2012 Fiscal Year Research-status Report
実解析的アイゼンシュタイン級数を含む多重級数の研究
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23540032
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
野田 工 日本大学, 工学部, 准教授 (10350034)
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Keywords | Eisenstein級数 / 多重ゼータ / 漸近展開 |
Research Abstract |
Barnes型の二重Eisenstein級数のFourier級数型変換・漸近公式とその応用として関数等式や特殊値等の成果を得た。出発点としてLipschitzの公式の二重化が必要であるが,その証明は最も広く用いられている調和解析を用いる代わりに,Mellin逆変換型(Barnes型)の積分変換公式を援用している。先行する研究として上半平面のペアに関する二重化があり、既に一般化を行っている。この場合二重Eisenstein級数の変換公式は正則Eisenstein級数のFourier級数展開の拡張と考えられる。我々の手法で漸近公式を導出できるが、ここから二重Eisenstein級数の特殊値の明示公式,自明な零点等が示される。 本年は,上半平面と下半平面のペアに関する二重化に関して分離型 Mellin-Barnes formulaを基軸としさらなる精密化を行った。初めにLipschitz公式の非正則版二重化を行い,非正則版二重Eisenstein級数のFourier級数型変換公式等を与えた。この結果は実解析的一変数Eisenstein級数のFourier級数展開の一般化である。変換公式はBarnes型積分表示で与えられるので漸近展開が得られる。我々は漸近展開における残余項の精密な評価を与えた。また、漸近展開の応用として、自明な零点、不確定特異点、格子点上における特殊値の明示公式を得ていることを報告する。 上記研究成果の応用として、航空力学における空力干渉計算に現れる二重級数の数値計算への応用を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、二重アイゼンシュタイン級数の変換公式・漸近展開を精密化し、関数等式・特殊値・特異点などに一応の結論を得ていて、これは当初予定以上の成果と考えられる。また、航空力学の空力干渉計算への応用という新しい視点が得られたことも大きな成果であると考える。その代り、一変数非正則アイゼンシュタイン級数のt-評価の研究には進捗が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
微分方程式の専門家から漸近展開および特殊関数の物理的意味づけなどに関して知識の提供を仰ぎ,数論的な和公式を定式化したい。具体的には次の各項目について実行していく ①Eisenstein級数の漸近展開:Fourier級数展開においてBessel関数の一様漸近展開を適用し,Eisenstein級数の漸近展開を得る。 ②複素パラメーターの虚部についての一様性:特殊関数の一様展開はEisenstein級数の複素パラメーターの全範囲をカバーできない(数論的関数の和の評価に困難がある)が,場合分けにより虚部についての一様性を求めていく。 ③Truncated summation formula:残余項の評価を行う。一様漸近展開を可能な限りtruncateする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の効果的な遂行のため, i)定期的なセミナーを実施する; ii)国内外で開かれるシンポジウム・セミナーへの積極的な参加と意見・情報交換をおこなう; iii)研究に必要な論文・プレプリントの収集と,関係する図書の購入・充実を図る; iv)各分野の専門家を招待または訪問し,研究集会の実施・参加を行う。上記項目のために研究費を使用する計画である。
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