2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540061
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
志賀 弘典 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90009605)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Calabi-Yau manifold / K3 surface / period map / hypergeometric function / modular form |
Research Abstract |
今年度は、K3 曲面すなわち 2 次元 Calabi-Yau 多様体の族に対する周期写像を、とくに Abel 曲面から引き起こされる Kummer 曲面の族の場合を中心に研究を進めた。Kummer 曲面族と Hodge 構造の変形族として同一視されたり、またその部分族あるいは、Kummer 曲面族がその部分族と見なされる Hodge 構造の変形族が考えられる。これらを K3 曲面の族として実現して相互関係を明らかにしてゆくことを、2012 年度以降の目標としている。関連する先行研究としては、古典的な Thomae による 1870 年の研究、Igusa による Siegel 保型形式を明示する研究、さらに Matsumoto-Sasaki-Yoshida (1990) による 4 係数の K3 曲面族の周期写像の研究がある。これらは (3,6) 型 K3 曲面族と呼ばれている。また Hilbert modular 空間は Abel 曲面の moduli 空間において Humbert 曲面として得られ、Hilbert modular 形式に関してはさまざまな先行研究がなされている。これらの研究は、K3 曲面の変形族の周期写像の立場から一貫した視点で捉えられると期待される。このような問題に対しての部分的な研究成果を、ルミニ数学研究センター(フランス)において、シンポジウム Explicit modular forms and their application (2011年 5月 8~14 ) に参加、招待講演"Hilbert modular forms via hierarchy of K3 surfaces"を行う等、発表してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは 2 次元 Calabi-Yau 多様体である K3 曲面の族に対する周期写像を超幾何函数との関連のもとで捉え、数論的な応用をもたらしたい、という構想で進められている。上記の周期写像においては、像である moduli space 上で modular 群ないし monodromy 群に関するある種の保型形式ないしは保型函数が、逆写像として生じる。この際にできる保型函数を明示的に求めることが、構想実現のための基礎となる。Abel 曲面や Hilbert modular form の研究は、それぞれの立場からは様々な研究があるが、幾何学的な背景を伴った、多様体の径数と moduli 空間の変数との間の具体的な対応を記述する保型函数論は、Matsumoto-Sasaki-Yoshida による (3,6) 型 K3 曲面に対する保型函数以外には確立されていない。2011 年度の研究では、このような幾何学的な多変数保型函数を得るための基礎研究を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「理由」に挙げた研究の進展状況を踏まえ、今後は以下の諸点に焦点を絞って研究を推進したい。(1)Hilbert modular 空間を 2 次の Siegel 上半空間の Humbert 曲面と捉え、これと対応する Kummer 曲面の径数族すなわち Shimura variety を幾つかの典型的な場合に確定したい。(2)このような径数族に対しての周期微分方程式を確定し、その挙動を明らかにしたい。(3)周期写像の逆写像を古典的な theta 函数を用いて明示したい。(4)明示された K3 保型函数を通じて、その数論的な意味を研究したい。とくに、その singular moduli すなわち虚数乗法点の研究に着手したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種研究集会等への参加のための旅費として 500000 円、研究推進のために新規ノートブックコンピュータおよび関連ソフト用に 300000 円、参考テキスト等書籍購入のために 200000 円、その他として 100000 円、を予定する。
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Research Products
(3 results)