2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540061
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
志賀 弘典 千葉大学, 大学院理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90009605)
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Keywords | カラビヤウ曲面 / アーベル曲面 / 周期写像 / K3 曲面 / 保型写像 / 志村多様体 |
Research Abstract |
1)アーベル曲面族に対応して、重み付き射影空間上に助変数表示されるある種のマーク付き K3 曲面(すなわちカラビ・ヤウ曲面)族を設定し、これが前者と複素構造の変形の意味で同値となることを示し、その周期領域を明示的に構成し、保型写像を書き出すことに成功した。従来はレベル構造を持ったアーベル曲面で考えられていた保型写像が、この表示により真のモジュラー空間との対応で捉えられることになり、また、モジュライ空間のコンパクト化も、簡明で実体的に理解することが可能となった。 2)上記の研究の延長線上で判別式5の実2次体の作用を持つアーベル曲面族と複素構造の変形として同値となるマーク付き K3 曲面族を上記の助変数空間における超曲面として表示することに成功した。すなわち、判別式 5 のヒルベルトモジュラー多様体に対応する志村多様体の定義方程式が記述されたことになる。 3)和算の世界で難問とされていた、多数の円が互いに接する図形において、それらの半径を問う問題がある。これは、17世紀デカルトの考察に端を発している。長野県上田市田上観音堂の算額に残された和算の問題において、さらにある種の制限を加えて、すべての半径が有理数となる場合を考察した。そこにおいて、解は、ある種のクンマー曲面上の有理点と対応する。これは、1980 年代に考察されて大きな進展を見た Tunnell による合同数問題と深く関わっており、当該の問題の解は、合同数方程式からすべて構成されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは、K3 曲面族さらにはカラビヤウ多様体の族の研究を通じて、高次元のモジュラー函数論を建設するという究極の目標に向かう研究の一環である。このような研究の原型理論としては、一変数の世界における楕円モジュラー函数論があり、それは1次元カラビヤウ多様体すなわち楕円曲線のモジュライを与えるものである。 2012 年度の研究は、種数 2 の曲線族の場合、ジーゲルモジュラー群全体に関する保型函数を、カラビヤウ曲面を用いて、幾何学的な背景を明示して明示的に記述したもので、従来見過ごされてきた視点からの展開を与えることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の目標に立ち戻って K3 モジュラー函数の研究をさらに推進する。具体的には 1)アーベル保型写像の特殊値の研究、とくに虚数乗法点とモジュラー方程式の研究 2)ヒルベルトモジュラー多様体に対する志村多様体の表示式の研究 3)クラインの保型函数論の立場に戻って各種の K3 モジュラー函数の構成とその応用を図ること 4)超幾何微分方程式の立場から K3 曲面の周期写像を考察すること 等が研究目標に挙げられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の目標達成のために以下の研究費の使用を計画している。 1)各種研究集会、シンポジウム等に参加し、発表および参加者との討議を通じて理論の普及および発展に努める。 2)各地の研究者を訪問し、討議および共同研究を行って、理論の新展開を追求する。 3)研究図書の購入。 4)コンピュータの購入および計算ソフトの充実を図り、数値実験による予測、および得られた結果の数値的確証等の研究活動を充実させたい。
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Research Products
(3 results)