2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540057
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
中野 哲夫 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00217796)
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Keywords | Boolean Groebner Bases / 代数的組合せ論 / 数独型パズル |
Research Abstract |
平成24年度は,Boolean Groebner 基底を用いた連立Boole方程式の1点集合解を求める井上アルゴリズムを用いて,代数的組み合わせ論,特に数独の解法アルゴリズムへの応用を研究した. ごく最近,井上は,Com. of JSSAC 1(2012), 27-37 において,連立Boole方程式の1点集合解を求める優れたアルゴリズムを発表した.この研究に触発されて,筆者らは,井上アルゴリズムの実行結果を樹形図で表したときの(節の数,葉の数,深さ)の三つ組を,その連立方程式の井上不変量として定義し,さらに,この井上不変量が,数独型のパズルから生じる連立方程式の場合は,そのパズルの難易度の大変優れた指標になることを,実験で確認した.この結果は,論文 On the Inoue invariant of a system of Boolean polynomial equations and its applications to puzzles of Sudoku type にまとめ,投稿済み(現在審査中)である. 更に,数独型パズルのうち,もっとも簡単な4独および対角型5独の場合に,実験結果に基づいて,唯一解をもつパズルはすべて自明な井上不変量 (2,1,1) をもつであろう,と予想し,この予想の解決に取り組んだ.その結果,次の定理を得た:(i) 唯一解をもつすべての4独は,自明な井上不変量をもつ.(ii) 唯一解をもつ対角型5独は,2つのパズルを除いて,すべて自明な井上不変量をもつ.2つの例外のパズルの井上不変量は (4,2,2) である.この結果は,論文 On the Inoue invariants of puzzles of Sudoku type にまとめ,投稿済み(現在審査中)である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代数的組合せ論,特に,Boolean Groebner 基底を用いた数独型パズルの難易度の数値化(井上不変量)の定義に成功し,さらに,4独および対角型5独パズルの井上不変量の決定ができたことは,この分野で大きな成果といえる.この方法で,対角型6独の井上不変量についても計算を試みたが,対角型6独の場合は,当研究室の計算機の能力ではパズルの初期配置の個数が5個(唯一解をもつ最小個数)の場合にのみ,井上不変量の決定ができたが,その他の場合は計算時間がかかりすぎて,完全な結果を得るまでに至っていない.アルゴリズムの改良,または性能のより良い計算機を用いる必要があろう. グレブナ基底とトーリック多様体の関係については,現在,トーリックイデアルのグレブナ基底と,付随する凸多面体の幾何学について,基礎研究を行っている.この方面での成果を出すには,もう少し時間が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Boolean Groebner 基底を用いた代数的組合せ論の研究,特に,4独および対角型5独で得られた井上不変量の分類結果を踏まえて,対角型6独および更にサイズの大きい数独型パズルの井上不変量の研究を進める予定である. また,井上アルゴリズム(井上不変量)が,数独型パズルの難易度の優れた指標であることが実験的に確認されたが,その理由を,人間が数独型パズルを解くのに用いるさまざまな手筋(定石)と井上アルゴリズムを比較研究することにより,説明する必要もある. トーリックイデアルとグレブナ基底,特に,凸多面体の三角分割との関係については美しい既存研究があるが,特徴的な配置行列について,具体的にそのトーリックイデアルのグレブナ基底や付随する凸多面体の三角分割を計算することにより,新しい現象を見出していきたい. 点付き代数曲線空間のモジュライ空間に関する Pinkham の理論については,標数0の場合にのみ成立することが知られているが,この理論を正標数の場合に拡張することが可能と予想しており,細部を検討したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Boolean Groebner 基底を用いた代数的組合せ論の研究および,Groebner 基底を用いた凸多面体の幾何学の研究には,Boole 代数,離散幾何学,可換代数学,Groebner 基底に関する多くの専門書が必要である.また,新しい研究成果に触れるために,研究集会に参加することも必要である.したがって,次年度の研究費は,上記の専門書の購入,および研究集会参加のための旅費に充てる予定である.
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