2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540028
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鍬田 政人 中央大学, 経済学部, 教授 (00343640)
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究の主な目的は,K3曲面の中でも特に Kummer曲面について,存在しうる楕円曲面の構造を分類し,そのMordell-Weil格子の構造をできるだけ具体的に記述することである.平成24年度はPicard数が(標数0の)K3曲面での最大値20である,いわゆる「特異K3曲面」についての研究を進めた.平成24年8月にAbhinav Kumar氏を研究協力者として招聘し討論を重ねた結果,ある種の直積型Kummar曲面上に定義される階数18のMordell-Weil格子をもつ楕円曲面について、そのMordell-Weil格子の構造を詳しく調べ,20年来の懸案であった生成元を具体的に書き下すという問題に対し解決の糸口を見つけた. 平成25年3月にフランス・マルセイユ近郊のルミニー国際研究所で行われた研究集会 “New trends in arithmetic and geometry of algebraic surfaces” に出席した際,Kumar氏と直接討論する機会を得たのでお互いの研究状況の進捗状況を照らし合わせたところ,懸案であった階数18のMordell-Weil格子の生成元を求める問題に関しては,問題はほぼ解決し,論文にまとめるだけであることを確認した。さらに,この問題から派生して,他の特異K3曲面上に存在するMordell-Weil階数18の楕円曲面の構造の研究についても討論した.特異K3曲面は正定値2次形式によって分類されるが,その判別式の絶対値が小さいものから,Mordell-Weil階数18の楕円曲面の構造を持つものをすべて書き出し,数論的に興味のあるものについてさらに詳しく調べる問題に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的は,与えられたK3 曲面上にどのような楕円曲面の構造が存在し得るのかを分類し,そのMordell-Weil格子の構造をできるだけ具体的に記述することであった.対象となるK3曲面としては,種数2の曲線Cのヤコビ多様体J(C)から得られるKummer曲面と,Picard数が(標数0の)K3曲面での最大値20である特異K3曲面を主なものと想定した.このうちKummer曲面Km(J(C))上の楕円曲面の構造のうち切断を持たないものの分類はKumar氏に完成されてしまったが,そのため研究計画申請時には手が届かないと思われた研究課題にも着手することができている.たとえば,J(C)のPicard数が17である場合,Km(J(C))上の楕円曲面のMordell-Weil階数は最大15であるが,そのような楕円曲面のMordell-Weil格子の生成元をもとめる問題にも進展を見ている.また,特異K3曲面についてもMordell-Weil格子の生成元を求める問題についても,当初の見通しよりも順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成25年度は,これまでに個別に得られている,Jacobi多様体J(C)の Kummer曲面Km(J(C))に関する結果や,二つの楕円曲面E1とE2が同種,あるいは同型である場合の直積型Kummer曲面 Km(E1×E2)に関する結果を,できる限り整理・統合した形にまとめ上げていくことを中心課題としたい。また,Picard数が20である特異K3曲面についての研究をさらに進め,Mordell-Weil階数18の楕円曲面の構造の研究をなるべく一般的な形で解決することを目標としたい。特異K3曲面は正定値2次形式によって分類されるが,これは虚二次体の整数論とも深く関わってくる。その判別式の絶対値が小さいものからMordell-Weil階数18の楕円曲面の構造を持つものをすべて書き出していくだけでも,数論的に興味のある対象がいくつも自然に現れてくる。これらの楕円曲面のMordell-Weil格子についてさらに詳しく調べることにより,数論的に興味のある結果が得られることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究の推進におおきな役割を果たしてくれたAbhinav Kumar氏とは平成25年度にも緊密に連携して研究をさらに推進したい.そのため,夏以降にKumar氏の所属するアメリカ・マサチューセッツ工科大学に赴き,密な研究打ち合わせを行いたいが,その費用にこの研究費を充てたい.そのほか,イタリア・ミラノ大学のvan Geemen教授のグループや,カナダ・コンコーディア大学を訪ねる計画も準備中であり,これまでの成果の発表についても積極的に行っていきたい. また,Mordell-Weil格子の生成元の決定には,大規模な数式処理を行う必要が出てくるが,そのためのコンピュータや数式処理プログラムについても必要に応じて導入することを検討している.
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Research Products
(1 results)