2013 Fiscal Year Research-status Report
概均質ベクトル空間のゼータ関数と多重ゼータ値の研究
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23540036
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
大野 泰生 近畿大学, 理工学部, 教授 (70330230)
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Keywords | 多重ゼータ値 / 2元3次形式 / 概均質ベクトル空間 / 多重ゼータ関数 / 多重ベルヌーイ数 / 多重オイラー数 / ロンサム行列 / 簡約理論 |
Research Abstract |
多重ゼータ値(MZV)の和の満たす線形関係式の族について、系統的に把握されるいくつかのケースは、ガウス超幾何関数や楕円種数に現れる母関数と関係するほか、結び目の母関数型不変量の係数がMZVであるなど、幾何学的な対象との詳しい関係解明が待ち望まれている。この中で4月にはニュートン研究所にて、MZVの関係式族と、基底に関するBrown-Zagierの研究成果との兼ね合いから垣間見える、等号付きMZVに関する展望と予想について招待講演を行った。また、Zagier, Broadhurst, Hoffman, Brown, Furusho, Gangl各氏と有限MZVとMotivicMZVについて議論を行い、問題意識の共有と理解を深めた。その中で、有限MZVの等号付き版についての組合せ論的性質とそれらから把握されるOhno-Zudilinによる2-1公式の構造的解釈について研究進展が得られたほか、Yamamoto氏によって定式化された補完関数についても研究を行い一定の新事実が把握できた。この間、2元3次形式の間の類対応の研究では、類の間を系統的に繋ぐ螺旋構造をモデル化することによって詳細に理解できるようになった。9月にはマックスプランク研究所にて、Zagier氏, Gangl氏らとMZVの環構造や2元3次形式の類対応について議論を行い、指標付きMZVに関するBroadhurst氏らの研究成果について研究を行った。 愛媛大学代数セミナーや大阪大学整数論保型形式セミナーで、MZV和の母関数の満たす微分方程式とガウスの超幾何関数に関するZagier氏との共同の結果や、多重ベルヌーイ数の満たすKummer型合同式の部分的解明について講演した。また、主催する関西多重ゼータ研究会は本年度内に第15回~第20回を開催し、特に若手研究者の育成、研究発表と勉強の場の提供を継続的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2元3次形式の空間の非自明な2重構造についての詳しい簡約理論の構成と数値データの集積は着実に進展しており、具体例を用いた数値実験に対して十分な効力を発揮している。2元3次形式の空間における類対応の構造的解釈に向けての、判別式の異なる2元3次形式の間の螺旋的な系列の存在が解明できてきているが、それらの起点となっている所謂新形式の発現原理を具体的に把握することが課題となってきている。素数を法として群作用をモデル化して捉える手法においても、起点となる形式の存在を把握することが不可欠であり、これらにはいくつかの解決すべき課題が付随している。 多重ベルヌーイ数の間の合同関係式の系統的理解について、Mika Sakata氏との共同研究が進んでおり、すでに2重ベルヌーイ数の2-orderおよび、2冪を法とするKummer型合同式の成立について一定の成果が得られているほか、2重ベルヌーイ数の3-orderおよび、3重ベルヌーイ数の2-orderについても、起点となる成果が得られた上で、さらに精度の高い結果が継続的に得られている。このほか、負インデックスの多重ベルヌーイ数の合同関係式や、多重オイラー数に関するYoshitaka Sasaki氏との研究など、いくつかの連関したプロジェクトにおいて研究進展が続いている。
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Strategy for Future Research Activity |
2元3次形式の空間の類対応については、継続的に追究している螺旋的系列の把握について研究を継続する。既に集積している多数の具体例と数値データに基づき、現段階での着想を精密化し、具体的な類対応系列の把握に迫りたい。しかし新形式については未知の領域が多く、複数年度を要する課題も多くなると予想される。また、多重ゼータ値・多重ベルヌーイ数・多重オイラー数の研究については、従来の複数の研究プロジェクトを継続する。派生的に取り組んできたロンサム行列やグラフの自己同型類の数え上げに関する研究プロジェクトも進行中であり、これらを従前の多重ゼータ値環の構造解明の主軸プロジェクトと兼ね合わせて推進する予定である。またこれらプロジェクトの成果について内外で口頭発表と論文執筆を進め、とりわけ2013年4月のニュートン研究所での集会参加者に対しての、研究成果の公表とそれに伴う研究討論の場を得たいと考えている。 昨秋より台湾NCTS(国家理論科学中心)のYifan Yang氏から招へいを受けているが、2014年度に台湾の新竹市のNCTSを訪問して、Yang氏との保型形式を基点とした多重ゼータ値とその幾何学的理解について共同研究を行い、同時にこれまでの研究成果について講演を行いたい。またこれも昨年度中に実現できなかったオーストラリア・ニューカッスル大学のZudilin氏とBorwein氏の訪問を実現するとともに、マックスプランク研究所のZagier氏や国内では九州大学の金子昌信氏、首都大学東京の津村博文氏らをなるべく多く訪問し、本プロジェクトで得られた成果や新しい展望の発表を行うとともに、研究討論を行う予定である。このほか、研究成果発表のための出張と、関西多重ゼータ研究会への参加および講演者の召致を積極的に行う計画である。
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Research Products
(7 results)