2011 Fiscal Year Research-status Report
対数的ホッジ・ドラームスペクトル列の退化と混合ホッジ構造の研究
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23540058
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
藤澤 太郎 東京電機大学, 工学部, 教授 (60280385)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 混合ホッジ構造 / 対数的スムース退化 |
Research Abstract |
被約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群に関して、モノドロミー作用がべき単(unipotent)である場合について考察するという目的の第一段階として、その特別な場合であるログデフォメーションについてさらに考察を深めた。平成22年度までの研究により、すでに積、トレース射および偏極を構成することに成功していたが、その際に用いた (semi)simplicial method をさらに詳しく分析することにより、より基本的かつ一般的な cubical method へと拡張することに成功した。従来の方法では、ログデフォメーションの既約成分の集合上に一つの全順序を定めた上で、semi-simplicial な多様体、あるいは co-semi-simplicial な複対を用いていたが、cubical method へと一般化したことにより、このような全順序を必要としない形で混合ホッジ構造、積、トレース射および偏極を定式化することが可能になった。そのためには、外積代数という非常に基本的な対象を改めて考察することが必要であった。この一般化は、本来の考察対象である対数的スムース退化に対しても、より強力な研究手法を与えるものと期待している。ログデフォメーションの偏極に関して、数理解析研究所講究録の別冊に既に報告を提出済みであるが、上記のより精密化された cubical method に基づいて、この報告を一般化した論文を現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群を研究する前段階として、ログデフォメーションの偏極についてより詳しく調べることが、将来の研究を見通し良くするためにも、必要であると判断した。そのため、対数的スムース退化の偏極、あるいは双対性にまで研究が進捗しなかった。構成した双線形形式が偏極であることを証明する、すなわちある種の正値性を示すためには、計算の各ステップにおいて正負の符号を厳密に取り扱う必要がある。平成22年度までに semi-simplicial method によってすでに結果は得られているものの、cubical method へと修正するにあたり、やはり符号について慎重に考慮した上で定式化し証明する必要があった。そのため、cubical method、ギジン射、トレース射等を扱うすべてのステップが整合的になるように符号を決定していく過程に多大な労力を必要としたことが、当初考えていたよりも研究が進捗しなかった原因であると考えている。しかし、ログデフォメーションに関して得られた成果は、対数的スムース退化の研究にも重要な役割を果たすと考えており、ここで精密にログデフォメーションについて調べておくことが、今後の研究を進める上で大きな手掛かりを与えるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度にログデフォメーションの相対対数的ドラームコホモロジー群の研究から得られた cubical method を対数的スムース退化の場合に適用することにより、対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群上に、積、トレース射および偏極を定め、双対性を確立することに取り組む。cubical method を用いることにより、積構造に関してはかなり見通しが良くなっており、適切な積構造の定義を見出すことができると考えている。トレース射を定義することは、積を定義することに比べ、より困難であることが予想されるが、ログデフォメーションの場合を参考に、詳細な研究を行う予定である。積およびトレース射の適切な定義を見出すことができれば、そこから混合ホッジ構造の偏極を得ることが可能であるものと期待している。一方で、柏原・河合のサンドウィッチメソッドを、対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群に対して適用できる形に改変することに取り組む必要がある。先に述べた偏極に関する研究を終えた後に取り組むべき方向であると考えている。そのためには、双有理幾何学や代数解析学等より広範囲にわたる分野について、これまでの知見の再検討を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度同様、国内外の研究集会、シンポジウム、ワークショップ等に積極的に参加し、ホッジ理論関連のみならず、幅広い分野の知見を学ぶ必要がある。特に双有理幾何学、あるいは代数解析学については、その手法や結果が本研究の重要な手掛かりになることが期待されるが故に、可能な限り機会をとらえて、国内外の専門家から情報収集・意見交換を行う必要がある。一方、研究がある程度進捗すれば、その段階で研究成果を発表することも必要であり、それにより多くの研究者からの多様な意見・示唆を受け取る機会が生じる。このような機会を得るための出張旅費として研究費を活用したいと考えている。また、今夏、本学においてホッジ理論と代数幾何学に関連する研究集会を開催することを計画しており、そのための諸費用に研究費を充てることも視野に入れている。さらに、論文や書籍から有益な情報が得られることも当然想定され、書籍購入のための費用として研究費を使用する。また、近年の情報化の進展により、従前本学では入手することが困難であった論文等を出版社や専門誌のウェブサイトから購入することが可能になっている。平成23年度に引き続き、このような形での論文購入にも研究費を使用して行く予定である。
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Research Products
(1 results)