2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540022
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
津村 博文 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20310419)
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Keywords | 代数学 / 整数論 / ゼータ関数 |
Research Abstract |
本研究の研究課題ついて、理論的な研究を行うために、関連の文献の購入、さらに国内外の研究者との交流を深め情報交換を行い、それらをもとにして、得られた多重ディリクレ級数関係の結果を整理し、研究発表および論文執筆を行った。具体的な交流としては、現在共同研究中の名古屋大学の松本耕二教授、立教大学の小森靖准教授との定期的な研究打ち合わせ、および共同研究発表を行った。またこの分野での中心的な役割を果たしている九州大学の金子昌信教授および九州大学の研究グループ、近畿大学の大野泰生教授を中心とするグループなどとの研究打ち合わせを行い、広く現在の研究状況を把握した。さらには名古屋大学の古庄英和准教授とp進多重ディリクレ級数に関する研究を進めた。 本研究の2年次として、多重ディリクレ級数の具体例である、抽象ルート系に付随する多重ゼータ関数の研究の発展を目指した。とくに、多変数関数論的側面から、上記の松本耕二氏・小森靖氏とともに例外型Lie代数に付随するWitten型ゼータ関数(ルート系のゼータ関数)の解析的考察についての共同研究を行い、論文としてまとめ、イギリスの数学専門誌に投稿中である。また松本氏との共同研究として二重ゼータ関数の平均値定理に関して、新たな結果を導いた。これに関しても、京都大学数理解析研究所で行われた「解析的整数論」研究集会(2012年10月)において報告し、それらの結果をまとめて、国内の学会誌に投稿した。この結果に関しては、他の国内の数学者によって、さらなる一般化が試みられており、我々の研究が先駆的なものであることが認められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の達成度としてはおおむね順調に進展していると考えられる。実際、出版論文としては、多変数のWitten型ゼータ関数についての主たる結果が、Progress in Math. のシリーズの vol. 300 に出版された。また関連の結果が、TEV のシリーズの `Analytic and Probabilistic Methods in Number Theory' に出版された。さらに、個人研究として、多重ディリクレ級数の別方向への発展として、level-N Eisenstein series と呼ばれるものに関する論文が Pacific J. Math. に、また多重ポリログに関する結果が Bull. Austral. Math. Soc. に出版された。これらについては、当初の計画において予定されていたもので、計画が順調に進んでいることがわかる。またp進多重L関数の研究については、松本耕二氏、小森靖氏に加えて、名古屋大学の古庄英和氏が共同研究メンバーに加わり、当初の予定を超える成果の部分も見えつつあるが、具体的な進展は次年度であると考えているので、次年度の報告の中で詳しく述べたい。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は本研究の最終年度にあたる。申請当時の計画にある通り、この二年間の結果を土台にして、理論的な考察のまとめの一年にしたいと考えている。具体的には、24年度も取り組んできた、Witten型多重ゼータ関数の解析的理論の研究、とくにより一般化されたルート系のゼータ関数としての研究を進め、ワイル群の作用などによる新たな関係式の導出を目指す。とくにC型と呼ばれる特別なルート系の部分ルート系のゼータとして、これまでに盛んに研究されている Euler-Zagier型の多重ゼータ関数をとらえることに成功しているので(この結果に関しては、ポーランドの専門誌、Funct. Approx. Comment. Math. に受理された)この部分の研究の推進に努めたい。また24年度に出版された、双曲関数に付随するEisenstein級数の研究についても、松本氏・小森氏との共同研究によって、大きな進展が見られたので(この結果はドイツの専門誌、Forum Math. に受理された)これらについてもきりの良いところまで進展させて、新たな論文にまとめることを計画中である。最後にp進多重L関数の研究についても、松本氏・小森氏・古庄氏との共同研究が最終盤に差し掛かっており、本年度中には論文としてまとめ、専門誌に投稿する予定である。実際、古庄氏によって、この結果は、2013年4月にイギリス・ケンブリッジで行われる研究集会において講演される予定である。その他にも、国内外の研究集会、ワークショップなどで、他の共同研究者とともに研究発表を行い、この3年間の成果を報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は効率的な予算執行で研究を進められたため、4万円余りの残金が出た。次年度も当初の計画にこの残金を加えた形で、関連の書籍・OA機器の購入の他、研究発表のための国内外への出張旅費として研究費の利用を計画している。現時点では25年度の7月に京都大学数理解析研究所で開催される研究集会「多重ゼータの諸相」においては、現時点での研究成果の発表の機会を計画している。加えて、本研究結果をまとめるに当たり、得られた結果に関連する専門家を招へいして、専門知識の提供および研究成果の評価を受けることも計画している。
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