ることができるところが興味深い。一般的な可移置換群の部分直積群の計算実験も行ったが、構成される群をデザインの言葉などを用いるなどして、そのなりたちを説明することはまだできていない。準備研究における正規化群計算は、主に可移群に有効なアルゴリズムであった。非可移である部分直積群が、このアルゴリズムがうまく適用できない場合であることがわかった。各orbitが大きい、すなわち、orbitの個数が少なく、正規化群計算で各orbitを固定する部分、そして、それらを動かす部分との関連の双方が自明でない場合を考えて、計算実験を行った。コヒアラントコンフィグレーションは役に立たない場合もあるので、共役計算と各orbitを固定する正規化群計算を組合せて高速化を図った。可移場合と同様に、直接計算ですばやくできる場合は瞬時にできるので、それと比較するとそれなりに遅いと言わざるを得ないが、直接計算では時間のかかる場合でも無理なく計算ができた。全体としては、スムースに計算ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組合せデザインの研究に関しては、部分直積群の計算実験に、その例が現れていた。今後の研究の方向として、様々な部分直積の実験を通じてよい実例を探すことが考えられる。正規化群計算および部分群の共役計算アルゴリズムの研究に関しては、準備研究で考案していた正規化群計算のアルゴリズムがうまく働かない場合の典型的な例として部分直積群があることがわかった。そして、その場合の計算の高速化を、正規化群および共役の両方の計算アルゴリズムを組合せて実現した。その際、それぞれのアルゴリズムの改良もあわせて行った。このときの計算例から構成されるコヒアラントコンフィグレーションには、計算の高速化にはあまり役立たない場合が存在したので、この方面の研究は行わなかった。この計算実験の結果は、ニュージーランドにおいて行われたSODO研究集会において、ショートトークとして発表を行った。また、この研究集会において、Magmaソフトウェアに関する情報収集を行うことができた。本研究では、数式処理ソフトウェアとしてGAPを使用するとしているが、研究集会直前に、Magmaのバージョンアップで、正規化群と部分群の共役の計算能力が大幅に向上していたことがわかった。そこで、本研究では、Magmaによる計算においても高速化となるように対応した。p 群計算アルゴリズムの研究は、時間的余裕、および、適当な情報収集の機会が無かったため、行うことができなかった。その理由は、以下の通りである。もともとこの研究は、非可移な置換群の正規化群計算にコヒアラントコンフィグレーションを使うときに必要になっていた。この場合の非可移な群は、多くの小さなorbitをもつ場合、特に、すべてのorbitのサイズがpとなる場合であった。しかし、23年度の研究では、研究実績の概要欄で示したように、少数の大きなorbitをもつ場合が中心となってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究から引続き、アソシエーションスキーム、および、その拡張に相当するコヒアラントコンフィグレーション、スーパースキームなどの計算アルゴリズムとその応用の研究を行う。研究方法としては、本研究の準備研究で行ってきたように、アソシエーションスキームなどの計算、応用としての群などの計算の両者の間で行ったり来たりすることによって研究を進める。部分直積群の計算は、23年度に新しく行った実験なので、本年度も続けて更なる計算実験を行う。この実験から組合せデザインに結びつく成果も模索する。海外研究集会と関連して、280万個余り存在する膨大な32次の可移置換群のMagmaのデータを入手してある。本研究のプログラムはGAPプログラミング言語であるが、この可移群のデータと分類済の32次のアソシエーションスキームのデータを比較検討する。この次数のアソシエーションスキームで群から作られるものは4000個余りであるので、非常に多くの群が同じアソシエーションスキームを構成することがわかる。本研究で、数十個を除くアソシエーションスキームから構成できている群は30万個余りなので、残りの数十個から250万個の群が出てくるはずである。この様な基礎となる研究も必要と考える。符号およびp群との関連に関しては、着想としては得ているが、計算実験が進んでいない。本研究予算の旅費による出張ではなかったが、「数学的符号理論と産業への応用」国際研究集会に出席して、情報収集を行った。このとき、置換符号をアソシエーションスキームの関連に関する、かなり具体的な情報を得た。24年度にも同様の研究集会が開かれる予定であるので、それにも出席して情報収集を行うことを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の申請書にも記述したように、本研究に関連する研究結果は、海外研究集会において発表されることが多い。23年度は、予定外の海外研究集会の情報を得て、それに参加することで、海外への旅費が当初の研究費の使用計画を大幅に超過した。しかし、この研究集会で多くの有意義な情報を収集できたこと、それから、ショートトークでの発表を行うことができたことは、理由欄にも記述した通りである。また、今後の研究の推進方策欄に記述したように、また、別の海外研究集会でも情報が収集できている。したがって、24年度も、海外研究集会に出席して情報を得ることが重要と考えているので、下に記述するパソコンの購入が不要であるか、あるいは、廉価に購入できる場合は、その分の予算を旅費として使用する。具体的には、8月に中国上海である代数的組合せ論の研究集会、10月に米国ハワイである符号理論などを含む情報理論に関する研究集会に出席そることを計画している。予定外の旅費の使用で、予定していた計算実験を行うための高性能パソコンの購入はできなかったが、大学の法人運営費で、廉価ではあるがそれなりの性能のパソコンを購入して使用している。さらに、24年度購入予定の研究会携帯用に相当するパソコンも大学の同費用で、廉価なものを購入した。いずれのパソコンも、研究室で使用中であったものと比較すると、はるかに使いやすく、本研究の遂行にも十分役立っている。当面、これらのパソコンを使用して研究を行うが、パソコンは陳腐化が早いので、24年度末頃には、再び新機種を購入することが望ましい状況になるかも可能性もある。
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