2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540042
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西田 康二 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60228187)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 代数学 / 可換環 / symbolic power / symbolic Rees algebra |
Research Abstract |
この研究では,3 次元正則局所環(または多項式環)R において高さが 2 のイデアル I をとり,任意の正整数 n に対して I の記号的 n 乗( n-th symbolic power )を計算する新たな方法を見出すと共に,I の記号的リース代数(symbolic Rees algebra)のネータ性の判定法を改良することを目指している.このような I の典型的な例としては,互いに素な正整数 a, b, c に対して定まるスペース モノミアル カーブの定義イデアル P(a, b, c) が挙げられる.今年度は,状況を少し一般化し,R がCohen-Macaulay局所環という仮定の下での研究を行った.主結果は,R のイデアル J の自由分解を与える非輪状複体が与えられたとき,パラメータ系 x, y, z に関するKoszul複体を用いながらその非輪状複体を変形し,J : (x, y, z)R の自由分解を与える非輪状複体を構成するというものである.この変形を x, y, z に関する*変形と呼ぶことにする.R が 3 次元正則局所環で x, y, z が極大イデアルの生成系をなすとき,I の通常の n 乗の自由分解が分かっている場合には,その複体から始めて x, y, z に関する*変形を繰り返し施すことにより,I の記号的 n 乗の自由分解を求めることができる.そのプロセスを注意深く見ることにより,I の記号的べき乗の生成元や記号的べき乗を通常のべき乗で割って得られる剰余加群の長さに関する情報を得ることができる.I = P(a, b, c) として実際にこの方法を適用してみると,記号的 2 乗や記号的 3 乗の計算が,従来の方法よりも大幅に容易になることが確かめられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イデアルの記号的べき乗の生成元を効率的(機械的)に見つけていく方法を見出すことができ,具体例に対して適用することも可能であることが確かめられたことは,この研究を進める上で重要なステップを乗り越えたといえるのではないかと思う.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では,記号的リース代数のネータ性の判定法を改良することを試みる.良く知られている Huneke の判定法では,R が 3 次元正則局所環で極大イデアル (x, y, z)R をもつ場合を扱っていて,I の記号的 k 乗の元 f と記号的 l 乗の元 g をうまく見つけ,剰余加群 R / (x, f, g)R の長さが R / xR + I の長さの kl 倍に一致しているかどうかを調べる.f や g が xR を法として y や z のベキ乗と合同であれば R / (x, f, g)R の長さを求めることは容易であるが,必ずしもそうなるとは限らない.即ち,Huneke の判定法を実際に適用できる I はかなり素性の良いものに限られるのである.そこで,Huneke の判定法を改良し,これまでは扱ったことのない P(a, b, c) を調べてみたい.(f, g)R が I の根基を含むという条件と k, l に関する何らかの条件を合わせて I の記号的リース代数のネータ性を特徴付けられるのではないかと期待している.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行の為に購入したパソコンの価格が安価であったことと,情報収集を目的とした出張の回数が少なかった為、実支出額が当初の予定を下回った.残った資金は次年度に繰り越し,有効に使用したい.数学を研究する際にも,資料や文献の収集が様々な局面で必要になるので,その為の予算を充実させておかなければならないのは言うまでも無い.一方,討論を通した他の研究者との交流も欠かすことのできない重要事項の一つである.この研究計画を実行する上でも,国内外の研究者と積極的に接触を持ちたいと思う.その為,旅費にも十分な準備をしておく予定である.
|
Research Products
(2 results)