2013 Fiscal Year Research-status Report
可換代数学における完全交叉のレフシェッツ性問題に関する研究
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23540052
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
張間 忠人 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30258313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 純三 東海大学, 理学部, 特任教授 (40022727)
五十川 読 熊本高等専門学校, 共通教育科, 教授 (80223056)
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Keywords | 可換環論 / 完全交叉 / レフシェッツ性 / m-full イデアル / completely m-full イデアル / componentwise linearity / Rees性 / アルティン環 |
Research Abstract |
渡邊純三氏との共同研究では、レフシェッツ性問題との関連において「completely m-full イデアルとcomponentwise linear イデアルのクラスは無限体上で一致する」という結果を得た。Illinois J. Math.に発表した論文では、正標数においてある仮定の下でその同値性を示したが、今回はその仮定を除くことができた。また、有限体上では反例があることを示した。応用として、U. Nagel と T. Romer らの結果であるcomponentwise linear Gorenstein イデアルの構造定理の別証明を与えた。これらの成果は、論文にまとめ現在専門誌に投稿中である。また、投稿していたレクチャーノートの校正作業を6月に終え、シュプリンガーから8月末に出版された。これも渡邊氏らとの共著である。今後のレフシェッツ性問題の研究に大いに役立つはずだ。さらに渡邊氏は、3変数でRees性を有するがm-fullではないモノミアルイデアルを体系的に構成する方法を与えた。これは、村井聡、J. Migliore U. Nagel, M-R. Miro-Roig らとの共著の論文として、Archiv Math. に投稿し、すでに印刷までされている。 五十川読氏との共同研究では、イデアルのRees性とそれに関連するイデアルの性質「第2Rees性、m-full性およびfull性」を、ランク付き半順序集合とその上の順序準同型を用いて定式化することにより、(部分)加群の性質に拡張し、Rees性と第2Rees性およびm-full性とfull性の間の双対(1対1対応)を構成した。また、Rees性、第2Rees性、m-full性およびfull性の間に成り立つ関係(包含関係)を調べ、どのような条件があればm-full性とRees性が一致するかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「完全交叉は強いレフシェッツ性をもつ」という予想を一般的に証明することは極めて困難な問題である。しかし、平坦拡大定理・部分環定理などの有用性が次第に明らかになり、完全交叉の強いレフシェッツ性予想は現在では疑う余地がないと言って良い。この意味では、現在の達成度は十分満足できる、といえる。また、渡邊氏らとのこれまで10年間の研究成果をまとめた本“The Lefschetz properties”がシュプリンガーのレクチャーノートとして出版され、このことからも現在の達成度は十分満足できる。しかしながら、一般的な予想の証明を追求する観点からすれば、低い達成度といわなければならない。 五十川氏との共同研究においては、イデアルのRees性とそれに関連するイデアルの性質「第2Rees性、m-full性およびfull性」を加群の性質に拡張することよって得られた結果について、現在論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
渡邊氏との共同研究では:池田氏の方法(1996, Adv. Math. 124,The upper bound of the Dilworth number and the Rees number of Noetherian local rings with a Hilbert function)が示唆する通り、生成元を2次式に限ると、完全交叉で強いレフシェッツ性を有するアルティン完全交叉環の 1-パラメータ族が構成される。また、一般化された鏡映変換による不変式部分環が完全交叉であるという定理が後藤四郎氏によって証明されている。この二つから、強いレフシェッツ性をもつ完全交叉の例をつくることができる。今後の研究は、(1)生成元として2次式に限る、(2)対称群が作用するアルティン環を扱う、ことを考えている。さらに(3)その高次元化をはかる。 五十川氏との共同研究では:我々が拡張して定義した(部分)加群のRees性とそれに関連する性質は、イデアルの場合と同様に、商をとるとそのサポートが極大イデアルとなる場合にしか定義できない。この点を解消するために、ランクをあたえる関数の代用としてヒルベルト関数を用いることを検討中である。さらに、自由加群の部分加群のRees性およびそのシジジーのRees性等について研究する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に、対称群で不変な完全交叉のレフシェッツ性について考察を行い、その研究成果を学会で発表する予定であったが、その考察の過程においてm-充満イデアルの構造を詳しく調べる必要が生じたため、計画を変更しm-充満イデアルの構造解析を行うこととした。同時に、Springerに受理された本の校正作業が当初の予定以上に日数を要し(その本は8月末に出版された)、研究計画に3カ月の遅延が生じた。 次年度は、今年度のm-充満イデアルに関する研究成果を踏まえ、中心単純加群の理論を応用して、対称群で不変な完全交叉のレフシェッツ性問題等について引き続き研究分担者と研究打合せを行う。また、m-充満イデアルに関する研究成果とレフシェッツ性問題に関する研究成果を学会で発表したい。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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[Book] The Lefschetz Properties2013
Author(s)
T. Harima, T. Maeno, H. Morita, Y. Numata, A. Wachi, J. Watanabe
Total Pages
250
Publisher
Springer (Lecture Notes in Mathematics, Vol. 2080)