2011 Fiscal Year Research-status Report
ゼータ関数・テータ関数の挙動解明と多変数超幾何関数論
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23540025
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桂田 昌紀 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90224485)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 漸近展開 |
Research Abstract |
I) 多変数2重 Shintani ゼータ関数の漸近的挙動:調書,目的 A1) に記した多変数2重 Shintani ゼータ関数に関して,平成23年度に実施した研究により,既に以下に記す成果が得られている:i) パラメタ $z_n$ を,ある扇状領域内を(他のパラメタも同一のオーダーを保ちつつ)原点に近づけたときの完全漸近展開;ii) パラメタ $z_n$ を i) と同じ扇状領域内を無限遠点に近づけたときの完全漸近展開.結果 i), ii) からは,iii) 多変数2重 Shintani ゼータ関数が複素多次元空間の有理型関数に解析接続されること;iv) 多変数2重 Shintani ゼータ関数の特異点集合の形状とその近傍での挙動等,様々な新事実が解明されつつある.成果は,研究速報の形で欧文論文として公表されている.II) 一般化 Epstein ゼータ関数の漸近的挙動:調書,目的 A2) に記した,正則・非正則 Eisenstein 級数の挙動解明と同一の方向性のテーマとして,平成23年度は,一般化 Epstein ゼータ関数に対して,i) そのパラメタ $z$ を,複素上半平面内を無限遠に近づけたときの完全漸近展開を確立した.この結果からは,一般化 Epstein ゼータ関数に関して,ii) パラメタ $z$ を複素上半平面内を原点に近づけたときの完全漸近展開;iii) 従来は個別に扱われてきた,古典的な Kronecker 第1・第2極限公式を自然な統合性を持って扱うことが可能となる等,様々な新知見が得られる.成果の詳細は欧文論文「Complete asymptotic expansions associated with Epstein zeta-function II」として纏められ,欧文学術雑誌に投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書,研究目的に述べたテーマ A1), A2), B), C) の内,平成23年度中に着手を予定していた A1) Shintani ゼータ関数の挙動と多変数超幾何関数論,および,A2) 正則・非正則 Eisenstein 級数の挙動と多変数超幾何関数論の前半部分に関して,当初の計画に見合ったほぼ満足のいく形に研究が進捗していると考えられる.A1) に関しては,現時点で速報の形ではあるが,成果の概略が,欧文論文「Asymptotic expansions for double Shintani zeta-functions of several variables」が AIP Conference Proceedings, No. 1385 に所収され公表された.詳細については,現在欧文論文を準備中で,欧文学術雑誌に投稿予定である. また,テーマ A2) に深い関連をもつ研究対象として,一般化 Epstein ゼータ関数の漸近的挙動についての解明も現在進捗しており,成果の詳細を欧文論文「Complete asymptotic expansions associated with Epstein zeta-function II」として現在執筆中で,欧文学術雑誌に投稿予定である.現時点で,一般化 Epstein ゼータ関数に多変数超幾何関数論を応用する段階にまでは至っていないが,今後この方面の解明を一層進捗させるためにも,上記論文の執筆完了が望ましい. さらに,平成23年度は,テーマ B) テータ関数の挙動と多変数超幾何関数論,に関連して,Thomae や Jackson らが導入した古典的な $q$ 積分や $q$ 微分に対して,その多重作用の,単位円板 $|q|<1$ 内を $q\to1$ とするときの漸近的挙動も解明した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,まずその第一 step として,研究計画調書,研究計画に記述したテーマ A2) の後半部分である,2変数以上の正則・非正則 Eisenstein 級数の解明を,多変数超幾何関数論の視座から行いたい.さらには,テーマ B) に記述した,意味ある $q$ 級数と多変数超幾何関数を結びつける,有効な Mellin-Barnes 型公式の検索と抽出を行いたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究経費の配分は,物品費:旅費:人件費・謝金:その他,の比率を,概ね,2:5:2:2:2と分割して,国内外への研究集会への参加を重点的に行いたい.
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