2012 Fiscal Year Research-status Report
対数的ホッジ・ドラームスペクトル列の退化と混合ホッジ構造の研究
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23540058
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
藤澤 太郎 東京電機大学, 工学部, 教授 (60280385)
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Keywords | 混合ホッジ構造 / 対数的スムース退化 / モノドロミーウェイトフィルトレーション |
Research Abstract |
まず最初に、対数的スムース退化の特別な場合である、ログデフォメーション(log deformation)に関して、平成23年度の研究を論文にまとめる作業から行った。平成23年度の研究により数学的な内容は既にはっきりしていたものの、かなり複雑な計算を必要とする内容であるため、慎重に執筆にあたると共に、より良いプレゼンテーションを目指してかなり時間を掛けて取り組んだ結果、満足すべき状態に仕上がり、現在投稿先を検討中である。 一方、実際の研究においては、対数的スムース退化を研究する手掛かりの一つとして、ログデフォメーションとは対極にある、多重円板上のセミステイブル(semistable)な射について調べることを試みた。京都大学の藤野修氏との共同研究(これは、元々、本研究とは独立に別の研究目的で行っていた)の過程で得られた着想が、このセミステイブルな射に対するホッジ構造の退化を調べる上でも役に立った。すなわち、混合ホッジ構造の許容(admissible)変動を研究するために、その背後にある相対対数的ドラーム複体の順像をフィルトレーション付きの複体として考察するという着想である。この着想をセミステイブルな射の場合にも適用することで、全体の見通しが良くなることが分かって来た。これにより、セミステイブルな射が引き起こすホッジ構造の退化の様子を明確に定式化することができ、さらにその証明もほとんど完成に近づいている。また、その副産物として、モノドロミーウェイトフィルトレーションと代数幾何的に構成されたウェイトフィルトレーションが一致することを多重円板上のセミステイブルな射の場合にも証明することができる。現在証明の細部を確認しながらプレプリントを執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先に研究実績の概要に記した様に、ログデフォメーションや多重円板上のセミステイブルな射に対して成果が得られているものの、被約でない対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群上にホッジ理論を建設するという本来の目的に関しては、残念ながら研究が進展したとは言い難い状況である。 その原因の一つとして、ログデフォメーションの相対対数的ドラームコホモロジー群の研究で得られた成果が、非常に複雑な計算に基づいており、それを対数的スムース退化へと拡張することが容易ではないことが挙げられる。 他方、セミステイブルな射に関する研究成果を対数的スムース退化の場合にも適用可能な形に修正しようとする場合、対数的スムース退化が平坦でない射をも対象に含んだ概念であることが、問題を予想以上に難しくしていることが明らかになってきた。一般の対数的スムース退化という対象を考察するための、より有効な手法を発見することが求められている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、多重円板上のセミステイブルな射に関して得られている結果を論文として執筆し、その過程で証明の細部に再検討を加える。一般の対数的スムース退化を考察することの難しさに鑑み、第一段階として平坦な射のみに対象を限定して考察を進めることを検討したい。この場合、上述のセミステイブルな射に関する研究成果を適切に修正・改変することが可能であるものと期待できる。さらに、先述の藤野氏との共同研究の過程で、双有理代数幾何学からの手法を知る機会を得た。例えば、巡回被覆やアーベル被覆を用いてより扱い易い対象へと議論を帰着させる等の双有理代数幾何学の手法は、本研究遂行の為にも非常に有効な手段を提供してくれるものと思われる。今後、双有理幾何学的な手法についてさらに理解を深めることで、本研究の新たな研究手法を見出す端緒となればと考えている。 一方で、ログデフォメーションの相対対数的ドラームコホモロジー群上の偏極に関する結果を対数的スムース退化の相対対数的ドラームコホモロジー群の双対性へと一般化することにも取り組んで行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の様に現在幾つかの研究成果を得ており、これを出版すると同時に適当な機会に口頭でも発表し、関連する研究者と意見交換を行いたい。その為には、国内外のシンポジウム・ワークショップ・研究集会・セミナー等に、時間の許す限り、積極的に参加することが必要である。その出張旅費として研究費を活用していく予定である。 また、昨年度に引き続き今夏にも、東京電機大学で、ワークショップ「ホッジ理論と代数幾何学」が行われる予定である。必要とあらば、その為の諸費用に本研究費を充てることも検討中である。 一方で、論文や書籍による研究情報の収集も引き続き行う。近年の情報化の進展に伴い、従来入手が困難であった文献も Web から購入する等の方法が可能になりつつある。昨年度、一昨年度に引き続き、様々な形態での文献収集にも研究費を活用したい。
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Research Products
(1 results)