2013 Fiscal Year Research-status Report
平面代数曲線の高次ワイエルシュトラス点とモジュライ空間の幾何
Project/Area Number |
23540041
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
酒井 文雄 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (40036596)
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Keywords | 平面代数曲線 / 特異点 / ワイエルシュトラス点 / ゴナリティ / モジュライ |
Research Abstract |
平面代数曲線のモジュライ空間の研究において重要な役割を果たすゴナリティの研究に進展があった.ゴナリティが d-ν(ここで,d は曲線の次数,νは特異点の最大重複度とした)に一致するための判定条件(2004年,大河内正仁氏との共同研究)を改良することに成功した.これは,以前無視していた不等式のある項を考察の対称にしたことで可能になった.また,結果をゴナリティの不等式の形にしたことで適用範囲が拡がった.特に,高々重複度3の特異点を有する平面代数曲線について,ゴナリティが d-3に一致するための最良と考えられる判定条件を証明した.具体的な判定条件は,次数を d,種数を g としたとき,4g≧(d+2)(d-4)+1である.また,セラーノの定理を応用した別の判定条件を精密化することに成功し,新しく,いくつかの興味深い平面代数曲線のゴナリティを決定することが可能になった.新しい判定条件は,セラーノの条件と,特異点の重複度によるある不変量を含む評価式である. 射影直線のd次巡回被覆曲線の中で,超楕円曲線になるものの分類を完成した.形から超楕円曲線であることが自明なものを除いては,二つのタイプのd次巡回被覆曲線と双有理同値になるという簡明な結果である.この研究は,川崎真澄氏および,埼玉大学博士後期課程の大学院生であった王楠氏との共同研究である.証明の一部に,ワイエルシュトラス点の個数に関する議論を用いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平面代数曲線のモジュライ空間の構成や研究には不変量ゴナリティを決定することが第一歩として重要であるので,ゴナリティの研究が進んできたことは重要な成果である.特に,射影直線の巡回被覆曲線について,超楕円曲線の分類を始めとして,多くの場合にゴナリティを特定することに成功した.このことにより,モジュライ空間を研究すべき平面代数曲線の範囲が拡がったことになる.また,ゴナリティを特定する段階で曲線の構造も良く理解できるようになったことは今後の研究に役立つと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
具体的な平面代数曲線の族について,ワイエルシュトラス点や高次ワイエルシュトラス点によるモジュライ空間の精密な研究がこれからの課題である.比較的簡単なピカール曲線と呼ばれる代数曲線の族のワイエルシュトラス点の研究はほぼ完成しているのであるが,この場合でも,2次のワイエルシュトラス点の研究には,まだまだ困難な部分が有り,これからの課題である.同様な研究を他の射影直線の巡回被覆曲線で進めたいと考えている.王楠氏は上記の研究に引き続いて,d次巡回被覆曲線でトリゴナル曲線の分類も完成させたので,それらの族を詳細に研究したい.一般に,このような族のモジュライ空間はパラメータ空間を有限群で割った商空間として実現できるので,具体的な構成には,個別に,群の不変式を計算する必要がある.この群の作用とワイエルシュトラス点の振る舞いの関連が興味深いテーマである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
体調不良の時期があり,予定した学会への出席が十分には出来なかった. 次年度使用額291,051円は学会出席の旅費を中心に使用する予定である.
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